なぜ「魅力のないキャラ」を書いてしまうのか?解決するための思考法と超簡単なテクニック。
こんにちは、こんばんは、ラッコです。
先日、作家さん向けに「良いセリフ・会話を作るテクニック」の入門的な内容を書いたところ、エッセイ部門で日間2位を記録。総合評価も150ポイント以上いただきました。
「セリフはセンス」はウソ。会話をイキイキとさせる基本的な考え方と具体的なテクニック。
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ということで続編です。今回は「つまらないキャラを魅力的にするための考え方と、すぐに使える超簡単な方法」です。
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※続編ということで、前回の記事を未読の人はできればお手数ですが確認してみてください。これを前提に解説してます。
※また、筆者であるラッコの経歴や、いかにしてセリフの研究をし始めたかも記しております。
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はい、準備はよろしいでしょうか?
さて、「キャラに味がない」「魅力がない」「無個性である」と悩む作者さんは多いと思います。ラッコ自身、以前はそうでしたから。
しかし、これはキャラへの意識の持ち方を変えることで、わりと簡単に脱出することができることにラッコは気付きました。
なぜキャラがつまらなくなってしまうのでしょうか? それはずばり……
「あなたが優しく、いい性格の持ち主だから」
という可能性が高いです。どういうことか説明していきます。
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現実世界では、人を傷つけたり、神経質だったり、妙に強いこだわりがある人は「面倒なやつだ」と嫌われるのがオチですよね。だからみんな空気を読み、当たり障りのない人間になる。
しかし、物語世界は違います。むしろ、それくらい個性があるほうがキャラとして魅力的になるのです。(もちろん、「しかし、憎めない」というバランス感も同時に意識するんですが)
なぜそうなのか? それは、「面倒くさい」というのは、言い換えると「人間くさい」ということだからです。
不完全で、人間を五角形的なパラメータであらわしたとき、歪な形になる。そういうキャラに我々は魅力を感じ、一方で「すべて5段階の3! 平均!」みたいなキャラにはなにも感じません。
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しかし、我々は幼い頃からの教育で「人を傷つけてはいけない」「悪口を言ってはいけない」「柔軟に生きなさい」「周りに迷惑をかけちゃいけません」などと教わっており、これが無意識下で足かせとなり、キャラを常識的な優しい人に、つまりは特徴のない人物造形にしてしまいます。
『結婚できない男』の主人公である桑野信介は腹痛でうずくまっていたとき、「大丈夫ですか?」と聞かれて「これが……大丈夫そうに見えますか?」と、定型を外れた返し方をするのですが、面白くて笑ってしまう、というのを忘れて冷静に見れば、なかなか失礼なやつですよね?
そして、後述しますが桑野は「意図せず人を傷つけるキャラ」であり、それが序盤は笑いに、終盤は哀愁につながっていきます。
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ところで、前回のエッセイのなかでサンプルとして、簡単なかけ合いを書きましたが、実はそこでも「うかつな人物」と「神経質な人物」をキャラとして登場させています。
人間くささを出す上で、定番の組み合わせなんですよね。『最高の離婚』なんかまさにそうだし、最近だと『BEASTARS』のレゴシ&ルイも該当しますよね。
ということで、登場キャラには、勇気を持って「酷いことを言わせたり、面倒なことを言わせたり、妙なこだわりを持たせたり」しましょう。
◼️やはり『俺ガイル』はキャラ作りにおいて、素晴らしい教本である。
と言っても、もっと詳しい具体例がないとわかりにくいですよね?
てなわけで早速、具体例に移ります。取り上げるのは、ラノベの傑作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。
ストーリーはもちろんのこと、とにかく登場人物がどれもこれも魅力的すぎる本作ですが、キャラ造形において上記のような意識が徹底されています。(渡航先生が意識しているかは謎ですが)
・雪ノ下雪乃→頭が良く、相手を意図的に傷つけることができる。
・由比ヶ浜結衣→アホで、相手を意図せず傷つけてしまう。
メインヒロインの性格が対照的で、とくに笑いの生み出し方のベクトルが違います。
①雪ノ下雪乃の場合
ゆきのんは知的なので、主人公の八幡に対してとにかくウィットに富んだ返しをします。
たとえば単行本第4巻。小学生の林間学校にボランティア的に参加するエピソードで、八幡が夜に外に出ると、雪ノ下が月光浴をしているところに遭遇する、という一幕があります。
八幡が立てた物音に、ゆきのんが反応するわけですが……
雪ノ下「……誰?」
八幡「……俺だよ」
という前置きを経て、
「……誰?」
「なんでさっきと同じ問いなんだよ。一応顔見知りだろうが」
という雪ノ下のユーモア、八幡のツッコミにつながります。
冷静に考えて、ゆきのんの行動はかなり失礼ですけど、創作世界ではこれくらいやって初めて魅力が生まれるわけですね。
②由比ヶ浜結衣の場合
対して、ガハマさんはゆきのんと違い、アホな設定のキャラクター。空気読みスキルは高いのですが、それがアダとなり、意図せず八幡に失礼な発言をしてしまうことが多々あります。
たとえば単行本第2巻。クラス内に流れたあやしいチェーンメールの犯人を突き止めるお話で、3人で雑談しているときの一幕。八幡を疑う雪ノ下に対し、由比ヶ浜は…
「いやー。ヒッキ ーは犯人じゃないと思うよ ? 」
とコメント。フォローしたのかと思いきや……
「んー、なんちゅうかさ 、内容がうちのクラスのことなんだよね 。だから 、ヒッキー無関係っていうか 」
と発言。これには主人公も「俺も同じクラスなんですけど……」と呆れます。
と、こんな感じで雪ノ下は意図的、由比ヶ浜は意図せずで違いますが、ともに結果的に笑いを生み出すことに成功しています。
という感じで、キャラを意図的に失礼にさせたり、妙なこだわりを持たせたりすることで、作品に笑いを生み出すことができます。「ステキなキャラ」にこそ、リアルでは避けてしまう性格の一面が必要なのです。
作家の皆さんのお役に立てれば幸いです。
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『隠れて声優やってます。〜クラスの無口な女子の正体が超人気アイドル声優だと気付いてしまった俺の末路〜』
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