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投槍の先導者  作者: 緑色インコ
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8話:行動

 どうやら怪物には死にかけで放置すると仲間を呼ぶ習性があるようだ。


 そのため遠距離すぎて確殺できない俺の倒した巨漢のいるところに次々と巨漢が集まってくる。


 とはいっても移動時間などもあるため、上位種を倒してから1時間で新たに殺せたのは11匹だった。全て通常の緑肌の巨漢だったのでレベルは上がらない。


 そして半ば予想はしていたが、怪物は殺して一定時間経つと光となって消えていった。


 小さ過ぎて見にくいが、肉のようなものが消えた跡に落ちている。それがドロップアイテムみたいで、ステータスと合わせるとなんだか現実味がなく、これは夢なんじゃないかという気分になってくる。


 けれど怪物や人をこの手で殺した感触はどうも本物に思えてならなくて、俺はこの世界がどっちなのか一瞬分からなくなった。


 まあ、本当に一瞬だ。どう考えても、これは現実であり夢なんかではない。


 変な感傷に浸るのはやめ、かといって新しく敵が来ないままに生きながらえている怪物がいなくなってしまったので暇になった。


 そして、ふと。今更ながら救急車がまだきていないことに気づく。


「公共機関が動けてないなら、本格的に対応を考え始めないといかんか……」


 今この瞬間までは経験値が欲しくて1人勝手気ままに怪物を倒していたが、この先1人だけで行き抜けるとは思えない。


 学校で動くのか周辺住民が一帯となって動くのかは分からんが、まず校長先生あたりに相談してみよう。


「多分、さっきまでので周辺の怪物は狩り尽くしたよな?」


 不安になりながらも、屋上を離れる。


 残った棒槍は、またいつここから攻撃を仕掛けることになるか分からないので放置することにした。


 1階まで降り、職員室隣にある校長室に向かうのだが、その途中で見える職員室の片隅に担任クラスのない先生達が集まっている。


 扉の小窓からよく見ればテレビが天井から吊り下がっていて、彼らはそれを見ているようだった。


 その中には、校長先生の姿もある。


「失礼します」


「む?どうして生徒がここにいるんだ。教室に戻っていなさい」


「いえ屋上から目につく怪物を倒していたんですが、1時間たっても呼んだはずの救急車が来ないですし、公共機関の活動が上手くいってないなら何かしら対策をとる必要があると思いまして」


「はぁ?何を言っているんだ、君は」


「え、連絡きてないんですか?」


 流石に生徒間には不安を持たせないため隠しているとしても、不審者による負傷者が出たことを教師間くらいでは情報共有してると思ったんだが。


 不審者の死体は野ざらしなので校内で殺人があったのは周知の事実になってるだろうし、俺のクラスの奴らがSNSで情報をばら撒いたのなら俺が殺人犯であることも知られているはず。


 けど、この人達は何も知らないのか?もしかして生徒達を教室に閉じ込めているから、生徒間に連絡が渡っても教師までには情報が伝わっていない?


 内線とかもあるはずだが、立ち話を許している担任も不確定な情報を無闇に出すわけにはいかないと考えているのだろうか。


 それでも、佐宮さんに関しての連絡が伝わってないのは何故だ。現状で伝えても教師陣が混乱するだけだからだろうか。


 いや、確かにその通りなのかもしれない。災害時ならともかく、この超常現象の中で次々と問題を報告しても凡人では対処しきれない。


 多分、保健室の先生のお眼鏡に叶う人がいなかったから情報が伏せられているのだろう。


 しかし、そうしていられる時間もとうに過ぎてしまった。


 俺は教師達を強引に廊下に連れ出すと、校庭の死体が見える位置まで連れて行く。


「な、なんだ!これは!?」


 俺は生徒への配慮など忘れ慌てふためく彼らに爆弾のような情報を次々に投下していく。


 混乱が治るのを待っている時間などなかった。


 全て話した上で、最後に俺の意見を言う。


「このような状況では個人での生存など望むべくもありません。とにかく協力が大事だと思うのです。団体責任者の重圧が耐えきれないというのなら、とりあえずそれは僕が背負います。なので、まずは学校全体で襲いかかる苦難に対処できる仕組みを作るべきではないでしょうか?」


「し、しかし政府はまだ機能しているぞ!」


「首都のことでしょう?地方に関してはどうなんですか。現に消防は理想的な動きができているとは思えません」


「仕組みを作るったって、どうするんだ!?」


「とにかくは全校集会を開きましょう。余裕のある今のうちにです。周辺警戒は僕がしますので、内容については申し訳ありませんが任せるしかありません」


「それで上手くいかなかったら……!」


「このままでいていいとでも?何もしなかったら、なすすべなく蹂躙されるだけですよ。レベル1のスキルでは大したことはできません。生きたいのだったら何でもいい。何かをすれば、それは今よりはマシであると思いませんか?」


 説得するのに時間はかかってしまったものの、実際に公共機関へ電話をかければ繋がらなかったし、状況がやばいというのは理解できたのだろう。大体はそのような流れでどうにか教師達は動いてくれることになった。


 放送が流れ、全校集会を行う旨が伝えられる。体育館に移動するのも危険だからということで、校長が全校放送で話し教室で生徒達が話を聞く形だった。


 その間、俺は屋上に戻り周辺警戒を続行する。


 レベル7になったことで視力も上がり、あと1年でもしかしたら眼鏡になっていたかもしれなかった俺でも視界の通るところは相当に遠くまで見回せた。


 ようやく街が騒がしくなって来ている気がする。


 それの意味するところは怪物の出現頻度が上がったということだ。


 もうそろそろ、本格的な文明崩壊が近いのかもしれない。



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