歌から考える短編小説の書き方
どうも、短編を書いて一週間ほどの私である。
興味本位でエッセイをのぞいて見たところ、短編に関する記述があまりに少なかったので、私自身の考えを綴ってみることにした。反論はもちろんあるだろう。なにしろあくまで一意見なのだから。
さて、唐突だが、皆さんは歌が好きだろうか。
私はJ-POPの作詞の仕方について師について習ったことがある。その方法について詳しくは書かないが、非常に面白い内容だった。そして、3000〜4000字程度の短編を書いていて思うことは、作詞と短編の作り方、この二つが非常によく似ているということである。
曲の1番の構成を見て見ると
Aメロ
(A'メロ)
Bメロ
サビ
となっている。
A、B、サビの違いがわからないという方のために、及ばずながら過去に製作した拙作『旗』の1番の歌詞を例にとって説明しよう。
『旗』
A
痛いほどしなる体の芯は
呼吸だけでも軋むだけ
ここにいるのは他の誰でもない
足を持った僕でした
A’(ない歌もある)
放たれた弓はもう止まれない
夢を目指して進むだけ
キリキリしてる胃は見ないふり
そっとひとつため息ついた
B
ほんの一呼吸分の
油断が命取り
振り落とされていく
残るは一握り
サビ
挑んで見せるさ大海に
乗ってやるさ大波に
今なら言える本望さ
知ってもらえれば難破したって旗を立てる
※AとA’は同じようなメロディであり、歌詞もAの言い換えなどを使用する事がある。
まず頭に“つかみ”がくる。最近はサビから始まる曲も多い。歌い出しでリスナーが続きを聞いてくれるかが決まる。これを、小説に置き換えて見る。そう、書き出しである。最初の一文やシーンで読者の心をどれだけ掴めるか、である。
ここでもう一つポイントなのはその“つかみ”のテンションはクライマックスではいけないこと。
歌とは後ろに行くに従って盛り上がる。__小説もしかりだ。
“つかみ”とは起であり、
Aメロとは、承(情景描写などの状況説明)、
Bメロで事が転じ、
サビでテーマ(例:ラブソングなら愛してる)を叫んで結ぶ。
そう、サビの盛り上がらない曲などほとんどない。
つまりテンションは起>承<転<結となる。
短編もこれに基本的にならえばいいと私は考える。(反論はもちろん認める)私は女性が主人公の恋愛小説を主に書いている。ラブはいい。人類の最大のテーマであって、ぶれないし、短編の終着点として書きやすいからだ。
これを踏まえて拙作『今日君と星降る丘で』を仕分けしてみる。
『今日君と星降る丘で https://ncode.syosetu.com/n4089ew/』
起 “つかみ”
婚約者の安否を気遣う主人公が水平線をみていると、彼の代名詞である隕石が降ってくる。
承
婚約者との出会いの回想シーン。
転
婚約者が帰ってくる。
結
星降る丘で二人は想いが通じる。
ものすごく簡潔に書いた。身も蓋もないがこんなもんだ。3000字程度の短文にプロットはおそらく必要ない。凝ったプロットを立ててしまうと消化しきれなくなるからだ。
歌の話に戻ると、歌詞は文字数の制約の関係もあり、情景描写が心理描写を兼ねているケースが非常に多い。これもとても参考になるポイントであると私は考える。
『今日君と星降る丘で』の内容については詳しく記述しないが、最後ヒーローが心理的に救われるシーンを書いた(つもりだ)。もし、ここに流星群という情景描写がなかったら、果たして彼は救われたのだろうか?
私は否と唱える。情景描写は心理描写の手助けをしてくれる。
しかしながら、エッセイを読まれている方は男性が多いのではという勝手な憶測に基づき、男性が主人公である拙作『腕』も上げておこう。こちらはあまり参考にならないかもしれないが。
『腕 https://ncode.syosetu.com/n6669ew/』
冒頭はこうだ。
起
視界を埋めるのは陶磁器のような滑らかな肌、これは腕だ__女の。
たおやかな指が頬をくすぐり、桜貝を並べたような爪先が男の唇をなぞった。
私は私の美学に基づいてこの冒頭を作った。作中で最も美しいと思う情景である。
承
主人公の自己紹介やいままでの経緯の説明。
転
いつもと違い、彼女は消えなかった。から続く非日常。心のテンションはどんどん高くなる。
結
話のまとめ。読後感を意識して、何かしらの余韻(今回は清々しさ)が残るような文章にしたつもりだ。
どうだろう? 拙作で伝わるのか不安ではあるが、テンションが起>承<転<結となるあたり、歌の構成と似ていないだろうか?
小説は設定、プロットが命だとおっしゃる方もおられるだろう。だが、私はあえて投げかける。短編は一発芸みたいなものであると。オチがつき、何らかの余韻を残せたなら、それは成功なのではないかと。
私はまだ、小説を投稿しだして1週間ほどの吹けば飛ぶような新米である。きっとこの文章も読みづらかったに違いない。
しかし、もしこの文章が、歌好きな、筆を取るのを迷っておられる方の手助けになれば幸いである。




