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Sauveur/ソヴァール  作者: フミ
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罪悪感


石を蹴って愚痴を垂れる、そんな子供の姿があった。


「くそお、こんな仕事前世じゃあバイトでも有り得ねぇからなあ」


前世のバイトの給料で例えるなら一時間働いて食パン一切れも買えないようなもの。

そんなバイトならすぐに辞めてほかのバイトを探すが、俺には宛がこれしかない。


頑張って早く終わらせてほかの仕事貰わないと。


そんなことを思っていると仕事の内容にあった洞窟に着いた。


「ここか」


洞窟の中を見てみるがやはり暗い。

ここに来る前、火をおこすものでも買って行こうと思っていたがそれすらも金がいる、ほんとに何をするにも金が必要だな。

いつものように頭の中で愚痴を言いながらも、洞窟へ入っていき探索をし始める。


「なんにも見えない」


入口から少し離れただけで視界は真っ暗になってしまう、それでも頑張って奥へ奥へと進んで行くが何も見えなくては何も出来ない。

何も見えなかったら意味がない、ここは一旦引き返して明かりを持ってくる手段を考えようと思っていると、ふと視界に小さな物音が聞こえた。


くー、くー、くー


最初は隙間風かなにかかと思っていたがそうではないらしい。

音はあっちの方から聞こえてくるのか?


くー、くー、くー


間違いないあっちだ。

怖い、怖いが見てみたい、これが怖いもの見たさという奴なのかもしれない。

音のする方へと壁から離れないように、壁に沿って足を進める、ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと…


すると壁が急に途切れ横に曲がっている。


多分洞窟の中のどこかの小さな空間、部屋だ。


なんで、洞窟に小さな部屋が?と言う思考を巡らせることなくシウスはその部屋と思われる場所の中心に耳を傾ける。

部屋の中心からはやはりさっきから聞こえてくる、くーくーという音がする。

洞窟の隙間がある訳ではなさそうだ、じゃあこの音はなんだ、答えは簡単だ、隙間風でも、お化けなどでもない、なにかの生き物だ。


何も見えないが生き物とわかると心が落ち着いた。

とりあえず声だけでもかけてみよう。


「だれかいるのか...?」


俺が声をかけると地面と小石が擦れる音がした。


「うぅぅ…」


なにかのうめく音少し不気味に思いながらも加えて声をかける。


「人間か、魔獣か?」


一応、言葉の通じる相手か確認しないと襲われた時大変だからな。

俺は腰に下げている御魎刀に手をかけいつでも攻撃のできる体制に入る。


「んー、にんへんてすぅ」


さっきまで寝ていたのか口が回っていないが多分、人間です、と言ったのだろう。

良かった人間か、言葉の通じる相手でよかった。

俺がまだ森でさまよっていた時にグキャグキャ言うだけの奴に道を聞こうとしてしまっていきなり襲われたからな、倒したけど。


「人間ならよかった、ちょっと聞きたいんだけどこの当たりでおば…け、あ」


いやいやいや、待て待て、多分こいつだろ、お化けこいつだろ、絶対こいつじゃん。

だって仕事の内容にも書いてあるもん、洞窟の近くに行くとたまにクーとかウゥゥとか聞こえるって、書いてあるもん。


「おい、お前まさかお化けなんじゃって…おい寝るな寝るな」


またくーくーと気持ちの良さそうな寝息が聞こえてきたので次は少し大きめの声で起こす。


「はっ、私…いつまで寝て…」


「もうすぐで昼が終わるな」


とても弱々しい声でそんなことを言うおそらく女の子だと思われる人に今はいつかを教えてあげる。


「えぇぇ、そんなに寝てたんですかあ!」


女の子はとても驚いているようで服の擦れる音で慌てているのが良くわかる。


「あれ?とゆうか誰ですか?」


シウスは自分の名前やこの洞窟がどういった状況で何故シウスがここに来たかということを全て話た。


「そ、そうゆう訳だったんですねぇ…」



「ああ、だから早くここから出て街の宿とかで止まったらどうだ?それとも宿に止まる金がないのか?」


ここくらいから早く仕事済ませて明るい所行きたいし。


「いや、これはママが…ここに、いろって…」


話す事に声が小さくなっていく、女の子の話は幸運だったのか不幸だったのかよく聞こえた。

こんな所に子供を置き去りにするような親か…前世で俺を虐待していたあのクソジジイとクソババアみたいなやつだな。


俺は自分のことをこの女の子に被せていたのかもしれない。


「とりあえずこの薄暗いとこから出るぞ」


何も見えない暗闇をゆっくりと進み部屋の中心に向かう、そして女の子の手をつかむ。


「え…でもママに怒られる…」


「良いんだよ、いいから行くぞ」


女の子は抵抗するように後ろに下がるが俺はお構い無しに引っ張って連れ出す。


なんか誘拐してる気分になる、はあ、なんか罪悪感が…


女の子は諦めたのか素直に手を引かれ歩いてきている。


二人の間には洞窟から出るまで会話はなく何かを考え込んでいる様子だった、女の子はどうか分からないが少なくとも俺はこう考えていた、この女の子は俺と同じ思いはさせない、と。

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