さあ扉を開けよう
赤い扉を開けた。
そこは砂漠の世界だった。
見渡す限り、砂、砂、砂。
果ては見えず、どんな力もそこには無力。
何人も砂漠を抜け出ることはできないだろう。
それでも少年はここを抜け出す。
それが少年に与えられた祝福だからだ。
◇
赤い扉を開けた。
そこは海の世界だった。
海本来の美しさが失われ、黒く濁った海。
そこには如何なる生物も、その存在を許されない。
それでも少年はここに在る。
たとえいくら傷つけども、いつの間にか癒え、たとえ死すとも、蘇る。
それが少年に授けられた加護だからだ。
◇
少年は、昔、神様を助けた。
車に轢かれた猫を拾って、お医者さんに診せようとした。
けれど猫は神様だった。
だからその傷はたちまちにして癒え、元気に鳴き、少年に言った。
――――助けてくれてありがとう。お礼に何かしてほしいことはないかい?
少年は、家にいたくない、と答えた。
学校の宿題は多いし、晩ご飯には嫌いなピーマンがいっぱい出るし……
――――そうかい。
――――じゃあ、違う世界に行けるようにしてあげよう。
――――遠い遠い世界へ。
――――赤い扉があったら開けてごらん。
――――それは遠い世界に繋がっているよ。
――――その世界を抜けるまで、君は死なないし、年老いることもない。
――――扉の場所もなんとなく分かるだろう。
――――遠い世界を楽しみなさい。
それから少年は、赤い扉をくぐり、遠い世界に旅立った。
◇
色々な世界を巡った。
お城がいっぱいある世界にも行ったし、洞窟に人が住んでいる世界にも行った。魔法がある世界にも行った。
少年は、たくさんの世界を見て回るのが楽しくて、赤い扉を探し、また次の世界に行った。
いつからか、同じような世界をたくさん見るようになった頃、少年は家が恋しくなった。
訪れた世界で、当たり前の生活をしている人を見て、その当たり前の大切さを知った。
帰りたいと思った。
あの時の神様に会えたら、元の世界に帰れるだろう。
そう考えた少年は、神様に会えるような世界を探した。
そしてついに神様と再会した少年は、神様にお願いをした。
我が家に帰してください、家で笑い合える家族がいるという当たり前の大切さを知ったから、と。
神様は答えた。
――――当たり前の大切さを知れた君は成長したね。
――――それを忘れないでこれから生きていきなさい。
――――世界を巡るのはあと少しで終わる。
――――元いた世界に戻れるようにもう少し世界を巡りなさい。
◇
赤い扉を開けた。
そこは穏やかな風の吹く世界だった。
遠い世界を巡るのも、終わりは近い。
少年は赤い扉を探し、次の世界へ行く。
それが少年の望みだからだ。
end
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
小説書くのって難しい……。
てか、これ小説じゃないよね...。
...次回作にご期待ください。