球技大会3
3日後、特に競技を変えたい人もいなかったため、昼休みに生徒会室に向かった。なお、今日は木之元さんが学校を休んだため僕1人だ。北条さんに聞いたが、風邪らしい。
「失礼します」
僕はドアをノックし、生徒会室に入った。中には、たしか姫宮先輩だっただろうか、あの時司会を務めていた彼女のみだった。姫宮先輩は僕の声に反応してこちらを向いた。
「えっと、球技大会のメンバー用紙を持ってきました」
「ありがとうございます。クラスを教えてもらえますか」
「あっ、1年1組です」
「1年1組ですね。わかりました。それでは、くじを引いてください。この中に入っていますので」
姫宮先輩は入ってすぐにある机にある箱を指差した。僕はその中から紙を1枚取り出し姫宮先輩に渡した。
「ありがとうございました。では、後日各クラスにトーナメント表を渡しますので、自分のクラスを確認し、時間を確認してください」
「はい、それでは失礼します」
僕は生徒会室を後にした。
僕は教室に戻り、席に着くと北条さんが話しかけてきた。
「ねえ保科君、今日さくらの家に行くんだけどついてくる?椎名君も一緒に」
「えっ、でもいいの?」
「いいのよ。そのほうがおもしろ……、楽しいから」
「それ、言い直した意味ないよね」
「まあいいじゃない。それよりもどうするの?」
「うーん、僕は行きたいけど、行ったら木之元さんに迷惑かからないかな?」
「大丈夫じゃない?わざわざお見舞いに来た人を追い返す子じゃないから」
「そっか、じゃあ行こうかな。和也はどうするのか聞いてみるよ」
「わかった。じゃあ放課後桜の家に行きましょう」
北条さんと会話を終えるとすぐに昼休みが終わった。
そのあとの授業も終え、今は放課後、和也は今日用事があるといって帰ってしまったため、僕と北条さんの2人で木之元さんのお見舞いに行くことになった。
「木之元さん、風邪だって聞いたけど寝ていたらどうしよう」
「大丈夫よ。どうせ今はもう起きてるから」
「そうなんだ。起きてるならいいけど、もう1回聞くけどいきなり僕が行って大丈夫なの?」
「お見舞いに来た同級生を追い返さないわよ。それにこういう時に行ったほうが、保科君が休んだ時に私たちが行く口実にもなるでしょ」
「まあ、そういうことにいておくよ」
そうこうしているうちに木之元さんの家に着いた。北条さんはチャイムを鳴らすと、ドアが開いた。
「どちらさま?どうせ雅でしょ?いいからあが……て」
木之元さんは僕を見て固まった。
「さくら、お見舞いに来たわよ」
北条さんが笑いながらそういうと、木之元さんがふと我に返った。
「どうして保科君が来てるの?」
「保科君が来たら迷惑なの?」
「迷惑なわけじゃないけど…」
「じゃあ、いいじゃない。それより上がってもいいかしら」
「わかったわよ。それじゃ、あがって」
「おじゃまします」
僕たちは木之元さんの家に入った。そのまま木之元さんの部屋に入ると、木之元さんは北条さんに恨めしそうな顔をして話しかけた。
「雅、絶対楽しんでるでしょ」
「ええ、もちろん」
そのまましばらく何も話さなかったため、僕が話を切り出す。
「あ、えーと木之元さんもう大丈夫なの?」
「ええ、もう大丈夫よ」
「ならよかった。それにしても…」
僕は部屋に入ってからずっと気になっていたことを聞いた。
「木之元さんの部屋漫画とか、ゲームが多いんだね」
「ええ、私そういうの好きだもの」
「もしかして木之元さんの趣味ってこれのこと?」
「そうよ」
「ずいぶん簡単に答えるね。前に教えてくれなかったから、ごまかすとかするのかと思ったけど」
「部屋にあげてるんだもの、そのつもりでいたし、いずれ教えてたと思うし。つまりなんていうの、私は世間一般でいうところのオタクなのかしら?ゲームも漫画もアニメも好きだから」
「僕も、和也も趣味で人を判断しないよ」
「ありがとう。そういわれると思ってたけどやっぱりほっとするね」
「木之元さんにどんな趣味があっても木之元さん自身は変わらない、というよりも趣味が今の木之元さんの考え方とかいろいろなのもに影響してると思うんだ。だから木之元さんにどんな趣味があってもいいと思うし、打ち込める趣味があることをうらやましく思うよ」
「別に羨ましがるようなものじゃないよ。ただ好きなことがあるだけなんだから。それに中学に上がってから保科君たちと話したりするのが楽しいって思ってるよ。保科君はそうじゃないの?」
「木之元さんたちと話すのは楽しいし、休みの日に遊んだりしたら楽しいだろうなって思うよ」
「それはよかった。なら今度、椎名君も誘って4人でゲームしたりして遊ばない?」
「僕はいいよ」
「じゃあ、今度遊びましょう。場所はどこがいい?」
「僕はどこでもいいよ」
「じゃあ、私の家でいい?」
「うん、それでいいよ」
そこで木之元さんと話し終え、北条さんに話しかけた。
「北条さんもゲームとかするの?」
「ええ、さくらに付き合わされてやってるうちにね」
「ああ、やっぱりそういう感じなんだ。そういえば今度遊ぶ話だけど大丈夫なの?」
「ええ、別に部活やってるわけでもないし、さくらと遊ぶことが大半だから」
そのあとも僕たちはいろいろと話をした。日も暮れてきたので僕は帰ることにした。
「それじゃ、僕は帰るね」
「うん、今日はありがとう。またね」
「うん、また」
僕は木之元さんの家を後にした。
「今日は木之元さんのことを知れたな。木之元さんが趣味のことを言いたくないのもわかるな」
今のご時世オタクというのは疎まれるものだし。ただアニメやゲームが好きなだけでほかの人から白い目で見られる可能性があるのも事実だ。木之元さんが隠したがるのもわかる。
「だからって、大体の人はゲームをやったことがあるだろうに、なぜオタクを差別するのかわからない」
僕は1人つぶやきながら家に帰った。