第5話 俺以上の変態
これ以上にエロくしようと努力します!
「ひまだなぁ……」
俺は机に突っ伏してしみじみと言う。
「な、なら私と何か話そうよ!」
「えー、めんどくさい」
「な、なんでよ!」
「理由なんてない」
「ヒドいっ!」
「ままあ落ち着いて二人とも」
佑は本を読むのを止め、メガネをクイッとして俺と優愛に言う。
「そうだぞ、落ち着け優愛」
「アンタのせいよっ!」
「はいはい」
「う~……。もう少しかまってくれたっていいじゃない!」
「…………」
「ついに反応までしなくなった!?」
「落ち着いて優愛ちゃん。僕と話そう?」
「うん……」
優愛は(´・ω・`)として佑と話しだす。俺はなおも机に突っ伏してお休みモードに入る。
すると、ドアがノックされた。俺は顔を上げてダルそうな声で言った。
「はい、なんですかー」
するとドアが開き、人が入ってくる。
「ここは新聞部で間違いないのかしら」
「え、あ、はい……。そうですけど……」
二年生じゃなさそうだな……。上級生か? てかめちゃくちゃ美人だなこの人。しかも胸おっきい。
「な、なんでここに……」
優愛は驚いた声を出す。その上級生は部室内を見渡して、俺の前で視線が止まった。
「ふ~ん。君が優愛の好「わー!わー!」
優愛が突然言葉をさえぎって、上級生のもとに駆け寄る。
「なに、言ってるの! さえちゃん!」
「あれ、言っちゃダメだった?」
その上級生はかわいく舌をペロッとだす。
「当たり前でしょ!?」
優愛は顔を赤くして怒る。すると優愛は俺の方を向いた。
「い、今の聞こえた……?」
「ん? いや、全然聞こえんかった」
「そ、そっか。ならよかった……」
優愛は安心したような、どこか悲しそうな表情を浮かべていた。
……? どういう事?
「ねえ、優愛ちゃん。その人だれ?」
先ほどまで完璧に蚊帳の外だった佑が、質問する。するとその上級生は俺達に向かって言う。
「どうも初めまして。優愛の彼女の三年生の鈴本冴香です」
「「!?」」
「な、何言ってるの! 『彼女』じゃないでしょ!」
「あ、そうだった。どうも優愛のセフレの三年の鈴本冴香です」
「違うでしょ!」
「え、違うの?」
「何で驚いてるのよ! 違うに決まってるでしょ!」
先輩と優愛のやり取りが続く。俺達どうすればいいん……?
「え、てか本当に誰なんですか……?」
俺は恐る恐る先輩に聞く。
「ひどい……! 忘れたの……? 私にあんな事までしておいて……!」
目をウルウルさせて、先輩は顔を手で覆う。
「何したの……? 春樹……」
「何もしてねえよ! 今日が初対面だよ!」
「忘れたのね……。あんなにたくさんヤったのに……」
「春樹君……」
「何もしてねえって! 先輩は黙っててください!」
「あの時は気持ちよかったわ……」
「もういいや……。てか優愛、この人マジで誰?」
「放置プレイ……。悔しい! でも感じちゃう!」
俺分かった。この人俺以上にヤバイ。
俺達は先輩をスルーして話し始める。
「この人は、小さい頃から私の家の隣に住んでる『鈴本冴香』まあ、私のお姉ちゃん的な存在かな?」
「だから、親しい感じなのか」
「うん、そういう事」
すると、先輩はズイッと俺の前に来た。
「君には特別に冴香って呼ばせてあげる」
「へ? な、何でですか?」
「それは、私が君の事を好きだから……かな?」
「「「!?」」」
おい、どういう事だこの展開。どうしてこうなった。ええと……。どうすればいいんだ……?
「ふふふ、面白い反応。嘘ついて見るかいはあったかな?」
「な、なんだ……。嘘ですか……。そうですよね!」
「良かった……」
べ、別に嘘だと言われて悔しくないもん! てか優愛の「良かった……」ってどういう意味?
「まあ、でも冴香さんって呼んでくれると嬉しいな?」
くっ……! 一つ一つの動きがあざとい! でも可愛い!
「もちろんですよ、冴香さん」
俺はキリッとした顔で言ったやった。佑は「春樹君のあんなしっかりした顔、初めて見たよ……」とか言っている。何を言っているんだ。俺はいつもしっかりしているだろ。
「うん、それでいいよ」
冴香さんはやけに満足した表情を浮かべた。
やっぱ近くで見ると美人だなこの人……。黒髪で清楚な感じだし……。でも変態っぽい。
「え、でも冴香さん何でここに来たんですか?」
「ん? 入部しようと思って」
「え、何でですか?」
「なんか二年に変態の子がいるって聞いて。仲良くなれそうだと思ったから」
自分の事を変態だとは分かってたのか……。
「でも、思ってたより健全な子だね」
俺の顔を見て、残念そうに冴香さんは言う。
「そんな事ありませんよ! 性欲は有り余ってます!」
「なら……」
すると冴香さんは俺のベルトをはずし始めた。
「え、いや……何を……」
「え? 白濁液を私にぶっかけたいんでしょ?」
「そんな事思ってねえよ!」
「思ってないの?」
「え、いや思ってますよ? 俺、変態ですし」
「なら……いいでしょ?」
「は、はい……」
そして冴香さんは俺のズボンを脱がせようと――
「いいわけないでしょー!!」
優愛が大声で怒鳴る。
「じゃましないで。私達は友情を深めるんだから」
「どんな友情の深め方よ!」
「いや、うん。さすがにこれは俺もおかしいと思う」
何かこの人の前だと俺、正常に思えてくるよ……。
「でもほら、春樹のここはヤル気だよ?」
冴香先輩は俺の下半身――股間を指さして言った。
俺は股間に視線をやる。見事にテントを張ってしまっていた。ズボン越しでもよくわかる。
「し、仕方ないですよ! 生理現象なんですよ!」
「でも、苦しそう……」
「なんだ、このエロ展開!」
「ほら、私がなんとかしてあげる……」
そして冴香さんは俺のパンツに手をかける――
「やらせてたまるかー!!」
優愛が立ち上がり、俺と冴香さんの元に来て二人を引き離す。
「ほ、ほら! 春樹もちゃんとベルト締めて!」
「お、おう」
恥ずかしそうに優愛は俺の股間から目をそらす。まあ、これが普通の反応だよな。だって冴香さん「私のお○んぽー」とか言ってるもん。あれはおかしい。
俺はベルトを締めながら、部室内を見渡す。すると佑がいない事に気が付いた。
「あれ? 佑は?」
「え、佑?」
優愛も今、佑がいない事に気づいたようだ。
「ん? 佑の座ってた椅子になんか置いてないか?」
俺は佑の座っていた椅子に向かった。そこには紙が置いてあった。何か書いてある。それを俺は読む。
「え~と? 『めんどくさいから帰ります』」
「「…………アイツ逃げやがった!」」
俺と優愛の声が見事に重なる。てか佑せけぇ!
「アイツこのめんどくさい人の相手したくないから帰りやがった!」
「めんどくさいって誰の事?」
冴香さんは本当に誰の事か分からないようで首をかしげる。
「ア……アンタの事だー!!!!!!」
俺は今日一の声で叫んだ。校舎内に響いているかもしれないが関係ない。
「え、私?」
「アンタしかいねえだろ!」
「てへ☆」
冴香さんは可愛く舌を出す。クールな感じの人が舌を出すとギャップを感じてたまらない。
「ああもう、可愛いな! チクショウ!」
「ありがとう。私をメチャクチャにしてもいいのよ?」
冴香さんは胸の谷間をチラチラ見せてくる。
「分かったよ! 襲ってやんよ!」
俺は今いる佑の席から、冴香さんに飛びつこうとした――が、それは出来なかった。
「いい加減にしなさい」
「ぐえっ!」
優愛が見事に俺に跳び蹴りを食らわしてきた。
薄れゆく意識の中、優愛のパンツが水色だった事を忘れないと強く心に誓った。
~~~~~~~~~~
「……やく! ……さい!」
ん? 何か声が聞こえるような……。
「はやく! 起きなさい!」
この声は優愛か……。ああ、そう言えば意識ぶっ飛んでたんだったな……。
俺はゆっくりと目を開ける。そして体を起こすとそこに映っていたのは――
「ちょっと! 落ち着いてよ!」
「いや! 私は今から春樹とセッ○スをするの!」
上半身が下着になっている冴香さんと、それを必死に押さえつける優愛の姿だった。
「何してんの? お前ら」
「いや、さえちゃんが春樹を襲うとか言うから……!」
いや、待ってねえけど。と俺は言おうとしたが、そしたらなんかまたうるさくなりそうなので黙っておく。
……それにしても冴香さんの胸が地面に押し付けられていて……。ものすごい事になってる。OPPAI is GOD。神はここに居たのか……。すげえ揉みしだきたい。でも揉んだら負けな気がする。それに優愛にボコボコにされそうな気がする。「ホントゴミ」とか言われそう。でも、見下した感じで言われたら興奮しそうだな。あれ、俺ってM?
俺が自分の新しい扉を開こうとしていると、冴香先輩は俺の視線に気づいた。
「もんでもいいよ?」
どこから出してんだと言うぐらいの甘い声で冴香さんは言う。
「………………」
俺は無言のまま、冴香さんにフラフラ近づいていく。
くそっ! 体が勝手に……!
「ちょっと! とまりなさい春樹!」
ただ優愛は冴香さんを押さえているため俺を止めれない。
「ほら……。来なさい……」
「…………」
導かれるかのように、無言のまま冴香さんに近づき、そして胸をもむためにしゃがむ。
そして冴香さんの豊かな胸にあと数センチで手が届きそうになった時――
――ガラガラ
ドアの開く音がした。ただ関係なしに俺はゆっくりと胸に手を近づける。
あと少しで……! はあはあ……!
ドゴッ!
何か鈍い音がしたけど関係ない。……あれ? なんかフラフラしてきた……。くそ……。胸もみチャンスが……。
そして俺は意識が途絶えた。
~~~~~~~~~~
目を覚ますとそこは知らない天井。 この独特の匂いは……保健室か……。
「起きた?」
俺は体を起こし、顔を声のする方に向けた。そこには優愛が居た。
「あれ、俺なんでここに……。たしか冴香さんの胸を揉もうとして……」
俺は痛む頭を押さえながら優愛に言う。
「あの時、ちょうど佑が帰っていて、鈍器で春樹の頭を殴って動けないようにしたのよ」
「鈍器!?」
「春樹は知らないほうがいいわ……」
「なんでそんなに悲しそうなんだよ!」
「うっ……」
「泣いちゃった!? 俺、何されたの!?」
「よし、じゃあこの話は終わり!」
泣き真似をやめ、手を一つ叩いて優愛は仕切りなおす。
「えええ! めっちゃ気になるんだけど!」
「………………」
「黙るなよ! 怖えよ!」
「あははっ!」
優愛は心底楽しそうに笑う。まあ、いい笑顔だ。カワイイです。
すると優愛は急に落ち込んだ。
「楽しいなあ……」
そう呟いた一言に元気は感じられない。
「ああ、そうだな」
俺も心から思っている事を言った。やっぱり優愛と話していると楽しい。
「でも……。何で伝わらないのかな……?」
優愛は肩を震わせ、小さくつぶやいた。
「ごめん。聞こえなかった。もう一回言ってくれ」
俺が言うと、優愛は制服で涙をぬぐい、満面の笑みで言った。
「ううん! 何でもない! もう帰ろっ」
「え、ちょ! おい!」
俺は優愛に手を引かれ、保健室を後にした。
~~~~~~~~~~~
帰り、途中まで優愛と一緒に帰っている時に、優愛がこちらをチラチラ見ているのには気が付いていた。
もしかしたら俺に気づいて欲しかったのもしれない。 でも俺は『気づかないフリ』をしておいた。
俺は先ほどの保健室で優愛が呟いた一言を思い出す。
『でも……。何で伝わらないのかな……?』
それに俺は『聞こえない』と返した。
…………。聞こえないわけねえだろ。ハッキリと聞こえたよ。今までだって『聞こえない』と俺が言った時、ほとんど聞こえてたよ。
もちろん優愛の気持ちにだって気づいてる。気づかないわけない。
でも俺は優愛の気持ちに答える事なんてできない。
俺だって優愛の気持ちは嬉しい――が、答えれない。いや、答えてはいけないのだ。
そんな事を思いながら、俺は優愛の顔をふと見る。すると優愛と目が合ってしまった。
「な、なによ!?」
「そんなに怒るなら俺の顔見なければいいだろ。俺の事嫌いなんだろ?」
「あ、当たり前でしょ!? ア、アンタの事なんて大っ嫌いよ……」
最後の方は声が小さくなっていて、かろうじて聞こえるくらいだった。
優愛には俺の事を好きになってほしくない。だから突き放した言い方をしてしまう。
その時に見せる優愛の悲しそうな顔を見るのは辛い。でも仕方がないのだ。
この俺が優愛の気持ちに答えれない理由を知っているのはごく数人。もちろん優愛は知らない。
そして俺は優愛にも聞こえない声で呟いた。
「俺も知らなければ良かったよ……」
この悩みは優愛が俺の事を好きでいる限りついてきてしまう。
だから出来るだけ優愛に俺の事は好きになって欲しくない。むしろ嫌いになってくれた方がマシだ。
俺は深いため息をつきながら、夕暮れの道を優愛と歩き続けた――
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
評価などお願い致します。