第4話 生徒会の襲来
「うめえなぁ……」
俺はスルメをくっちゃくっちゃ噛みながらしんみりと呟いた。
「なんでスルメを食ってるのよ!」
優愛が俺を見て怒鳴る。
「え、家にあったから学校で食おうと思って持って来たんだけど」
「中々いないよね。学校にスルメ持ってくる人って」
佑が妙に感心して言う。
「てか、イカ臭いのよ!」
「え! 俺、自慰行為なんてしてないけど」
「な!? だ、誰もそういう事なんて言ってないでしょ!」
「まあ、今のは優愛ちゃんも悪いよ……」
「え!? 何で私!?」
「男子はな、イカ臭いと言われたら『そういう事』を連想してしまうんだ」
「そうなの!?」
優愛は驚いて佑の方を見る。佑は
「………………」
無言で顔を伏せている。無言の肯定だ。
「佑まで……」
「な、これが普通の反応なんだ」
「そ、そうなんだ……」
若干引きつつも優愛は納得してくれた。優愛はいい情報をゲットしたな。将来役たつぞ。
「ん? なんか誰かこっちに来てない?」
佑がドアの方を向いて言った。
『――――!』
確かに声がする。てかこの声は……。
「やべえ! 生徒会だ!」
「ど、どうしよう春樹君!」
「な、なんでそんなに焦ってるのよ!」
「ちゃんと部活しているか調査に来たんだよ!」
「この部活実際何もしてないから、見つかったら廃部になっちゃう!」
「え、それは困る! 春樹と一緒にいられなくなるし……」
ガヤガヤしていて誰が何を言っているのかよく聞き取れない。
「どうするの春樹君!」
「どうするの春樹!」
二人が一斉に俺を見る。
「何で俺に丸投げなんだよ!」
「「え、だって部長でしょ?」」
「こういう時だけ部長扱い!」
「とにかくどうするの、春樹!」
「と、とりあえずカギを閉めろ!」
俺が言うと佑が「分かった!」と言ってドアのカギを閉める。これで一安心。
そうこうしている間にドアの向こう側で足音が止まった。
『ん? 開かないぞ?』
『え、ちょっと変わってください会長。んーっ! 開きませんね……』
『おい! 新聞部! ここを開けろ!』
「(会長と副会長だ……)」
俺はなるべく小声で二人に言う。二人も小声で続く。
「(会長ってあの美人でクールな会長?)」
「(副会長ってあの会長の事が大好きな人?)」
「(どうしようか……)」
すると会長はドンドンとドアを叩きながら、中に居る俺達に言う。
『おい! いるんだろ! 開けないか!』
『会長! 職員室から予備のカギ持ってきましょうか』
「「「(それはマズイ!)」」」
「(ど、どうするの春樹君!)」
「(よし、こうなったら……)」
俺は外にいる会長と副会長に向けて言った。
「すいません会長! 今、開ける事はできません!」
「(バカ! 何言ってるのよ!)」
「(何してるの春樹君!)」
二人が俺を止めようとするが、俺はそれを静止する。
『ん? その声は新庄か!』
会長が言う。
「はい! そうです!」
『なぜここを開けれないんだ』
「そ、それは……」
『それは?』
俺は考える。何かいい理由はないか……。そして俺は名案を思い付く。
「今、部員の桜崎優愛と性行為をしているので開けれません!」
「「!?」」
『『!?』』
「(な、何言ってるのよ春樹!)」
「(そうだよ! 何言ってるの!)」
「(まあ、任せとけって)」
『ど、どういう事だそれは!』
会長の焦った声が聞こえてくる。
「それはこういう事ですよ」
おれは優愛に向かって小声で言う。
「(優愛、喘いでくれ)」
「(は!?)」
「(だから、俺とセッ○スをしている感じで喘いでくれ)」
「(な、なんでよ!)」
「(そうだよ、何で優愛ちゃんがそんな事……)」
「(俺達がそういう事をしていたと分かったら会長たちも入りにくいだろう? だから喘いでくれ!)」
「(う~……。でも……)」
「(頼む……!)」
「(優愛ちゃん、ここはもうするしかないよ……)」
「わ、分かったわよ……!)」
そう言うと優愛は顔を赤くしながら、外にいる会長たちにも聞こえる声で喘ぎ始めた。
「んっ……! ああっ! き、気持ちいい……!」
『『な!?』』
外にいる会長たちの驚愕の表情が中に居ても分かる。
『おい、本当にやっているのか!?』
副会長のイケボな声が聞こえる。
「はい、そうです!」
「んっ! はあぅ……! あっ……!」
「(よし、とどめだ。そこでイクふりをしてくれ)」
「(な、そんな事、で、できるわけないでしょ!)」
顔を真っ赤にして優愛は言う。
『おい、止めないか!』
会長の声がする。
「やめません」
俺はハッキリと言ってやった。
「(頼む……。優愛……!」
「(わ、分かったわよ!)」
さらに顔を赤くして優愛は言う。何かゆでだこみたいになってる。
「あっ! ダメっ! イっちゃう! ああーーーっ!!」
「はあはあ……。気持ちよかったぞ。優愛」
俺と優愛の名演技が炸裂する。佑は顔を赤くしてうつむいてしまっている。
『な!? てかダメだ! なおさらダメだ、不純異性交遊だ! ここを開けろ!』
会長が言いドアを叩く。
「(くそっダメか……。おい優愛! 続きするぞ!)」
俺は優愛の方を見る。優愛は「……………………」ダメだ! 放心状態になってる! こうなったら……!
「(おい、佑!)」
「(な、何?)」
「(今度は俺とお前でするぞ)」
「(え!?)」
「(もうするしかないんだ!)」
「(わ、分かったよ……!)」
俺の迫力に押されたのか佑はOKしてくれた。
『おい、開けろ!』
外から声が飛ぶ。
「無理です! 今度は男と始めましたから!」
『!?』
外が一気に静かになる。さすがに声が出ないようだ。
「あ……。き、気持ちいいよ……。春樹君……」
「もっと気持ちよくしてやるよ……」
『やめろーっ! 聞くのもつらい!』
よし、これで退いてくれるか!?
『でもなおさらダメだ! ここを開けろ!』
まあ、当然です。俺の頑張りはいったい……。佑も「何してるんだろう僕は……」とか言ってしまっている。やめろ! 深く考えるな! 苦しくなる。
「(よし、佑。何かやってくれないか? 会長たちが帰るようなこと……)」
「(なんでもいいの……?)」
「(ああ……)」
「(わかった……)」
すると佑は大きく息を吸い込み、大声で言った
「殺してやるー!」
なるほど。そう来たか。
「や、やめてくれ……!」
『『どういう状況!』』
外にいる二人の声がハモる。
「よくも……! よくも母さんを……!」
「あ、あれはわざとじゃないんだ!」
「死ねー!」
「ギャー!」
「「………………」」
『『………………』』
よし、これで……。
『だませると思うなよ』
会長が言った。やっぱり無理でした。
「(くそ、どうすれば……)」
「(春樹君!)」
「(なんだ?)」
佑は窓を指さした。
「(外へ逃げよう!)」
「(その手があったか……!)」
ここは一階、そして窓もそれなりに大きいので出れるだろう。
「(おい、優愛!)」
俺はなおも放心状態になっている優愛に話しかける。
「ふぇ……?」
間抜けな返事を出す。
「(窓から逃げるぞ!)」
「窓……?」
まだポケーッとしてしまっている。
「(春樹君! 急いで!)」
佑はもうすでに外に出ており、俺をせかす。
「(くそ……! すまん優愛!)」
俺は優愛をお姫様抱っこし、外へ脱出した。そして佑が窓えお閉める。カギはかかっていないがまあ、大丈夫だろう(ヤケクソ)
「ひとまずここから離れよう」
「分かった」
俺らはとりあえずグラウンドの方に向かう事にした。途中、俺が優愛をお姫様抱っこしているのを、女子が色めきだっていたが、それは無視。
「はぁ……。よし、ここまでくれば大丈夫だろう」
「そうだね……」
「おい、優愛。しっかりしろ」
「へ?」
優愛はようやく意識が覚醒したようだ。そして目の前に俺の顔があるのに驚いたのか、バタバタしだした。
「な、何してるの春樹!」
「うお! 暴れんな! あぶねえ!」
「「あ――」」
俺と優愛は倒れてしまった。俺が優愛に覆いかぶさる形になった。
「す、すまん……」
「あ、うん……」
俺は顔を赤くして立ち上がる。優愛も顔が赤くなっている。
「ねえ、春樹……」
「な、なんだ……?」
「私途中から記憶がないんだけど……。生徒会はどうなったの?」
「逃げてきたんだよ」
「どういう事?」
――一分後――
「そういう事……」
「そう、それで俺が優愛をお姫様抱っこしてここまで来たってわけだ」
「起きてればよかった……。もったいない事した……」
「なんだって?」
「な、なんでもない!」
小声でよく聞こえなかった。佑は「マジかこいつ……」みたいな目で俺を見ている。
「ねえ、春樹君……」
「なんだ?」
「今日逃げても、また今度来るんじゃない……?」
「あ……」
迂闊だった。そこまで考えていなかった。
「まあ、なんとかなるだろう!」
俺は根拠ない自信で言ってやった。
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――副会長視点――
「おい! 何も聞こえなくなったぞ! 開けろ!」
会長がドアを叩く。ドアを叩いている会長も美しい……。
「会長、やっぱりカギ持ってきます!」
「ああ、頼む!」
そして俺はカギを持って来て、カギを開けて中に入った。
「いない!」
会長が言う。俺は窓のカギが開いているのに気づいた。
「多分、外から逃げて行ったんでしょうね……」
「ん? 何かイカ臭いな…・・・」
会長がつぶやいた。
「マジでそういう事やってたのか……」
「ん? なんでそういう事をしてたってわかるんだ?」
会長は分からないようで俺に聞いてくる。
「そ、それはイカ臭いからですよ……」
「イカ臭いとそういう事になんの関係があるんだ?」
「そ、それは……」
言えない! こんなピュアな会長を汚したくない!
「それは?」
くそっ言ってやんよ!
「それはイカ臭さと精○の匂いが似ているからです!」
ああ、言っちゃった……。なんか爽快。
会長は顔を赤らめてしまった。
「そ、そうだったのか……」
「は、はい……」
気まずい……。
この後から会長の俺への態度が妙によそよそしくなりました。泣きそうです。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
評価などお願い致します。