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第2話   ヒロイン

「なんでヒロインがいないんだ!」

「またうるさい……」


 いつも通り俺と佑は、部室でくつろいでいた。佑は本をパタンと閉じて俺にかまってくれる。ええ子や……。


「で、なに?」

「だ~か~ら~。なんでヒロインがいないんだよ!」

「ヒロイン?」


 佑は女子のように可愛く首をかしげる。


「そうだよ! 漫画とかラノベとかには絶対主人公の事を好きなヒロインがいるだろ!?」

「そうなの?」


 佑はそういうのをあまり読んでいないらしくよく分かっていない。


「そうなんだよ!」

「でも僕たちの周りにヒロインなんて――あ……」

「え?」


 佑は何か思いついたようだ。なに? 気になるんだけど。


「なに? いるの? ヒロイン」

「まあ……」

「教えてくれ! このままじゃ佑がヒロインになってしまう!」


俺は身を乗り出し、佑に言う。


「ぼ、僕がヒロイン……?」

「そうだ。このまま二人で部活をしていたら何かそういう展開になる気がする!」

「そ、それは困る……」

「だろ!? だからヒロインが必要なんだ!」


 俺の熱意に押されたのか、佑は口を開いた。


「それは……」

「それは……?」


「私よーーー!!!」


「「!?」」


 突然扉が開き、女子生徒が入ってきた。突然の事で俺と佑も驚く。


「なんだ……。優愛か……」

「なんだとはなによ! なんだとは!」


 俺にプンプン怒っているこいつは『桜崎優愛(さくらざきゆあ)

 俺と佑と同じクラスで、一年生の頃から同じクラスだ。髪は金髪のツインテールでスタイル抜群のまあ、ものすごく美人。美人なんだが俺は若干苦手だ。


「で、なに? 今、俺らは大事な話してるんだけど」

「知ってるわよ! ヒロインについてでしょ!?」

「盗み聞きは良くないぞ。ビッチめ」

「な!? 単純に聞こえただけだし! あと、ビッチじゃないから!」


 顔を赤くして怒ってくる優愛。くそ、このビッチめ。


「どうせその可愛さを活かして、何人の男ともヤってるんだろ?」

「な!? ヤ、ヤってなんかないわよ! それに急にカワイイなんて言わないでよ……」


 なんか最後はゴニョゴニョ言っていてよく聞こえなかった。ますます優愛は顔を赤くする。そんなに顔を赤くしてまで怒るとは……。そんなに俺が嫌いなのか……。


「うそつけ、このヤリ○ンが」

「ヤ、ヤリ・・…なわけないでしょ!?」

「ハッ! どうかな……」


 俺が嘲笑をすると優愛は全力の声で、顔を赤くして言った。


「私は処女よーーー!!!!」


「「…………」」

「お、おう。そうか……」


 さすがにこれにどう返せばいいのか分からない。なに、「俺は童貞だー!」とか言えばいいの?


「ま、まあまあ二人とも落ち着いて……」


 佑がヒートアップしている俺と優愛を落ち着かせる。


「そうだな……」 「そうね……」


 そして優愛は俺の横にしれーっと座る。


「何で俺の隣に座るんだよ!」

「い、いいじゃない別に! 私の勝手でしょ!?」


 顔を赤くして優愛は言う。


「横にいたらいちいち横見なくちゃいけないからしゃべりにくいんだよ! そんなに俺を攻撃したいのか! とにかく佑の方に座れ!」


「そ、そういう事なら……。わ、わかったわよ」


 何か若干落ち込んで優愛は佑の隣に座った。何で落ち込んでんの? ちょっと言い過ぎたかもな……。


「ま、まあすまん」

「へ?」


 気の抜けた返事を優愛は出す。何のことか分かっていないようだ。


「さ、さっきは言い過ぎた……」

「べ、別に気にしてなんかいないわよ。私もムキになっちゃったし……。春樹ごときに」


 春樹ごときに……?


「ふざけんな!」

「な、なに急に怒ってるのよ!」

「なんでお前はそうナチュラルに人を見下せるんだよ!」

「お、落ち着いて春樹君!」

「そ、そんな事言われても……。昔からこうだったし……」

「でも普段はそういう風に人を見下さねえじゃねえか!」

「そりゃそうよ! 春樹以外にはこういう風にしゃべらないように抑えてるから!」

「は? 何で?」

「それは……。春樹と一緒にいるとなんか安心して素の自分がでちゃうんだもん……」

「え? なんて? よく聞こえなかったんだけど」

「な、何でもない!」


 佑は優愛の隣にいるので聞こえていて、「こいつ何で聞こえてねえんだよ」みたいな視線を送ってくる。でも本当に聞こえなかったんだよ……。


「で、何で来たんだよ」


 俺は気を取り直して優愛に問う。


「あっ! そうだった」


 優愛はオホンとわざとらしく咳をしてから言った。


「私はヒロインになってあげる!」


「は?」 「ど、どういう事……?」

「さっきヒロインがいないって言ってたでしょ?」

「まあ、言ってたな」

「だから私が『新聞部』の部員になってヒロインになってあげる!」


「却下」


 俺は両手でバッテンを作り拒否する。


「な、なんで!?」

「だってお前俺の事嫌いじゃん?」

「あ、当たり前でしょ! あんたの事なんて大っ嫌いよ!」


 優愛は顔を赤くして言う。なに、俺を罵倒するときに顔赤くなる体質なの? もしくは感じちゃってるの? まあ、それは無い。


「俺の事が嫌いなら部員になる必要はないだろ」

「うっ……!」


 優愛は苦い顔をして押し黙る。


「いいじゃん。部員にしてあげようよ!」

「なっ! 佑お前何で……!」

「だって春樹君といると大変だから。他にも人が居た方がいいでしょ」


 佑……。お前俺の事そんな風に思ってたのか……。ちょっと傷つく。


「ありがとう! 佑!」


 優愛が佑に抱きついて感謝の気持ちを伝える。感謝するだけで抱きつくとかやっぱビッチ。でもちょっと羨ましい。俺も抱きつかれたいかも。


「優愛ちゃん。頑張ってね」

「うん!」


 何を頑張るの? 性行為? やっぱビッチ。


「でもさっき佑、ヒロインいるって言ってたじゃん。あれ誰?」

「え……。優愛ちゃんだよ?」

「マジでか……」


 こいつがヒロインになるのか……。俺は優愛の顔をジーッと見る。まあ……。カワイイし。オッケーかな?


「な、なに見てんのよ!」


 優愛は顔を赤くして怒る。何だよそんなに怒んなくても……。


「分かったよ。見ねえよ」


 俺は優愛から視線を外す。すると優愛は「あ……」と言って、なんでかシュンとしてしまった。


「春樹君。わざとやってる?」


 佑が若干引きながら俺に言う。


「どういう事だ?」

「分かんないならいいよ……」


 てかほんとにわかんない。ただ優愛が俺の事を嫌ってるっていうのは良く伝わった。


――今日の報告――


 ビッチが部員になりました。


誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。

評価などお願い致します。

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