第1話 俺は変態
「女子とイチャイチャしたいよ~」
「しょっぱなから何言ってるの……」
俺の前の椅子に座って、呆れているのは『赤川佑あかがわゆう』俺と同じクラスで、同じ新聞部だ。
佑はメガネをかけていて何か内気な感じだ。中性的な顔立ちなので、時々女子と間違われることもある。俺も初めは女子だと思っていた。でも、男だと言われて信じられなかった。
まあ、それで本当に男か確かめたわけだけど……。その状況はご想像にお任せします。
「じゃあ言い方を変えよう。女子と性行為がしたいです」
「もっと酷くなってるよ!」
「なら何て言えばいいんだよ」
「な、なんかもう少しオブラートに包む感じで……」
「女子とエッチがしたいです」
「何も包んでない!」
「じゃあ女子とセッ○スがしたいです」
「もういいや……」
あきられてしまった。佑は本を読みだす。ちなみにここは部室だ。『新聞部』と言う事にはなってるが、それは建て前で基本的には二人でグダグダと話すことが多い。
そろそろ生徒会が調査に来るんじゃないかとビクンビクンしている今日、この頃です。
「なぁ~、佑~」
「なに?」
佑は本を読むのを止めて、俺の方を嫌々そうに見る。
「佑は女子とエロい事したくないのか~?」
「!?」
「なあって~」
「い、いやそりゃ男の子だし……。そういう事はしたいと……」
佑は顔を赤くして恥ずかしがる。
「え? 聞こえないなぁ~」
つい意地悪をしてしまう。何かいじめたくなるんだよな佑って……。
「だ、だからそういう事はしてみたいとは思う……」
「ごめん、聞こえない」
すると佑は立ち上がり、俺に向かって怒鳴った。
「春樹君のバカー!」
そして佑は持っていた本を俺に投げて、部室を出て行ってしまった。
「いてぇ……」
佑が投げた本の角が俺のでこにクリーンヒットしてしまった。
う~ん。やりすぎたかな……? まあ、俺は性欲に忠実だからな。てか彼女欲しい……。今まで17年間生きてきたけど、俺は彼女ができたことがない。小学校、中学校と暗かった俺は、周りの人に相手されなかったのだ。
「よし、何か動画でも見るか……」
俺はつぶやいて、部費で買ったノートパソコンの電源を入れる。今、この部室には俺以外誰もいない……。てことは『ナニ』をしてもばれないんじゃないか……? まあ、しないけどね。家でじっくりする。
俺はニコ○コ動画のページにとんだ。最近俺はニコニ○動画で動画を見るのにはまっている。それまではようつべを見ていたのだが、何か自然とニ○ニコ動画を見るようになったのだ。
俺はアニメを見ることにした。
結局そのまましばらくアニメを見続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「もうあんな事言わない?」
俺がノートパソコンを直そうとしたと同時に佑が帰ってきた。そして現在に至る。
「おう、言わねえよ」
「本当だね?」
「当たり前だ。決して『ほら……。俺の息子がこんなんになってるんだぜ……?』とか言わねえよ」
「じゃあね」
佑は立ち上がり、部室から出ていこうとする。
「イっちゃらめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「もう下ネタ言うのやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
二人の絶叫が部室に響く。
やっぱ下ネタ言うのは最高だぜ!
「どうして今のが下ネタだってわかるんだい……?」
俺はドアの前にしゃがみこんでいる佑に近づき、妙に低い声で言う。
「そ……それは……」
「ほら、口に出して……」
一応言っておこう。俺は『ホモ』ではない。何か変な感じになってこういう事になってるので誤解しないでください。てか、この状況見たらアイツが喜びそうだな……。
「…………」
お互い顔が近くなったまま無言。
どうしよう。なんか佑、顔赤くなってるぞ!? てか俺も恥ずかしくて顔が熱い。しかも何か胸がポカポカします(綾波○イ風) まさか……。恋!? いやない。男を好きになるとかありえない(フラグ)
「えっと……。とりあえず離れてくれるとありがたいんだけど……」
「す、すまん!」
俺はバッ! と佑から離れる。なんか気まずい……。
「と、とりあえず座れよ……」
「う、うん……」
俺と佑は向かい合わせになって椅子に座る。
「なんか……。やりすぎた。すまん」
俺は佑に向かって頭を下げる。
「いや、いいよ気にしなくて。春樹君がああいう人だってのは分かってるし」
「お、おう……。そうか……」
もう『ああいう人』と思われてるらしい。悔しい……! でも感じちゃう! ビクンビクン!
「なんか変な事考えてない?」
な!? こいつ心の中をよみやがった。
「ソ、ソンナコトナイヨー」
「なんでカタコト?」
疑惑の目を向けてくるが俺はスルーする。『スルーする』って何かダジャレみたい。
「あのな……。佑……」
「な、なに……?」
「男ってのは『変態』なんだ……」
「皆が皆春樹君みたいではないと思うけど」
? 何を言っているんだ? 男は皆、俺のように変態に決まってるだろ。
「佑もそういう事考えてるんだろ……?」
「ずっと考えてるわけないよ……」
「そんな事言って~。ほら……。体は正直だぜ……?」
「またすぐそっち方向に持っていく!」
「持ってイク?」
「何か変換が違う気がする!」
「うるさいぞ。佑」
「春樹君のせいだー!」
佑が叫ぶ。なんでそんなに叫ぶのか……。
「俺のせい……? なら俺が責任取らなきゃな」
「『責任』の意味が怖い!」
「式はいつあげる?」
「やっぱそっちの『責任』かー!」
「どっちが攻めになる?」
「また、下ネタかー!」
「掘っちゃうぞ?」
「アーーーーッ!」
佑は息を切らす。何で息を切らしているんでしょうねぇ……。なにをしたんでしょうか。
「ねぇ……。春樹君……」
息を整えて、佑は悲しそうな表情を浮かべる。
「なんだ?」
「男とこういうことして悲しくならない?」
「それは言わないでくれ……」
だって仲のいい女子いないんだもん……。いや、いるっちゃいるけどアイツ苦手だし……。
「くそ……! こうなったら!」
「え?」
俺は向かいに座っている佑に飛び掛かる。
「もうお前を襲ってやるー!」
「うるさい」
「うっ!」
佑は俺を見事によけ、パンチとキックをかましてくる。
こいつ女子みたいな顔して暴力をふるうとは……。
ちなみに最後の一発が気持ちよかった(小並感)
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
評価などお願い致します。