第二十三話
「いらっしゃいませ。おや、あなた様は………そろそろ来る頃合いだと思っていましたよ。」
「ああ、ここに世話になるのも最後になりそうだ」
「そうでしょうな。パーティーメンバーは6人までと決められておりますから。それでは、さっそくお呼びいたしましょう」
そういうと奴隷商人は奥から1人の女性を連れてきた。背の高い女性だった。現在175センチほどの俺よりも5センチほど高い。しかし大柄な感じはいっさいせず、体のパーツが美しく纏まっている。顔には小さな2本角が生えているが、そんなことを感じさせないくらい整った顔つきをしていた。ボブカットの赤い髪に赤い瞳がよく似合っている。例えるならばそう、ミスユニバースという感じである。
「ホムラといいます~。よろしくお願いします~」
「ああ、よろしく。それで、彼女の事情はなんなんだ?」
「はい、彼女は見ての通り鬼人なのですが、彼女の故郷の鬼人の里が飢饉に襲われまして。率直に言えば口減らしにあったのでございます」
「ほう、それで?」
「それだけでございます」
「は?そ、それだけか?なにかあるだろ。なんで〈永久奴隷〉なのかとか」
「鬼人の里か里長が代々受け継いだ〈永久奴隷の首輪〉を使ったとか。そのほうが高く売れるからと」
「そうなのか………」
とりあえず〈鑑定〉。
〈ホムラ〉
年齢:15
Lv.1
種族:鬼人
職業:奴隷/槍士
体力:300/300
魔力:100/100
筋力:1330
耐久:30
器用:1030
敏捷:1330
智慧:20
精神:20
スキル
〈槍術〉Lv.4
〈剛腕〉Lv.3
〈俊敏〉Lv.3
加護
〈鬼神の加護〉
称号
〈追放者〉〈永久奴隷〉
〈鬼神の加護〉
筋力、器用、敏捷が1000上昇する。智慧と精神が1000以下の時、戦闘中に激昂する。
「なるほどな。鬼人には特殊な加護を持つものもいるんじゃないか?」
「おや、ご存じでしたか。その通りでございます。彼女は〈鬼神の加護〉を持っておりまして、戦闘中にはそれは勇壮な闘いをするそうでございます」
「勇壮ね。ホムラは、戦闘中どんな感じになるんだ?」
「はい~。私、戦闘中は無我夢中になってしまって、よく覚えていないんです~。気がついたら、体が血まみれだったりして、鬼人の里ではなんだか恐がられていたみたいです~」
「どう考えても、飢饉をきっかけにして厄介ばらいしたようにしか思えないのだが」
「ふう、お客様にはかないませんな。ええ、その通りでございます。そういった面も確かに存在しますが、お客様なら問題にもならないかと思いまして。」
「ものはいいようだな。厄介な加護のことを隠して、値段を釣り上げようとしたってそうはいかないぞ。ちゃんと適正な価格をつけてもらおう」
「仕方がないですな。しかし、この美貌に加えて処女ですので、加護のことを差し引いても4000万円ほどはいただきたいですな」
「まあ、そんなものだろう。わかった。それで契約しよう。」
こうして、俺達は6人目の仲間、ホムラを手に入れた。
「それじゃあ、まずは自己紹介からだな。俺が君の新しい主の、クウヤ・カザオカだ」
「エレミアです」
「シルヴィアであります」
「リサよ」
「ブリュンヒルデだ。ヒルダと呼んでくれ」
「はい~。私はホムラと申します~。よろしくお願いします~」
「さっそくだが、俺達はラビリンスの完全攻略を目指している。その目的は〈永久奴隷の首輪〉を外すことだ」
「はあ~、そうなんですね~。でも、なんでそんなことを?」
「〈永久奴隷〉になると、生殖活動が停止する。俺はそれを復活させたいんだ。みんなとの子どもが欲しいからな」
「子どもですか~。確かに私も欲しいです~。でも、私を買ったということは、私も孕ませるつもりなんですか~?」
「あ、ああ。まあ、無理にとは言わないが、同じ目的を持って闘う方がいいと思ってな」
「ん~、そうですね~。私で良ければ、よろしくお願いします~」
「やけにアッサリしてるな。そんなに簡単に決めていいのか?」
「はい~。鬼人の里ではお見合い結婚が主流でしたし、このままではそれすら出来ないですから~。〈永久奴隷〉から解放されるのなら、いい条件だと思います~。それに、ご主人様は好みのタイプですし~」
「そうか………では、俺の秘密も教えよう。〈スキルコピー〉!」
「ひゃっ、な、なんですか~?スキルの情報が流れ込んできました~」
「俺は〈異世界人〉だ。それが俺のユニークスキル、〈スキルコピー〉で、スキルを複製することができる。それで戦力的には問題がなくなるわけだ」
「はあ~、凄いですねえ~。確かに、一気に強くなった気がします~」
「では、ホムラのものをいろいろと買いにいくか」
俺達はホムラのための生活必需品を買い揃えて、ベルンドとアカシャの武器・防具店に向かった。そこでホムラの武具を見繕ってもらい、オリハルコンの両手槍と、オリハルコンのプレートアーマーを手に入れた。
家に戻った俺達はお風呂場にいた。
「さて、恒例の第4回お風呂タイムだ!」
「もう、興奮しすぎですよ。ご主人様」
「そうでありますな。しかし、裸のつきあいは重要かもしれないであります」
「そうね。裸同士でないとわからないこともあるかもしれないわね」
「そうだな。ではさっそく準備をしよう」
「なんですか~?一緒にお風呂に入るんですか~?」
「そうだ。そしてホムラの体を洗わせてもらうぞ」
「はあ、わかりました~」
俺はホムラの体を隅々まで洗った。角を洗おうとすると
「はあう~、そこは弱いんです~」
などというので、執拗に洗ってしまった。そして現在、風呂に浸かっている真っ最中である。
「ふうー、あったまるなー」
「はい。あたたかいです」
「気持ちいいでありますなー」
「そうねえ」
「日頃の疲れが吹き飛ぶようだな」
「これが温泉ですか~、凄いですね~。凄いといえば、エレミアさんのおっぱいも凄いです~。エルフなのに、私と同じくらいないですか~?」
「はい。Fカップになりました!」
「まさに伝説の巨乳エルフであります。自分もあっという間に追い抜かれたであります」
「あたしもHカップになっちゃって、本当に不思議よねえ」
「私もこの1月で1センチ大きくなった。これはもう主殿にそういう能力があるとしか………」
「はあ~、みなさん凄いんですね~。私も大きくなるのかしら~」
ところ変わって俺達は寝室にいた。
「それでは、よろしくお願いします~」
「ああ、出来るだけ優しくするよ」
俺はホムラと口づけをした。
「さて、またまた1~30層を再々攻略するわけだが、ホムラ、大丈夫か?」
「はい~。少し緊張していますが、大丈夫です~」
「よし、それじゃあ行くぞ!」
俺達は1層で〈ソルト・スライム〉と対峙していた。
「よし、それじゃあさっそく、ホムラの力を見せてもらおうかな」
「………………」
「ホムラ?」
「う………」
「う?」
「ウオオオオ!久々の戦闘だ、血がたぎるぜえ!」
「ホムラ!?こ、これが〈鬼神の加護〉の副作用なのか?」
「オラァ!」
ホムラが槍を繰り出し、〈ソルト・スライム〉の核を刺し貫いた。〈ソルト・スライム〉は一撃で動かなくなり、魔石と塩の塊を残した。
「ぬうう、物足りないぜ。もっと強い敵はいねえのかあ!」
そういって、奥へと進んでいくホムラ。
「ちょっ、待ってくれよ、ホムラ!」
そう言って、魔石と塩の塊を拾ってからホムラを追いかけるのだった。
「はあ、今日はなんだか疲れたよ」
結局、あの後一日中ホムラに振り回され、なんとか5層にたどり着いて帰って来た。
「ホムラは、今日のこと全然覚えてないんだよな?」
「はい~。すみません、なんだか迷惑かけちゃったみたいで~」
「いや、いいんだ。最初からわかってて仲間になってもらったんだからな。それにホムラのレベルが21を超えれば、副作用もなくなるだろうし」
「そうなんですか~。それじゃあ私、頑張ってレベルをあげますね~」
そんなことがあって、時間はあっという間に過ぎていき、10月18日月曜日。ついにホムラがLv.21になった。
「ふう、ようやく目標レベルまで到達したか。ホムラ、調子はどうだ?」
「はい~。調子はいいみたいです~。やっと私もまともに闘えます~」
「そうか………戦闘中のことを覚えていないんだから、次が実質初めての戦闘か。大丈夫か?なんだったら最初は見学でも………」
「大丈夫です~。私、頑張って魔物を倒します~!」
「そうか、じゃあこれ以上は何もいわないよ」
そのまましばらく進むと、スケルトン軍団が現れたので、リサの〈神聖魔法〉で敵後衛を倒してもらう。
「よし、〈スケルトン・セイバー〉は俺が相手するから、ホムラは〈スケルトン・ランサー〉と闘ってみろ」
「はい、わかりました~」
俺は旭を抜くと、〈スケルトン・セイバー〉に斬りかかった。剣ごと体を斬り裂き、〈スケルトン・セイバー〉はすぐに魔石を残して消え去った。
ホムラの方を見ると、少し手間取ったようだが問題なく倒せたようだ。
「はう~。なんとか倒せました~」
「よし、偉いぞ、ホムラ。この調子で少しずつ慣れていこう」
「はい、わかりました~」
そうして俺達は先に進むのだった。