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第十六話

俺達は奴隷商店に来ていた。


「これはこれは、ようこそおいでくださいました。おや、そちらの女性は………シルヴィア!?それでは………」

「ああ、理性を取り戻した」

「なるほど………やはりただものではありませんでしたな」

「それでは、さっそく新しい女性の〈永久奴隷〉に会わせてくれ」

「はい、すでに面会のご用意は出来ております。………入って来なさい」


すると、扉の奥から女性が出て来た。妖艶、という言葉が似合う女性だった。濡れ羽色の黒い髪に赤い目、大きな胸に蜂のようにくびれた腰と大きなお尻へのラインは蠱惑的な魅力に溢れている。しかしその物腰と顔つきは清楚なのだ。そのギャップが彼女にたまらない性的魅力を醸し出している。その所作は実に優雅であり、エレガントというほかない。


「………エリザベスと申しますわ」

「このエリザベスはまた変わった事情の娘でして。彼女は変わり者の貴族様の経営する孤児院で育ったのです。幼い頃に〈神聖魔法〉の才能を見出された彼女は、その貴族様に見いだされ、貴族としての教育を受けたのです。その貴族様は彼女を養子にと望んだそうですが、彼女は孤児出身、あまり外聞はよくありません。そこでその貴族様は彼女に〈聖女〉の称号を身につけさせることにしたのでございます」

「〈聖女〉?」

「はい。〈聖女〉の称号は〈神聖魔法〉でなければ治せない、不治の病や身体欠損などの重傷者、〈石化〉の状態異常などを無償で治し続けることで得られる称号でございます。そうやって他の貴族様方に恩を売ることで、養子にすることを認めさせようとしたのですな。この目論見は半分成功しました。エリザベスは〈聖女〉の称号を獲得したのでございます。しかし、いざ彼女を養子にしようとした時、その貴族様のお家が傾いたのでございます。それは他の貴族様からの圧力があったからだそうでございます。そして圧力を止めて欲しければエリザベスをよこせと………それを知った彼女は自らを奴隷商に売り込み、単価の高い〈永久奴隷〉になることで、その変わり者の貴族様の恩に報いたのでございます。そうして売られた先がわたくし共の店だったという次第でございます」

「なるほどな………」


とりあえず〈鑑定〉してみるか。


〈エリザベス〉

年齢:16

Lv.1

種族:魔人・淫魔族

職業:奴隷/治癒士


体力:200/200

魔力:400/400

筋力:20

耐久:20

器用:20

敏捷:20

智慧:1130

精神:1130


レアスキル

〈神聖魔法〉Lv.10

〈偽装〉Lv.10

〈隠蔽〉Lv.5


スキル

〈吸精〉Lv.1

〈闇魔法〉Lv.1

〈魔力操作〉Lv.3


加護

〈サキュバスの加護〉


称号

〈聖女〉〈永久奴隷〉



〈治癒士〉

容量10の職業。魔力、智慧、精神の成長率を40%上昇させる。

〈神聖魔法〉

不治の病、身体欠損などの重傷、石化などの状態異常を治し、限定的な死者の蘇生が可能になる技能。不死族に対して絶大な攻撃力がある。


〈偽装〉

自分の種族を一時的に変更する技能。外見的特徴は変更した種族のものになる。ステータスも変更した種族のものになるが、同レベル以上の〈鑑定〉には見破られる。


〈吸精〉

自分が得られた快楽を、Lv.×100キロジュールまでのエネルギーに変える技能。


〈闇魔法〉

対象に何らかの状態異常を引き起こす技能。質量のある闇、暗黒物質を作り出すことができる。


〈サキュバスの加護〉

生殖能力を自在に操ることができる。魔力、智慧、精神が100上昇する。


〈聖女〉

〈神聖魔法〉で1000人を無償で治した者の称号。智慧、精神が1000上昇する。


「えっ?」

「おや?どうかいたしましたかな?」

「い、いや。なんでもない。それで、彼女はいくらになる?」

「はい、これほどの美貌で処女、さらに〈神聖魔法〉と〈聖女〉の称号とくれば、1億2000万円は下らないと存じます」

「やはり高いな………エレミアとシルヴィアはどう思う?」

「はい。後衛として申し分ない人材だと思います」

「自分も賛成であります!」

「よし、買おう!」

「まいどありがとうございます。ではさっそく契約をいたしましょう」


こうして俺達は新たにエリザベスを仲間にし、家路についた。



「さて、さっそくだがエリザベスに幾つか質問がしたい。いいかな?」

「もちろん、かまいませんわ。なにをお聞きしたいんですの?」

「エリザベスは孤児院出身なんだよな?自分の出生とかは調べたりしたことあるか?」

「ええ、アルフォンス様………私を拾ってくださった貴族様が調べてくださいました。貴族様の経営する孤児院だけあって、孤児院には衛兵がいるのですが、その日は急な眠気に襲われて、気づいたら赤ん坊の私が玄関先にいたそうですわ。」

「街の門番は?何か見ていないのか?」

「門番も急な眠気に襲われてしまい、何も見ていないそうですわ」

「ふむ。急な眠気ってことは睡眠薬か、それとも魔法か………そういえば、〈闇魔法〉は状態異常を引き起こすことができるらしいな?」

「え、ええ。それがなにか?」

「〈闇魔法〉は魔人が持つことのあるスキル………エリザベスを孤児院に預けたのは魔人かもしれないな」

「必ずしもそうとは限らないのでは………睡眠薬を使ったのかもしれませんわ」

「いや、それはない。なぜなら君の種族は魔人・淫魔族!つまるところサキュバスだからだ!」

「!?い、いきなり何をおっしゃいますの?私はこの通り角も羽根も尻尾も生えていませんし、れっきとした人間ですわ」

「それは〈偽装〉スキルによる擬態だ!君の正体はこの〈鑑定〉スキルによって全部まるっとお見通しだ!」

「〈鑑定〉スキル!?その黒髪黒目………もしや〈異世界人〉ですの!?」

「そのとおり!………いやー、こういうの一回やってみたかったんだよな」

「もう、人が悪いですよ、ご主人様。いきなり妙なことを言い出すので何かと思いました」

「エレミア殿の言うとおりであります。ご主人様はやはり鬼畜であります」

「はっはっはっ、悪い悪い。でもこの茶番劇にも理由があってな。この問答で確信した。エリザベス………君、それが地じゃないだろ」

「な、なにをおっしゃっているのかわかりませんわ」

「俺も孤児院出身だからわかるんだけどな。孤児院で育った奴の中にはいつも〈いい子〉でいなきゃっていうのがたまにいるんだ。〈いい子〉にしてれば大人に誉められる。お菓子が貰える。だからいつか迎えが来るかもしれないってな。………エリザベスからはその〈いい子〉を演じている気配を感じた」

「………なぜそうおもいますの?」

「だってさ。〈聖女〉になるための修行は相当過酷なはずなんだ。文句も言えずにやり遂げたんなら相当なストレスになったハズだ。だから思ったんだ。奴隷になったのは貴族を助けるのと同時に貴族から逃げるためだったんじゃないかってな。そして買われた先の俺に気に入られるために、つい癖で〈いい子〉を演じてしまった………そんなところじゃないかな」

「………………」

「まっ別にエリザベスがそうしたいなら俺はかまわないぜ。俺は別に本性をだせとか言うつもりはないし、エリザベスの好きにしたらいいさ。俺は自然体でいたほうが楽だとは思うけどな」

「………ふぅ、参ったわ。降参よ。まさかここまで見透かされちゃうなんてね。〈鑑定〉って心まで見えるのかしら?」

「まさか。ただの勘がだよ。洞察力ってやつ?」

「うふふ、面白い人ね。それで、あたしの正体を知ってどうするの?」

「そうだな。腹を割って話したいから、本当の姿を見せてくれないか?サキュバスって見たこと無いし」

「いいわよ。ちょっとまってね。たぶんこのままだと服が破けちゃうから。」


そう言ってエリザベスは服を脱いで下着姿になった。


「〈偽装〉解除!」


するとエリザベスの頭には羊の角が生え、耳が尖り、背中から蝙蝠の羽根が生え、お尻から悪魔の尻尾が生えた。


「はぁー、生まれて初めてサキュバスに戻ったけど、なんだか変な感じ。確かに元に戻ったって感じるけど、違和感の方が強いわね。………それで、初めてサキュバスを見た感想は?」

「あ、ああ。なんというか。さすがサキュバス、相当にエロいな。その黒の下着も似合ってるし」

「うふふ、誉められて悪い気はしないわね。それで、話したいことってなに?」

「ああ、順を追って話そうか」


俺はこの世界に来てから今までの事を簡単に説明した。


「………なるほどね。それで後衛を探してたって訳ね。それより、私を仲間にしたってことはつまり………」

「ああ、エリザベスにも俺の子どもを産んで欲しいが、なにか?」

「ち、直球でくるわね。でもいいの?あたし魔人よ?サキュバスよ?」

「何か問題でもあるのか?」

「ご主人様、魔人は〈闇魔法〉を使うので、魔物だと考える人がいるのです。特に教国では魔人を神の敵だと考える宗教があって、教会が魔人の弾圧を行っています。」

「そうなのか。でも迷宮都市は治外法権だろ?気にする人は少ないんじゃないかな。もし何か言ってくる奴がいても大丈夫。俺が守ってやるさ」

「そうであります!ご主人様は最強なのであります。何も心配することは無いのであります」

「そうですよ。私達は気にしません。一緒に頑張りましょう」

「………ありがとう。あたしも思い出したわ。幼いころは素敵なお嫁さんになることが夢だったわ。でも10歳の時に〈ステータスカード〉を貰って、自分がサキュバスだってわかった。そのとき、ああ、私はみんなと違うんだなってわかって、叶わない夢なら諦めたほうがいいって思ったわ。〈神聖魔法〉がアルフォンス様の目に留まって、貴族の教育を受けて。〈聖女〉を得るため修行を続ける内に、自分が嘘で塗り固められていくような気分だった。〈聖女〉になって、このまま嘘を吐き続けていくのかなって思ったら、アルフォンス様の家が傾いて………これが最初で最後のチャンスだって思ったわ。〈永久奴隷〉になって、迷宮都市に連れてこられて………あなたに買われた。なのに、あたしはここまで来ても嘘を吐き続けていたわ。それをあなたが見破ってくれた時、どんなにほっとしたか………その上、あたしに子どもを産んで欲しいなんて、そんな幸運があっていいのかなって………」

「………エリザベス」

「その名前で呼ばないで!その名前は嫌いよ。嘘で塗り固められた名前だから。………ねえ、あたしに新しい名前を付けてよ。そうすれば、新しい自分になれる、本当の自分が見つかる気がするのよ」

「わかった。………そうだな。リサっていうのはどうだ?」

「リサ………うん、あたしはサキュバスのリサ!自分らしく正直に生きるわ!よろしくね。マイマスター!」

「ああ、よろしく、リサ」

「よろしくお願いします、リサさん」

「よろしくお願いするであります、リサ殿」

「よし、じゃあ、リサの服とか武具とか買いに行くか!あ、リサは人間に〈偽装〉してくれよ。服が着れないだろうからな。」

「ち、ちょっとーいきなりそれ?今正直に生きるって決心したところなんですけどー」

「仕方がないだろ。それとも四六時中、下着姿でいる気か?………リサは俺のものなんだから、肌を見せるのは俺だけにしてくれよな」

「う、うん、わかったわ。〈偽装〉、人間!」


すると人間の姿になったので、再び服を着てもらい、俺達は買い物に出掛けた。



「いらっしゃいませ!おや、クウヤじゃないかい。今日はなんのようだい?」

「久しぶり、アカシャさん。今日は新しい仲間が増えたので、その装備を整えようと思って来たんだ」

「へえーこりゃまた別嬪さんだねえ!ちょっと待ちな、いま父ちゃんを呼ぶからね。………父ちゃーん!クウヤが来たよ!」


そうしてしばらく待つと、奥の工房からベルンドが出てきた。


「おうおう、久しぶりじゃな、クウヤ。新しい仲間が出来たんじゃって?」

「ああ、装備を見繕ってもらいたい」

「ふむ、この魔力はお嬢さん〈治癒士〉かね?」

「ええ、〈神聖魔法〉が使えるわ」

「なるほど、そいつは凄い。それなら、武器はこの杖がよかろう」

「この杖は?」

「うむ、この杖はユグドラシル・トレントが残す木材を削って作った本体にレインボー・カーバンクルという魔物が残す宝石をあしらったもので、宝石の魔力があらゆる魔法の効果を強化してくれるという一品じゃ。防具は、アライブ・アラクネーが残す糸で編んだ生地に、セイント・ユニコーンという魔物が残す角を粉末状にしたものを擦り込んだ、聖者のローブじゃ。物理的防御力もそこそこあり、〈神聖魔法〉と〈光魔法〉の効果を高めてくれる。2つで4000万円というところじゃな」

「相変わらず高いな………その分いいものだから仕方ないか。ほい、白金板4枚」

「確かに。今ラビリンス攻略はどうなっとるかの?」

「31層まではいったよ。けど、そこのインテリジェンス・スライムが手強くてね。後衛が必要になったんだ」

「なるほどのう。冒険者たちはインテリジェンス・スライムは無視して進むらしいが、お前さんは、あえて闘うことを選ぶか」

「ああ、無視して進んでも、強くなれないからな。それじゃ、これでお暇させてもらうよ」


俺達は店を後にして、家路につくのだった。

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