第十一話
「い、いや!こないで!」
「大丈夫だ、もう怖いことはおきねえ。もうぶたれたり、蹴られたりすることもねえ」
「………ほんと?」
「ああ、だからおじさん達についてきてくれねえか」
「うん、わかった」
「いい子だ。ちょっと目をつぶっててくれよ」
「うん」
ナインが女の子を抱えてこちらに来た。
「兄ちゃん、頼む」
「ああ、リベレイト!」
女の子の〈奴隷の首輪〉が外れた。
「すまねぇな、兄ちゃん」
「それより、ここを早く出よう。こいつらは、全部焼き尽くすから」
「ああ、わかった」
俺達は部屋を出ると、部屋の中を焼き尽くした。
「もう目を開けても大丈夫だぞ」
「うん」
「さて、これからどうするでござるか?このアジトにはめぼしいものはないようでござるが」
「わたし………知ってる。親分って人の部屋に隠し扉があるの」
「ほう、宝はそこにありそうですね。探してみましょうか」
「ああ、そうだな。ありがとよ、嬢ちゃん」
「えへへ………」
ナインが女の子の頭をなでる。
「………ロリコン?」
「ちっげーよ、ここは父性愛とかいうとこだろ!」
「でもなあ、チーナとか結構怪しかったし」
「………それこそちげぇよ。チーナは………山賊に襲われた娘の子どもなんだ。10歳ぐらいになろうってのに5歳くらいにしか見えないくらいにガリガリに痩せてた。あいつが年の割に小さいのはそれが理由だ」
「それは………でも助けてくれた相手ならなおさら………」
「それにな、あいつは知ってるはずだ。あいつの母親を殺したのが俺だってな………。さあ、辛気臭い話は終わりだ!とっととお宝を捜そうぜ!」
そういってナインは話を強引に終わらせ、山賊の親分の部屋に入っていった。
「うーん、ここらへんに確か………あった!」
女の子が山賊の親分の椅子と思わしきものをいじくると、壁の隅にあった戸棚が動いて扉が現れた。
扉の中には山賊達が溜め込んだと思わしき宝の山があった。
俺はそれらを〈アイテムボックス〉に放り込んでいく。
「うおっ〈アイテムボックス〉まで持ってんのか。とことん規格外だな兄ちゃん」
「ただの〈異世界人〉の子孫だよ」
「しかし、〈異世界人〉の子孫というならノブナガもそうらしいですが、彼は刀を扱ってはいても基本的に私達と変わりありませんよ」
「いや、拙者は血もだいぶ薄まっているでござるから、名字もない。クウヤ殿は名字が残るくらいには血が濃いのであろう。あるいは〈異世界人〉同士の孫、曾孫あたりではないかな?」
「まあ、そんなところかな」
宝を〈アイテムボックス〉に入れ終えたので、そろそろ戻ることにした。残っていた山賊達の〈ステータスカード〉も回収済みである。
アジトをでた俺達は、ここが二度と利用されないように焼き尽くし、〈土魔法〉で入り口を塞いだ。
「おっそーい!待ちくたびれちゃったじゃないのよ!」
「悪い悪い、ちょっといろいろあってな」
「いろいろってなによ………あー!何よその子!」
「この子は、まあ、そのいろいろだ、いろいろ」
「可愛い!」
そう言うとチーナはラインから女の子を強奪した。
「やーん、可愛い!ねえねえ、名前はなんていうの?」
「ミ、ミリィ………」
「ミリィちゃんか!あたしはチーナっていうの!よろしくねミリィちゃん!」
「う、うん………」
「おいおい、チーナその子が困ってんだろ。離してやれよ」
「ロリコンは黙ってて!ミリィちゃんもこんなヒゲオヤジよりも母性溢れるあたしのほうがいいよね。ねー、ミリィちゃん!」
「ロリコンじゃねーよ、父性愛だ!それに母性溢れるとかなにいっちゃってんの!?どうみてもメイサのほうが母性に溢れとるわ!」
「体型の話じゃありません、心の問題です~。このエロオヤジ!危険だからこのロリコンムッツリスケベオヤジには近づいちゃ駄目ですからねーミリィちゃん!」
「ちょ、おま、何いってくれちゃってんの?それにまだ俺は若いわ!28歳だ!」
「「「「「えっ、なにそれこわい」」」」」
「おまえらー!」
「ふふっあはは」
「あっ、笑った!ミリィちゃんようやく笑ったよ!」
「う、うん。………ありがとう、お姉ちゃん」
「なーに、いいってことよー!」
「さて、茶番劇はこれくらいにして、今後の予定について話し合いましょうか」
「そうだな、とりあえず凍り漬けになった山賊達の死体は焼いちまうか」
「それがいいでござろう。放っておくとゾンビになってしまうでござるからな」
「す、〈ステータスカード〉はか、回収済みです」
「あなた達………この範囲のものを焼き尽くすのにどれだけの魔力が必要だと思って………まあ、いまさらかしらね」
「大岩は砕いておきましたよ、ご主人様」
「ありがとう、エレミア」
俺達は山賊達の死体を焼き尽くし、再び迷宮都市への旅路に戻った。
「うわああああ、これが迷宮都市かあ!」
その都市は巨大な建物で埋め尽くされていた。といっても、5、6階建てが限界で、区画整理されているのか、道も真っ直ぐだった。見た目よりはすっきりしているようだ。道の一番向こう側に、一際大きい7階建ての建物と、〈迷宮〉の入り口が見えてきた。
「お客さん、あれが迷宮都市の冒険者ギルドとこの街の〈迷宮〉、ラビリンスですよ」
「とりあえず、冒険者ギルドで報告だな。俺達は護衛の仕事の報告があるから、兄ちゃんは山賊の件の報告をしてくれ。ほとんどお前さん達の手柄だしな」
「わかった」
馬車は冒険者ギルド前で止まり、俺達は冒険者ギルドに入っていった。
さすが大陸中から冒険者が集まってくるだけあっていろいろな種族がいる。俺達は適当に空いてる受付に並んだ。
「冒険者ギルドへようこそ!本日はどのようなご用件でしょうか?」
「山賊を退治したんですが、その報告がしたいんです。この街だと、冒険者ギルドが取り仕切っているんですよね?」
「はい、その通りです。山賊の〈ステータスカード〉はお持ちですか?」
「はい、これです」
受付のカウンターにザーッとカードをばらまく。
「え、えぇっと、多いですね。少々お待ちください。今確認させますので。………これお願い。ええこれ全部よ。泣き言いわない、行動は迅速にっていつも言ってるでしょ。………すみません、現在少々立て込んでおりまして。………もしかして、山賊の宝などをお持ちでしょうか」
「はい、〈アイテムボックス〉に入ってます」
「当ギルドでは幅広いネットワークを生かし、山賊に奪われた宝を返還するサービスを行っております。よろしければ山賊の宝をお売りいただけないでしょうか」
「いいですよ。そういうことなら」
「ありがとうございます。こちらのカゴにお入れください。………多いですね。ちょっと、これ査定にまわしてくれる?タグつけといたから………それとカゴ持ってきて、そう、ここにあるのだけじゃ足りないかも知れないから。………うん、ありがとう。………お待たせしました。こちらのカゴにどんどんいれちゃってください。あ、タグつけますね。………はい、これで終わりですね。しばらくお待ちください」
ギルド側の処理を待っていると、あちらは報告が終わったのか、ナイン達が近づいてきた。
「よお、兄ちゃん。まだかかるかい」
「ああ、そうだな。まだかかるみたいだ。そうだ、みんなも関係者なんだから、報酬を受け取ったらどうだ」
「いやいや、俺達はなんもしてねえって、生きてるだけで丸儲けってな。報酬は受け取れねえよ」
俺達がどうでもいいことを話していると、受付嬢がなにやら慌てた様子で話しかけてきた。
「お、お客様、少々お話が。」
「はい、なんですか?」
「………ギルドマスターがお話をお聞きしたいと」
俺達はギルドマスターがいるという部屋まで来ていた。ナイン達も一緒だ。関係者だからと言って嫌がるのを無理やり連れてきた。
「うおおお、なんか緊張してきたぜ」
「あんた、さっきまであんなに嫌がってたじゃない。しっかりしなさい!」
「いや、だってよ、迷宮都市のギルドマスターならここの〈迷宮〉の最前線を攻略してた英雄だろ?そりゃ緊張するって」
「たしかに………人類最強の人物の1人といっても過言ではないでしょうね」
「ひえええ、さ、最強ですかぁ?」
「うむ、ぜひ一度ご教授願いたいものでござる」
「どうかしら?もうご老体らしいし、当時の強さはないんじゃないかしら?」
俺はそんなはずはないと確信していた。なぜなら扉越しにも関わらず本能を直接刺激するような強者の威圧をビシバシと感じていたからだ。
「………開けるぞ」
扉を開けるとそこには、………妖艶な美女がいた。………ホワッツ?
「冒険者ギルドにようこそ、歓迎するわー。私がギルドマスターのナターシャ・アルジェンナよー」
「あっ、クウヤ・カザオカです。よろしくお願いします」
「エレミアと申します」
「ナ、ナインだ」
「チーナ!」
「ランスロットです」
「サ、サーシャです」
「ノブナガと申す」
「メイサよ」
「ミリィです!」
「はい、いっぱいいるわねー。お姉さん覚えきれるかしらー」
〈鑑定〉!
〈ナターシャ・アルジェンナ〉
年齢:415
Lv.81
種族:闇森人
職業:剣帝/天騎士/弓帝
体力:72300/72300
魔力:18400/18400
筋力:11030
耐久:10230
器用:9230
敏捷:10230
智慧:4730
精神:4730
スキル
〈剣術〉Lv.10
〈盾術〉Lv.10
〈弓術〉Lv.10
〈魔弓〉Lv.10
〈剛腕〉Lv.10
〈俊敏〉Lv.10
〈雷魔法〉Lv.10
〈付与魔法〉Lv.10
〈魔力操作〉Lv.10
加護
〈ダークエルフの加護〉
称号
〈異世界人の信愛〉〈雷天妃〉〈守護聖人〉〈酒仙〉〈愛の伝道師〉
〈剣帝〉
容量100の職業。体力、耐久、器用の成長率を100%上昇させ、筋力、敏捷の成長率を150%上昇させる。
〈天騎士〉
容量100の職業。筋力、器用、敏捷の成長率を100%上昇させ、体力、耐久の成長率を150%上昇させる。
〈弓帝〉
容量100の職業。体力、耐久、敏捷の成長率を100%上昇させ、筋力、器用の成長率を150%上昇させる。
〈雷魔法〉
Lv.×1万ボルトまでの電流を発生させる技能。発生させたボルト数÷1000の魔力を消費する。
〈付与魔法〉
自分の体または持っている武器に属性を付与する技能。付与できる属性は所持者の持つ属性魔法に依存する。
〈ダークエルフの加護〉
寿命が500年延びる代わりに生殖能力が低下する。魔力、智慧、精神が100上昇する。
〈雷天妃〉
雷を纏って闘う麗しき乙女に送られる称号。智慧が1000上昇する。
〈守護聖人〉
100年以上1つの土地を守り続けたものの称号。耐久が1000上昇する。
〈酒仙〉
どんなに酒を飲んでも一定以上酔わないものの称号。精神が1000上昇する。
〈愛の伝道師〉
1000組以上の夫婦が誕生するのを見届けたものの称号。1組成立につき全ステータスが1上昇する。現在2000組。
強い!圧倒的だ!特に〈愛の伝道師〉がヤバすぎる。とりあえず〈スキルコピー〉はしておこう。
「えーっと、クウヤ君が主に山賊達を討伐したのよねー?まだ計算している途中だけど、凄い数よねー。どうやってこれだけの数を倒したのかとか、お姉さんに教えてくれると助かっちゃうなー」
「はい、わかりました」
俺達は大岩が現れたところから話し始めた。