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プロローグ

「あ~あ、つまんねぇなぁ~」


 いきなりで悪いがこれが今の俺の気持ちを表すのにぴったりだと思う。

 俺の名前は風岡空也、今日で17歳になる高校2年生だ。

 そう、つまりは今日は俺の誕生日………らしい。なぜこんな言い方かというと、正確には今日は俺が孤児院の前で捨てられていた日だからだ。

 それから今日まで17年、里親も見つからず、親戚が名乗りを上げるなんてこともなかった俺は孤児院の手伝いをしながら生きてきたわけだ。 そんな俺の人生は平凡の一言に尽きる。孤児院出身ということでお約束の軽いイジメくらいはガキの頃に経験しているが、それで性格がひねくれるなんてこともなかった。 なぜなら孤児院の院長先生が剣道の有段者で、ガキの頃から体だけは鍛えられてきたからだ。

 おかげさまで小学生がやるような低レベルのイジメくらい気にならなかったし、体育の授業でそれなりに活躍すれば、周りに認められてそれなりの友人も出来た。 たいして頭も良くない俺は、公立の中学を出て、中の下くらいの高校に入り、今に至る、てわけだ。

 俺の人生、このまま平凡に生きて、平凡に死ぬのかな、と校舎の屋上でたそがれてた時のことだ。


「ん?………なんだあれ?」


 校舎の屋上の縁に黒いモヤみたいのが浮かんでいた。俺はなぜだかそれが妙に気になって、それに触れようとしてみた。………いや、してみてしまったんだ。

「うわっ、ひ、引っ張られるっ!」


 俺の体は黒いモヤに引きつけられ、黒いモヤはどんどん大きくなり、そして俺の体を覆い尽くすほどになると………暗転。



「う~ん、ここは、どこだ?」


 そんなお約束な言葉を言ってしまうほど、それは異常な光景だった。周りは草木で覆われ、遠くが見通せない。普通こんなジャングルなら虫の音でもするはずなのに、当たり前のように風の音しかしなかった。 それよりももっとおかしなことに俺はきづいてしまっていた。唯一見渡せる空を見上げると………月が二つあったのだ。


「クソッ、なんなんだここは?俺はたしか………校舎の屋上で………黒いモヤみたいのが………!!!そうだ!あの黒いモヤみたいのに吸い込まれたんだ!………てことは………てことは、ここここってい、異世界!?」


 当たり前だが俺の質問に答えてくれるものはいなかったが、俺は確信していた。ここが異世界だと………そして身1つでジャングルに放り出されてしまったと………。


「と、とにかくここがどこかわからないと動きようがないな………。なにかないのか?こういうのってチートがあるのがお約束だろ!」


 しかし自分の体に別に変わったことなど何1つ無く、自覚がないだけなのかとその場でジャンプしてみたりしたが何も変わっていなかった………。


「こういう時は、テンプレだ!なにか自分の能力を把握できる方法があるはずだ………ステータス!メニュー!〈鑑定〉!ってうわっ」


〈鑑定〉と叫ぶと目の前に半透明の窓のようなものが現れ、そこには文字の羅列が書いてあった。


〈木〉

スキル

〈光合成〉

〈生命力強化〉

〈成長力強化〉


どうやら目の前にあった木を〈鑑定〉したらしい。


「なるほど………お約束通りなら自分の腕を〈鑑定〉すれば!」


うまくいきますように、と思いながら自分の腕を見て〈鑑定〉と念じてみる。


〈クウヤ・カザオカ〉

スキル

〈剣術〉

〈体術〉

〈調理〉

〈算術〉

〈鑑定〉

スキルポイント:10



「どうやら念じるだけでも使えるらしいな………情報少なっ………いや〈木〉もスキルしか出てないから当たり前か。つうか、〈木〉にスキルあんのかよ………。〈剣術〉、〈体術〉は孤児院で習ってたからかな。〈調理〉も自炊してたから当たり前か。〈算術〉も高校生なら持ってて当たり前な気がする。………なら鑑定は?………ダメだ、思い当たる節がない。異世界といえばのテンプレだからか?いや、まさかな。それよりもこれだ。スキルポイント:10。これが俺の生命線、運命の分かれ道、って感じがする」


どうする………いやまずはこのスキルポイントが使えるかどうかだな。………どうやら念じるだけで使えるらしい。しかし、使った結果どうなるかは分からない。スキルの内どれかを選択して使うのは分かるのだが………。ふむ。一つずつ考えてみよう。〈剣術〉は、使えば剣を持って戦う時に有利になるだろう………が、剣がない。論外だな。〈体術〉は身一つで戦ったりできそうだがどこまで通用するのかも分からない。〈調理〉、〈算術〉はそもそも今必要かも怪しい。すると………〈鑑定〉か。正直、なぜ持っているのかも分からないスキルに頼るのは怖いが、今はとにかく情報が欲しい。


「よ、よし。やっちゃうか。思いたったが吉日ともいうしな」


俺は〈鑑定〉にスキルポイントを”思いっきり”使用した。


”〈鑑定〉がレベルアップした!〈鑑定〉Lv.1→Lv.10になった!”


「うおっなんか出た!〈鑑定〉がレベルアップ?Lv.1→Lv.10ってなんでだ?」


俺は嫌な予感がしながら自分を〈鑑定〉してみた。


〈クウヤ・カザオカ〉

年齢:17

Lv.1

種族:人間

職業:学生


体力:200/200

魔力:100/100

筋力:30

耐久:30

器用:30

敏捷:30

智慧:30

精神:30


ユニークスキル

〈スキルコピー〉


レアスキル

〈鑑定〉Lv.10


スキル

〈剣術〉Lv.1

〈体術〉Lv.1

〈調理〉Lv.3

〈算術〉Lv.5

スキルポイント:1


加護

なし


称号

〈異世界人〉



「スキルポイントが1に減ってる………もしかして全振りしちまったか!?1ポイントずつ確かめるつもりだったのに………。」


ま、まあこういうこともあるよな。仕方ない、必要経費として割り切ろう。それよりも………。


「称号に〈異世界人〉があるってことはここは異世界決定か………。まあいまさらだけど。しかし、もう少し詳しく見れないものか」


そこで、〈異世界人〉を見ながら〈鑑定〉と念じると………。


〈異世界人〉

百年ごとに異世界からやってきた人間。レベルアップ時、全てのステータスの成長率が2倍になる。


「おっ、詳しく見れた。この調子で他のも見ていくか」


〈Lv.〉

生命の格。Lv.×5ずつ魂の容量が増える。


〈種族〉

生命の分類。魂の色を決める。


〈人間〉

この世界で最も多いヒト族。魂の色は無色透明。何色にでも染まる。


〈職業〉

生命の器。魂の容量が大きければ大きいほど多く、強力な職に就ける。


〈学生〉

容量10の職業。全てのステータスの成長率を15%上昇させる。


〈体力〉

生命が持つ生命力。0になると死亡する。


〈魔力〉

生命が持つ魔素量。0になると気絶する。


〈筋力〉

生命が持つ物理的攻撃力。


〈耐久〉

生命が持つ物理的防御力。


〈器用〉

生命が持つ干渉力の精密さ。


〈敏捷〉

生命が持つ瞬発的、持続的な移動能力。


〈智慧〉

生命が持つ魔力由来の干渉力。


〈精神〉

生命が持つ魔力由来の抵抗力。


〈レアスキル〉

生命が持つ希少な技能。


〈鑑定〉Lv.10

あらゆる生命、物質、現象を所持者に最も分かりやすい形に翻訳する技能。


〈スキル〉

生命が持つ汎用的な技能。


〈剣術〉Lv.1

ごく一般的な剣の心得と、初歩的な技術を身につけた者の技能。剣を持っている時に筋力にLv.×1%の補正。


〈体術〉Lv1

初歩的な体裁きを身につけた者の技能。体勢の維持と体力の管理に補正。


〈調理〉Lv.3

一通りの調理技術を身につけた者の技能。料理の知識、調理技術に補正。


〈算術〉Lv.5

2次関数、三角関数、確率、論証などを修めた者の技能。計算速度に補正。


「なんか、分かったような分からないような………。魂の色ってなんだ?分かるのはレベルアップすると魂の容量が大きくなって、新しい職業を増やしたり強力な職業に就いたりできるってことくらいか」


さて、今まであえて触れなかったが、まだ〈鑑定〉していない項目がある。それは、ユニークスキルだ。名前からしてすごそうだが、このスキルがもしハズレだったとしたらかなりマズい。正直不安だ。


「しかし、虎穴に入れずんば虎児を得ずともいう。ええい、ままよ!〈鑑定〉!」


〈ユニークスキル〉

生命の中でも一個体しか持たない限定的な技能。


〈スキルコピー〉

認識している他の個体が持つスキルと加護を魔力を消費して自身に複製することができる。ただし、複製するには対象となるスキルをほぼ完璧に理解していなければならない。スキルレベルは維持して複製され、同名スキルを複製した場合スキルレベルを加算する。同一個体からスキルを複製できるのは1日1回まで。1度に複製できるスキル数に制限はないが、必要な魔力が足りない場合は失敗する。逆に自分のスキル、加護を他の生命に複製することもできる。ただし、ユニークスキルを複製することはできない。さらに、一度でもこのスキルを使ってスキルを複製した個体はスキルポイントの使用が不可能になる。


「チートキタコレ!なんじゃこの壊れ性能はデメリットが少なすぎるというかほぼ無いに等しいんじゃね?」


対象となるスキルをほぼ完璧に理解するという条件は〈鑑定〉を使えばなんとかなるし、スキルポイントを使用できないのは痛いが同じスキルをコピーし続ければスキルレベルは最大値にできる。


「しかし問題はこの森にどれだけスキルを持った個体がいるかってことだよな」


相変わらず周囲には何の生き物の気配も無い。


「ん、待てよ。”スキルを持った個体”?」


〈鑑定〉!


〈トリネクの木〉

年齢:50

Lv.20

種族:広葉樹

職業:成木


体力:6500/6500

魔力:2500/2500

筋力:0

耐久:500

器用:0

敏捷:0

智慧:200

精神:400


スキル

〈光合成〉Lv.4

〈生命力強化〉Lv.3

〈成長力強化〉Lv.3



さらにスキルを〈鑑定〉!


〈光合成〉Lv.4

魔力と光を使用してエネルギーを作り出す技能。


〈生命力強化〉Lv.3

体力をLv.×1000上昇させる技能。


〈成長力強化〉Lv.3

肉体の成長を促進する技能。全てのステータスの成長率をLv.×10%上昇させる。


「よっしゃ!キタコレ。〈光合成〉があれば食料いらずだぜ。」

俺はさっそく残ったスキルポイントを使って〈体術〉スキルを上げた。一番使えそうだからね。そしていよいよ………。


「〈スキルコピー〉!」


何かを使う感覚と共にスキルの情報が体の中に入ってきた。

〈鑑定〉!


〈クウヤ・カザオカ〉

年齢:17

Lv.1

種族:人間

職業:学生


体力:3200/3200

魔力:90/100

筋力:30

耐久:30

器用:30

敏捷:30

智慧:30

精神:30


ユニークスキル

〈スキルコピー〉


レアスキル

〈鑑定〉Lv.10


スキル

〈剣術〉Lv.1

〈体術〉Lv.2

〈調理〉Lv.3

〈算術〉Lv.5

〈光合成〉Lv.4

〈生命力強化〉Lv.3

〈成長力強化〉Lv.3


加護

なし


称号

〈異世界人〉



「魔力の消費は10か。よし!これで当面の問題は水だけだな。」

これについては心配していない。ここに来てからしばらくして気づいたが微かに川のせせらぎが聞こえるのだ。風が凪いでいる時にだけ聞こえるのだが。そして周りにはスキルを持つ〈トリネクの木〉が山ほど生えている。


「スキルをコピーしながら川に向かうか」


こうして俺の旅は始まった。

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