CASE30:集結
なんと久しぶりな更新
えと、5ヶ月ぐらいですね
動きを察知していたオーダー社とユニオン社はそれぞれ守備隊をラジスタへ派遣していた。オーダー社側は黒服組を筆頭にした部隊構成である。
白服を着たツンツン髪の男がリストを片手に部下達に指示を出している。
「おい! そのコンテナは隣の部隊に届けろ! 次のはユニオンの連中に持ってけ」
フォークリフトが慌しく基地内を動いている。主に動いているの肉体派の白服組である。
「コリン副長――」
「なんだよ、今忙しいんだよ! こんな規模の輸送も久々すぎる!」
誰かに呼ばれたコリンがすっと振り返ると、そこには小柄な女性がニコっと笑って立っていた。
「レミリア大佐!」
急な上官の訪問にテンパリまくっている彼は、脇にリストを挟んですかさず敬礼をした。
それを見て、クスクスとあどけない笑顔を見せている。
「君は相変わらず元気がいいな。もう一度、私の部隊で勉強してみないかな?」
「はっ! そのようなご機会あれば是非!」
その声を聞いた他の隊員達も彼女に対して敬礼をしているが、当の本人は手で口を押さえて笑っている。
「大佐、用件を早くお伝えされた方が良いのでは?」
副官のランバートは前かがみになり、笑う彼女に耳うちをする。
「あぁ~、そうだったそうだった。ジェームズ・ウォーカー中将はどちらにおいでかな?」
「補給官の甲板デッキにおられます!」
「了解。ありがとうね」
そう言うと、真面目な顔に戻し彼とその部下達に向かって敬礼をした。
彼女の後ろ姿を見送ると、一斉にコリンのもとへ部下達がやってきた。
「コリン副長、あの人がレミリア大佐ですか?!」
「そうだよ、昔見た目はあんまり変わってないな」
「すごい、優しそうな人だったよな~」
それぞれの顔を見ながらそう言うと、コリンがため息を漏らした。
「はぁ、お前らはあの人の怖さを知らないからそんなこと簡単に口に出せるんだよ」
「というと?」
その訳を聞きたそうに食い下がる。
「それはだなぁ――――」
「はい」
「んなこと今はどうでもいいからさっさと作業に戻れ!」
口に出そうとしたが、部下達に乗せられていることに気づき一喝した。
「なんでぇ、つまんね~」
「お前ら、上官の命令違反で減給処分するぞ?」
冷静を装っているが、部下達の目には握った拳で自分達を殴る準備をしているようにしか見えなかった。
ゆったりと後ずさりし、敬礼すると急いで運搬作業に戻った。
「ったく、あいつら調子に乗りやがって。あっ、連絡入れておかないとな」
腰に付けた無線機の周波数を変更すると、イヤホンタイプのマイクを手で押さえる。
甲板デッキには1人の男が自分達の陣営を腕組みをして見据えている。後姿からもその男から堂々とした風格を感じられる。白い軍服にはいくつかの勲章が付いているだけで後は質素な作りとなっている。
そこへ一本の無線が入った。
「ウォーカー中将、ご報告よろしいでしょうか?」
「ステイラー中尉か? なんだ?」
無線機の受話器を手に取ると口を開いた。
「レミリア・スターシャ大佐が到着され、今そちらへ――」
「わかった、運搬の方は順調か?」
「そうですね、残り30%といったところです」
「終わり次第、連絡をくれ」
「了解しました」
会話が終わって間もなくドアをノックする音が聞こえた。
「入れ!」
「失礼します。第3法大隊隊長、レミリア・スターシャ大佐、参りました」
「同じく、副長のグイン・ランバート大尉、参りました」
靴を揃え気をつけの姿勢をとると、上官である彼に敬礼をした。
「私がここ、ラジスタ防衛戦の指揮を任せられたジェームズ・ウォーカー中将だ。君らの活躍は常に耳に入る。先日の防衛戦でも見事な手腕を見せてくれたそうじゃないか?」
開けられている窓から乾いた風が入ってきている。敬礼を解くとゆっくりと歩きながら語りだした。
「いえ、ウォーカー中将が日頃より部隊育成に取り組んで下さっているおかげかと私は感じております」
「何を言うかと思えば――。君らの部隊は法隊だと今言ったばかりじゃないか? 私が育成している部隊は法隊ではなく、部隊だ。君の隊とはそれが違うのだよ」
「しかしながら、先日の戦いでは法隊に法陣を無効化するような兵器を実戦投入してきており、我々だけでは敗れていたかもしれません。それを救ったのは、まぎれもなくあのたが育てられた兵達です。それと――――」
レミリアはそれまでのなめらかな言葉から急に口を閉じ、言うか言わないか迷っているようであった。立ち止まった彼の視線が彼女に向けられていた。
それには副長であるランバートはもちろん、レミリアも緊張した面持ちでそのままの姿勢を保っている。
「それと――――、なんだね?」
「いえ、旧友にアドバイスされと事が明暗を分けたと――――」
「アドバイスね」
再び歩き出した彼は自分の椅子へと歩を進めるとゆっくりと腰を下ろした。しばらくレミリアとランバートの緊張した顔を見ていた。
「まぁ、そんなこと正直どうでもいいことなんだが、君らの部隊には私は期待をしている。以上だ」
それだけ言うと椅子から立ち上がり再び窓を眺め始めた。
残された二人は改めて後ろ姿の彼に敬礼をすると退室をした。ドアが閉まる音がやけに大きく聞こえたのか、閉まる瞬間レミリアは目を閉じていた。
隣ではランバートがうすら笑いを浮かべている。逆にむすっと顔でそれに応えている。
「なんでそんなことで笑うのさ?」
「大佐がそのような顔をされることがここ最近なかったと思いましてね」
「そうかな?」
「ええ、そうですよ。さっ、我々の陣地に戻りましょう」
上官より先に歩き出した彼の後を、顔をほぐしながら付いて行っている。
彼は最近の彼女の言動がおかしいことに誰よりも早くに気づき、気にしていた。そのために出た言葉がさっきのものであり、彼女に少し余裕が出てきた証でもある。
当然ながら、ラジスタにもヘファイスト進行の情報は入ってきている。そして、街中に避難命令とともにとある依頼文書もばらまかれていた。
街を守るための傭兵急募
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官理官 ダブジ・トランジット
もちろんその知らせは彼らのもとにも届いていた。