CASE3:不敵な笑みの男
相変わらずまとまりのない3人に、不敵な笑みの男が一発の銃弾が発射した。その男の目的とは?
毎度ながらしまりの無い文章ですが、お楽しみください。
次々と閉鎖されていく通路。
侵入する際に使った通路もだめになってしまい、3人は完全に行き場を失ってしまった。
「くそっ、やばすぎるぞこれは! さっきまでのアクセスコードも無効になってる!」
トーマはこぶしを閉じられた壁に叩きつけた。
「カイル魔法で何とかならないか? こうなんか壁ぐらいぶち破れるくらいのすごいのとかあるだろ?」
「僕はそんなすごい魔法は使えません。大体攻撃魔法なんてほとんど覚えてないですから僕には無理ですよ〜」
「最近覚えた新魔法剣あたしが道を作ってあげるよ」
続けざまに剣を抜きながらシェルスが応えた。
それを聞いたトーマが血相を変えてシェルスに近寄った。
「お前が魔法を使ったらエライことになる! しかも建物の中でなんてもっての他だ。だからやめろ」
「そうですよ、何か考えますから魔法だけはやめておきませんか」
シェルスが魔法を使うとどうなるか重々知っている2人は、他に出口がないか探し始めた。
「うるさいな〜! 他に方法が無いからあたしがやるって言ってるの!」
そう吐き捨てると剣を鞘から抜くと構えた。
2人が不安感が辺りの空気に流れている。
しかし、それを断ち切るように1発の銃声が通路に響いた。
弾丸はシェルスの髪を掠めた。
3人が銃声のした方を向くと、そこには拳銃を構えた男の姿があった。
上下白のスーツに藍色と薄い紫のストライプネクタイ。肩までありそうな金色の髪は後ろでひとつに束ねらていた。
左手で銃を構えながら、右手で眼鏡を整えている。
それを見たトーマは胸元から銃を取り出そうとしたが、さらに1発の銃声が響いた。
「やめておいたほうが、よろしいですよ?」
不敵な笑みを浮かべながら男はそう言うと、右手で合図した。
すると先ほどまでの警報音も消え、男の後ろから5人の兵士が現れた。
兵士達は自動小銃を3人に向けた。
その光景を目にして思わず息を呑んだ3人。
それ見た男がおもむろに口を開いた。
「あ、まだ殺りませんからご安心を。2つ3つほどお聞きしたいことがあるのでね」
その言葉聞いて、ちょっとした安堵感が三人を包んだ。
この男の癖なのか、わざとなのか。確かめたくなるほど嫌な笑みだ。
兵士達の一歩前へ出ると質問を始めた。
「あなた方はどこかの企業の人間ですか? それとも雇われた方ですか?」
男は3人の顔を見回した。
すると、トーマが嫌味混じりな言い方でその質問に答えた。
「雇われた方だよ」
「ということはフリーランサー所属の方々なのですね? あそこには我が社からも度々依頼を出せていただいております」
「俺らもあんたらへファイストの仕事も受けた事あるんだぜ。今度依頼出すのなら俺らを指名しな! 安くしといてやるよ」
トーマはかるく鼻で笑いながら男に言った。
「それは光栄ですね。依頼を直接引き受けた方とお会いできるなんて思いもしませんでしたよ」
男も相変わらずの笑みで3人を見ている。
「ところで、今回の依頼主がどなたかを教えていただけませんでしょうか? あなた方にとってはどうでも良いことかと思いますが、私達にとってそのことは非常に重要なことなのですよ」
男は続けざまに3人に質問した。
「こんな世の中だよ? まさかタダで言うとでも?」
うつむき押し黙っていたシェルスのいきなりの大胆発言だった。
ニヤリと笑い余裕さを見せたが、やはりそこは16歳の女の子だ。不安さが顔からにじみ出ている。
「おや? 中々肝の据わったお嬢さんですね。それともこの状況が理解できないただの馬鹿ですか?」
あからさまに馬鹿にした顔でシェルスを見ながら男は言った。
「誰が馬鹿だ! このクソ笑み野郎!」
馬鹿と言われるのを一番嫌う彼女は、男の言葉の真意を考える前に口が出た。
何てこと言ってくれたんだと言わんばかりの目でシェルスを見るカイル。
トーマは顔をニヤつかせていた。
「クソ笑み野郎とは随分な物言いですね。先ほど申し上げた内の後者の方ですね。それに私にはラッツ・ヴァランティーノという名前がございます。以後お見知りおきを」
片足を一歩引き、軽くお辞儀しながらラッツは言った。
「何だ?! 名前を教えてくれるとはと中々良いやつだな!あたしはシェルスっていうの。よろしく!」
男は軽く会釈をして返事をした。
「お前はほんとに馬鹿だな」
呆れた様子でトーマが言った。
「また馬鹿って言った〜!! どうして馬鹿なのさ?!」
ポニーテールにしている赤い長髪がワサワサと忙しく動いた。
「いいか? 先ほど申し上げた内の後者ってことは、やっぱりあなたは馬鹿なんだなって言われたんだぞ?」
「・・・・・・へ?」
沈黙と理解しようとシェルスの思考回路の音だけがその場に流れた。
「もういい! とにかくお前は馬鹿だってことだよ」
これ以上説明しても無駄だと踏んだトーマは話すのやめた。
「みんなしてあたしを馬鹿バカって! とにかくラッツ! あんたも結局あたしのこと馬鹿って言ったな〜!」
さっき以上にポニーテールがワサワサと動かせながら言った。
「まーとにかくシェルスさんの言い分もありそうですね。言って頂ければこのまま逃がしてもよろしいですよ?」
ありえない様な好条件を提示してきた。
「え〜じゃ話す話す!」
真っ先に話に食いついたシェルス。
「ちょっと待て。お前は疑うことを知らんのか?!」
トーマの言葉に頷きながら賛同するカイルとは対称に、ムスッとしているシェルス。
「何か盗んだ物があるとしたら、それは没収されるのか?」
真剣な面持ちで質問するトーマ。
「いえ、結構ですよ。私がここにいるのは施設自体の防衛のためですから」
ラッツはあっさりそう答えた。
トーマは押し黙り、しばらくすると口を開いた。
「グローリー・オーダー(G・O)社からの依頼だ。これでいいだろ? さっさとその物騒なもんは下げて逃がしてくれよ」
上げていた手を下げながらトーマは言った。
「そうですね。それでは、この世界から逃がして差し上げましょう」
不敵な笑みでラッツはそう言うと、処刑の合図のように腕を振り下ろした。