CASE14:仕事準備と不安な雲行き
翌朝、4人はテッドとの約束通りにフリーランサーの一室にいた。
2つのソファーの間には長机が1つ。そおの上には紅茶のセットが置かれている。
しかし、当の本人はまだ来ていないようだ。
久しぶりの契約時同席のシェルスは胸を躍らせていたが、カイルはこのような場所には慣れないタイプらしい。肩を小さくしてちょこんとソファーに腰掛けている。
目を輝かせて部屋中を見渡す彼女の横で、トーマは机を指で叩きながら奴の到着を待っていた。
リンはそれを紅茶を飲みながらそれを観察している。
しばらくすると、木製の扉が開きテッドがやってきた。
申し訳なさそうにボサボサ髪の後頭部を掻きながらにだ。
「すまん、悪いちょっと色々あってな、遅れちゃった」
「っふー、何か問題でもあったのか?」
「問題っていうか、ほらっ、あれだよ! あの最近寝不足でさ――」
「単に寝坊じゃねーかよ!」
「まぁまぁそう怒るなよ、たかが30分遅れたぐらいじゃんかよ」
その返答に疑問視を向けるながら、部屋にはあの独特の『シーン』という音が流れた。キャピキャピと嬉しそうにしている者と、当の本人を除いては部屋にいる全員にそれが聞こえた。
「はぁ〜、もういい。話に入ってくれ」
トーマは反対側のソファーを指差しながら扉の前で突っ立っているテッドに言った。
悪びれることもなく、スタスタとソファーに歩むと気持ちよさそうに座った。
机の上には彼自前であるラップトップパソコンが置かれた。黙ったままパソコンを開くと起動音が聞こえる。滑らかなタイピング音が止むと、180度くるりと回し4人に画面を見せた。
「とりあえず、これを見てくれ。先日、依頼を請けた時に受け取ったディスクの中身だ。オーダー社とヘファイストCPの現在の統括区境なのがわかるよな? 山々に囲まれたヘファイストの豊富な資源をオーダー社の連中が、今の内に少しでもらっておこうという魂胆らしい」
「連中やる事が相変わらずだな。それで依頼内容は?」
キーを押すと新たな画面が表示された。上空から撮られた写真に赤いラインが引かれている。
「採掘兼、前線基地への物資運搬の護衛だ。目的地到着後は現地の責任者の指揮下に入ること、だとよ」
「指揮下に入るね。それで1人4万か。どおりでいい値はずだ」
「トーマ、おもしろそうだね」
聞いていたシェルスも話に入った。
その目は期待の念で輝いている。
「質問は?」
4人それぞれ違った表情でそれに応える。
「無かったら装備が整い次第、現地に向かって出発だ。11時にいつものヘリポートに集合な」
各自了解し、部屋を抜けていく。
ただ、テッドは胸元からタバコを出すと一服していた。宙に舞う白煙を見上げると微笑んでいた。
10時45分
時間前に全員が揃った。
空は雲行きが怪しく曇っている。
重々しい銃器を持つトーマとテッド。リンは軽い銃器を持つ程度。
魔法を使えるシェルスは剣とサポート用の手投げグレネードを持つだけ。カイルに至ってはいつも通りの軽装だ。
5人を乗せたヘリは気分の乗らない空を飛び目的地へと向かった。