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CASE1:真夜中の3人

こんにちわ、下手くそながらも書かせていただきました。

最後までお付き合いくだされば幸いです

この世界には、国もなければ秩序もない。

ただ「管理者」と呼ばれる者達が存在した。

管理者は20年前に突如現れ、当時存在した国家という組織をすべて滅ぼしたのである。

彼らの勝因は、今でこそ知られている魔法技術によるものだ。

管理者の魔法に対し、国家は火器による物理兵器で応戦したが、物理兵器での戦果などたかがしれていた。

彼らは絶対的な力をもっているのにも関わらず、世界を支配するそぶりを見せることもなかった。

世界は「管理者」により各地区ごとに分けられ、それを企業が国家に代わり統括していた。

企業は魔法技術の応用により、様々な製品及び兵器開発に着手。

5年前のある企業の戦争行為が火種となり、現在では企業間での戦争が絶えない状況である。



そんな情勢の中、静まり返った施設内を走る3人組の男女の姿があった。

1人は銃を持った黒い短髪の男。

1人は腰に剣を帯び、肩ほどまで伸ばした赤髪を束ねている女。

1人は青い髪をおろし、少しまだあどけなさが残る男の子。

それぞれ闇に溶け込める黒い服装をしている。

曲がり角に到達した3人は足を止め、鋼色の壁に向け男が銃を構えながら曲がり角の先を安全を慎重に確認している。


「トーマ! ほんとにこっちなんでしょうね?」

機嫌悪そうに女が男の背中に向かって文句を垂れている。

その声に反応するように、男は女の方へ振り返った。


「あぁ、そうだよ。シェルスお前さっきからそればっかしだな! 大体なぁ……」

その表情からはうんざりした様子が伺えられる。そのまま逆に女に食って掛かり始めた。

2人が口論を始めると、男の子はまたかと言わんばかりのため息をついている。

声をかけ仲裁に入ろうとするものの、2人は中々その隙を与えてくれない。チャンスがやってきたとしても彼には、2人の間に入る勇気は持ち合わせていなかった。

おろおろとするばかりで、結局どうすることも出来ず立ち尽くしている。


「リンさん、このルートで合ってますか?」

耳に装着してある無線機に手をあて男の子は聞いた。

その声は助けを求めているようにも聞こえる。


「一応合ってるよカイル。ただし、時間は押してるけどね」

無線から彼の声が聞こえた時点で、またかと思ったのだろうか。めんどくさそうな声が彼の耳に流れている。

いつも任務中に自分に連絡が入る事は、何かしらの問題が発生した時だけだ。それ以外は3人とは別の場所で、のほほんと帰りを待つだけなのである。

問題が発生した際も、トーマが連絡してくる事の方が多い。しかし、たまにカイルの場合がある。その理由わけとしては、シェルスとトーマの口論を沈静化してもらうためなのだ。


「あの〜そういうことなので、お二人ともよろしいでしょうか?」

2人に刺激を与えないようにと、恐るおそる話しかけている。

2人は男の子の方を見ると口論をやめると、眼をとばし合いそっぽを向いた。


「まったく、トーマもシェルスも毎回仲裁に入るカイルの身にもなりなさいよ。あたし達は 1つのチームなんだからさ、もっと仲良く助け合うように」

「わかったよ、はいはい」

「努力しまーす」

互いの顔を見ようともせずに、リンの言葉に仕方なしに空返事を返している


「ははは…」

その光景を間近で見ているカイルには、苦笑いをするしかない。

リンの言葉で一応は沈静化するものの、後の始末はカイルがしかなくてはならない。結局一番損な役回りは彼なのだ。


「良い? さっさとこの仕事終わらせて、あたしは帰って熱いシャワーを浴びたいの! それなのにあんた2人が毎度まいどケンカなんかしてくれるせいで無駄に時間が過ぎていくのよ!」

イラ立った口調である。その言葉に何か感じたのか3人は顔を見合わせ集まりだした。


「リンの野郎怒ってるやがるな」

「この前みたいになると面倒だしね」 

「そうですよ。また歩いて帰るなんてごめんですよ」

しゃがみこみ無線に声が入らないようにヒソヒソ話を始めた3人。

3人は互いに目を合わせ、うなずき合うと立ち上がり再び走り出した。

この流れになって一番いい顔をしているのは、カイルだ。ホッと一息漏らしながら、2人の後に付いている。


「リン、次は?」

「左の通路を進んで、その突き当りの部屋に目的の物があるわ」

「了解、次を左だな」

「まったく毎回初めからこれくらいマジメにやってくれるとねー。もうちょっと評価も上がって報酬も増えるんだけどな」

「その毎回のボヤキやめてくれ。実際に働いてるのは俺達のほうが多いんだぞ」

「うっ、それを言われると何も言い返せない……。とにかく早く終わらせてよ! それに無駄に無線を使うな!」

「わかったよ」

しばらくすると、3人は目的の部屋の前に着いた。重々しい左右に開いていくゲートのような扉だ。

扉を開けようとしたが、電子ロックが掛けられているようで開かない。


「これなら俺ので開けられるな」

扉を調べながらそう言うと、トーマは懐から電子ロックの解除ツールを取り出した。

ツールを電子ロックの配線と繋いでいる。しばらくするとツール画面七桁の数字が並び、ロックが解除され扉が開いた。

3人はひょっこり頭を出し、室内の安全を確かめている。

くすんだ鉄色をした四角の机が部屋の4隅にそれぞれ並び、机の上にはデスクトップ型パソコンと乱雑に資料の山が置かれていた。


「大丈夫そうね。さっさと盗る物とって出ましょう」

「そうですね、僕はこっちを探します。シェルスさんはそっちをお願いします」

「OK!任しといてよ。私、こういうのは得意だからさ」 

ニコっと笑いながら答えた。彼女は期待されると活き活きとした表情をする。


「お前はその割りに見落とし多いよな」

それに水をさすようにトーマが意地悪く言った。

普段から人をからかうのが大好きな性分のこの男。目的の部屋にたどり着いたこともあり、緊張をほぐすためのものなのかもしれない。


「う〜る〜さ〜い」

シェルスは恥ずかしそうに顔を赤らめながら言い返す。彼女は頑張り屋だが、その頑張りがいつも空回りしてしまうのだ。


「2人ともやめてくださいよ〜」

「わるいわるい」

ムスッとしたシェルスに対して、頭をかきながら平謝りするトーマ。

そんなトーマを横目で見ながら、再び探し始めたシェルス。

日中は人が働いているだろう。机の上に置いてあるマグカップには飲みかけのコーヒーが入っている。

あまり掃除はされていないであろう机上は、パソコンや資料の上にはほこりが積もっていた。


「ここの部屋の住人はよくこんな部屋にいられるよね。それにこのコーヒーなんて色の濃さなのよ」

「シェルスはコーヒー飲めなかったっけ?」

「私苦いの嫌い〜」

「シェルスさんは甘いの好きでしたよね?」

「そうそう、またイチゴスムージー作ってよ〜」

目を輝かせカイルを見つめるシェルス。


「またですか?! まーいいですけど、あんまり甘いもの飲み過ぎると虫歯になりますよ?」

「おこちゃまだな」

ボソッとトーマが言った。


「コラそこ、おこちゃま言うな〜!」

すかさずシェルスはトーマを指差し叫んだ。

その後突然シェルスの顔色が変わった。何かを見つけたのだろうか目を凝らしている。


「もしかして、あのファイルじゃない?」

2人がシェルスの指差す方向を見ると、積み重なった資料に混じって真新しくきれいなファイルがあった。

3人は近寄り、そのファイルの中身を確認している。


「これこれ、これですよ!」

「確かにこいつだな。やるじゃないかシェルス」

「へへーん、私だってやるときはやるんだよ」

憎たらしいほどに自慢気そうな顔である。


「リン、トーマだ。目的の物を発見、確保した。今から施設を出て収容地点へ移動する。到着予定は15分後だ」

「了解、そっちにヘリを回すわ」

「よろしくな」

「あ〜そうそう。時間通りに来なかったら、この前みたいに置いてくからそのつもりで。それじゃ以上」

「ええ! ちょっとそれだけはかん…べ…ん」

無線が切られ、トーマの声がむなしく室内に響いた。


「トーマさん今の本気ですかね?」

「多分、本気だろうな」

大きなため息の後、肩を落としてがっかりした様子のカイル。


「心配すんな。今日はかなりスムーズに進んでるから大丈夫だって」

トーマはカイルの肩をたたき元気付けている。


「さっきから気になってたんだけどさ、あれは何なの?」

シェルスは机の上のパソコンを指差した。それにしても今夜の彼女は、色々な物に気づくようである。


「ん? あれは何って時計だろ?」

「でも、時計なら数字が増えるのに逆に減ってますね。何かのタイマーかな?」

3人は不思議そうにそのディスプレイに近寄り覗き込んだ。

数字の左上に「Permission time」《許可時間》と書かれている。

さらに、3人がパソコンの前に着いたとき、その時間はカウントダウンの最高潮である3秒前を示していた。

それを見た三人は無言のまま慌てふためき、一斉に出口へ向かった。

しかし、時すでに遅く。3人が部屋を出ると同時に、先ほどまで暗く静かだった建物中に警報音が鳴り響いた。



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