俺の夢は…
大学3年生の後期が始まったころから、急にその気持ちは大きくなっていった。
それは、就活が始まるということ。
まわりは、もう研究を始めているらしく、俺だけが取り残されているような感じだ。
どこに進むのか。
漠然としてしか考えてなかった問題が、こうして現実となると、櫂を失った船頭のように、心細く感じる。
「それで、どうするかきまった?」
この質問されるたびに、ほっといて欲しいと感じるようになり出した。
俺一人で解決できないことは知っている。
中には、一人でできるやつもいるだろうが、そんなものは例外中の例外だ。
薬学や医学と言った道に進んだやつらは、もうそっちの方向に進むことを決めているのだろう。
だが、俺は法学部だ。
弁護士になるっていう道もあったが、司法試験を通るほど頭は良くない。
士業も通りそうになく、特に資格も持っていない。
誇れそうなのと言えば、幼稚園から今に至るまで、一回も休んだことがないということだ。
他には誰とでも仲良くなれるというのもあるが、こいつらでどうやって就職戦争を戦えというか。
俺には皆目検討がつかなかった。
「…なにもしたくないというのなら、それも一つの道じゃないかな」
そう言ったのは、俺が学食で話し込んでいた時の友人だ。
「そう思うか」
「まあな。ただ、きっと何かをしたいと言うことを考えるようになるさ。それが人生だからな」
「人生か……」
俺は、その友人の言葉を繰り返した。
なにもしないのも一つの道。
だが、それは最後の手段だ、それは俺にもはっきりと分かっていた。
「何がしたいか…か」
皆目見当もつかない。
それどころか、この五里霧中どころか百里霧中の現在。
何があってもはずれを引く可能性の方が高い。
だから、なにをしても無駄だと考えるようになったのだ。
「…何がしたいのか、全く分からんな」
俺自身が、もう分からない。
ゆっくりと中から俺の身体が消えていく、そんな感じがした。
「……これか」
俺がネットで探していたことは、マイナス方向に特化していた。
自殺の仕方、無理心中、他殺の話なのだ。
だが、そのなかで一つの答えを見つけた。
「まあ、いっちょやってみるか」
やらなくても結果が変わらないのなら、やってみるのが俺の信条だ。
それに賭けてみることにした。
1か月、2か月と書き続けていくにつれて、何も変化はない。
ただ、少しずつ俺の心が変わった気がする。
「何もないよりか、何か変化がある方がいいからな」
友人に学食で俺は語った。
「なら、その道を進むしかないな。時間は戻らないんだ。先を見て生きていくしかないからな」
「おうさ」
それが、俺が出した、俺なりの答えだ。