少し不機嫌な話
―とある学校の放課後―
「…はぁ…」
二階の南棟と中央棟を結ぶ渡り廊下で、一人運動場を眺める女子生徒がいた
音楽プレイヤーを片手に、音量調節をしていて、その意識は外で活動している野球部などには向いていない
「…15分…ね…」
携帯をチラっと見て、呟く
それは彼女が部室から逃げ出した時間
最近、部室の居心地がとても悪く、こうやって渡り廊下へ逃げ出すことが増えたのだ
そのとき、「トイレ」とそっけなく部員に投げかけて
大会も終わり、次の大会に向けての部員のモチベーションも高まっているが、彼女はソレが嫌だった
そう、大会終わり前後だけの、ある種の熱病のようなその状況を
(…もってひと月…かな?)
もう一度ため息をついて、運動場から目線を下に降ろす
やる気があるのは大歓迎だし、新しい作品を作るのにも協力したい
しかし…いつから不快に思うようになったのだろう…
いつしか曲は、次の曲に変わっていた
…部室に居ることが不快なのか?そもそも実はやる気になることが不快なのか?
考えれば考えるほど抜け出せない、そう迷路の真ん中に居る感覚
我ながらなんともありきたりで陳腐な例えだと思いながら、少しだけ曲を口ずさむ
曲は、3曲目
このままだと、彼女は自分の最も恐れている状態になるのではと考える
彼女が恐れているのは…自分の仲間が発言するだけでイラつくのではないかということ
事実それに近い状態には陥っていた
この状態も、実際は自分がただ単に被害者ぶって、自分を神聖化しただけの
それこそもっとも不快に思われるべきものだと、どこかわかっていた
わかっていて…変えられない自分が嫌いだった
このまま頭から落ちてしまおうか…?
その最近の若者にありがちな思考を振り払って、携帯をチラっと見る
先ほど時計を見てから16分経過している、そろそろ戻らなければ怪しまれるだろう
…といっても部員には私が逃げていることは感づかれているだろうが…
「…仕方ない…」
仕事から逃げ居ていても仕方ない…彼女はそう思い、その場を名残惜しそうにゆっくり歩いていった