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最強魔女とポンコツ主人公

 「カルファ様、魔狩りの邪魔はしないと約束したはずです」

 いつものおてんばな明るい感じではなく落ち着いたメイドらしい言葉遣いだった。


 「私は中立ってだけだ。戦闘能力に差があるのなら援護するのくらいは許してほしいねえ」

 「やっぱりカルファ様もしょせんは魔女。魔女の仲間をしたくなるのは仕方のないことかもしれませんね」

 

 その言葉の直後に一気に部屋中から色が失われた。白黒の物置でどこか体も重苦しい。

 状況の理解ができず2人の顔を交互に見ていた時、アンゲルのチェンソーから光が消え去った。


 「魔禁結界ですか。わたしが魔法だけでここら一帯の見張りを任せられてると思ったら大間違いですよ」

 一飛びで目の前まで現れたかと思えば腹を思い切り蹴られた。

 呼吸ができない。内臓が痛い。涙を垂れ流しながら倒れもがくのがやっとだった。


 「見ての通り今回の魔法使いは弱いんだよ。もう私にまかせてくれない?」

 「……弱いからって見殺しにする理由はならないんだよねえ!!」

 そう言うが早いか牽制にアンゲルに一発右拳を打ち込み、よろめいた隙に俺を回収した。

 「どうしてカルファ様はそんなにその魔法使いに固執するんですか……」

 「理由なんか必要かい? 目の前で殺されようとしてる人を助けたい。こっちは魔狩りとちがって人間、なのでねえ」

 「建前は聞き飽きました。正直な答えを聞きたかったのですが……もうわたくしの出る幕ではないようです。失礼します」

 ペコっとお辞儀してドアから普通に出ていった。

 …………どういうことなんだ???


 「これはヒメヤかねえ…………」

 「正解です」


 聞き慣れた真面目そうな低めの声。ヒメヤだった。


 「魔禁結界内でもお構いなしかい」

 「禁忌衆の参なので。カルファは私たちを裏切るという形で間違いないですか?」

 少し間があった。カルファの額に汗がにじんでいる。

 「……そうだねえ。間違いないよ」

 「それでは契約を破棄しますね」

 「ああ、わかったよ」


 カルファに背負われユウマは窓から飛び出す。宮殿なのでビルの5.6階くらいの高さはあったが、身体が外に出た瞬間に全く別の風景に変わっており、落下することはなかった。



 ゆっくりと目を開ける。どうやら少しの間眠っていたみたいだ。

 温かい日の光を大の字で全身で受け止めていた。甘い花の匂いが鼻をくすぐる。

 周りには色とりどりの花が咲き乱れていた。


 ……何この天国みたいな空間。俺って死んだの?

 若干焦りながらもとりあえず上半身だけ起こす。左どなりではカルファも大の字で寝ていた。

 状況に整理が追いつかないがとりあえず起こす。


 「カルファ、起きろ」

 身体をゆさゆさ揺らす。にしても身長がデカい。

 「――ん…………んーー!」

 目をつむったままあくびと伸びをした。

 「おはよう。ここは……どこなんだい?」

 「ソレを俺が聞きたかったんだけどな」

 「え? あーそっかい。誓約を破棄されて城から追い出されたんだったねえ」

 「そうそう。なんかそんな話はしてたの覚えてる。ほかにも色々聞きたいことあるんだけど、魔狩りとか」

 「あーそうだねえ。じゃあ一個づつゆっくり話すとするかねえ」



 それから花畑を歩いて街に着くまで色々な話を聞いた。

 魔法使いになるには生まれつきに才能がないとできない。だが昔から魔法による軽犯罪が多すぎて嫌われてはいた。

 だがある時一人の魔法使いが街を一つ潰した。焼き尽くして可能な限りに残虐な行為を尽くした。


 その時潰された街の生き残りが『魔狩り』となって出る才能の目を開花する前に潰しているようだ。

 だがカルファは強すぎる上にあまり敵意を見せなかったし、家がなかったので害を与えないことを条件にヒメヤの宮殿に住まわせてもらっていたようだ。

 それが本人達の言っていた契約の正体らしかった。



 「まあそんなところなんだけど……困ったねえ」

 「そうだなー。住むところもなくなっちまったわけだし」

 開けた草原をぽつぽつ歩いてた時だった。


 「あ、ちょいと待っててねえ」

 それだけ言うと信じられない速度で走り出した。足にも魔法がかかってんのか?

 そうして道を走ってた馬車の前に立った。

 そこからのことは一瞬過ぎてよくわからなかったが、気づいたら乗っていた人達が外に倒れてカルファが馬車に乗ってこっちに向かっていた。


 「これで食料と寝床の獲得だねえ」

 「…………お前みたいなののせいで魔法使いは嫌われてるんじゃねえの」


 魔狩りの気持ちに少しだけ共感できてしまった。



 カルファは馬車も運転できるらしい。

 なので乗せてもらい馬車がもともと向かっていた場所の方角に向かっていたら一つの街が見えてきた。


 「街だ! 案外近くにあったな」

 「うーーん……あの街は……大丈夫かねえ」

 「え? どうしてだ?」

 「まあ、入ってみればわかるよ」


 大きな門とかはなく、ちんまりとした街だった。騎士の格好をした男に手招きされたのでそちらに向かう。


 「どういう要件でしょうか」

 「お荷物をお届けにきましたよ」

 そう言って中に積んであったカルファの顔ほどのサイズの包物を渡す。

 「ああ、ありがとうございます。ここで馬車は預かれますのでゆっくりしていって下さい」


 想像よりもあっさり入ることができた。


 中は露店がそこら中にあってたくさんの人で賑わっている。見ているだけでもいい雰囲気だった。


 「これぞ当たりの街だろ! カルファがなにを不安――」

 口を押さえつけられた。

 「街では気安く私の名前を呼ぶんじゃないよ」

 見たことないくらい目を見開いており、本気さが伝わってきた。

 「そ、そんな有名人なのか……あ!」


 植え込みが並んでいたのだが一つ枯れかかってる木があった。

 新しい力を試してみたかったのでちょうどいい。

 そこら辺に落ちてた木の枝を拾った。


 「グリーン!!」

 閑散としていた茶色の葉が次々抜け落ち、すぐに緑の葉っぱを出してぐんぐん大きくなった。

 すげーー! と興奮したのもつかの間頭を叩かれ冷静になった。


 「何やってんだい!!」

 「はえ?? なんd――」


 目の前に見ず知らずの女。ちらっと目が合った瞬間に後ろから稲妻が落ちたみたいな感覚を味わった直後、痛みを感じながら意識が遠のく。


 そーいえば…………魔法打っちゃ……ダメなんだった……

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