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人生2週目とバカな出会い

 バットで後頭部を殴られるみたいな衝撃の直後、目がさめる。まず飛び込んできたのは狭く見える青い空だった。薄暗く左右には家があり俺の視界を断ち切っている。

 状況がうまく飲み込めないまま拳を握ったり開いたりする。感覚は薄いがちゃんと俺の手のようだ。とりあえず座って頭の中を整理する。

 交通事故で死んで、変な神みたいのと会って……なんかあったような……そして今に至るわけか。

 仕事柄世界観をぶち壊すきったねえ作業着のままここにいるわけだが、ここは間違いなく想像するような異世界だ。実際来てみると右も左もわからないから、途方に暮れてしまった。


 「おい! お前! 名を名乗れ!」

 敵意に満ちた男が2人。騎士らしい鎧を着ている


 「米山よねやま 雄也ゆうやって言いまーす」

 とりあえず言われたとりにするしかないため手を挙げる。本当にかっこいい名前ではないなと自分でも思っているので普通だなとかいちいち思わないでほしい。


 (なんか意外と素直だな)

 (敵意……ない……?)

 「全然敵意なんかないですよー」


 驚くほど聞こえる声でコソコソ話をし始めたので、勝手に参加してみる。

 「勝手に我々の会話に参加するんじゃない!」

 「だって丸聞こえなんですもん」

 「腹立つやつだな。ちなみにその服はなんだ? この国のものとは思えないのだが」

 「あーえーっと……自家製なんすよ。暇つぶしで作ってたらうまくできたんできてるだけです」

 説明も面倒なので自家製にしてみた。

 「それ自家製なのか? 服屋かなんか営んでいるのか?」

 「あーまあそのへんで適当にやらせてもらってます」

 「この辺りの服屋は一つしか知らんが、お前は見たことないぞ? そもそもなぜこんな路地にいるんだ?」


 こうやって嘘ってバレるんだなと思った。


 「すみません嘘です。異国の人です」

 「嘘……? 殺しとくのが……利口……」

 「ああそうだな。やっちまうか」


 それから剣を持ち直し臨戦体制にはいる騎士2人。


 「なんでなんで。ちょっと待ってくださいよ」


 先程までは柔らかな表情だったが、構えると騎士らしい凛とした表情に変わり一歩、また一歩と近づいてくる。流石に危機感を覚え立ち上がり逃げられる準備をする。

 だがその動きが相手の意識を逆撫でしてしまったようで一気に距離を縮めてきた。

 とりあえず全速力で逃げる。現場仕事なので体力には自信があった。

 だがそこは一応王国の騎士。ぐんぐん近づいてくる。

 ワンチャンにかけて振り返る。


 「すみません本当は自分もぜんぜn__」


 ドンッ。


 自分の中に響くタックルされる音。想像以上のちから強さに立っていられなくなり膝をつきそのまま横向きに倒れる。人ってこーやって死ぬのかな……


 ※


 本日2回目の知らない天井で目を覚ます。

 そこはとにかく黒に染まっていて何も言えない空間だった。

 

 (あんまりさ早く死なれても困るんだよね)


 脳に直接問いかけてくるなんとも言い難い甲高い声だった。


 (想像よりも雑魚だってわかったからさ、とにかく顔だけ上げ続けてみてくれない?)

 (そうすればきっと片目だけで済むはずだからさ!)


 片目……?? よくわからない 



 ※




 意識が戻るとると再び騎士どもに剣で刺されていた。言われた通り顔をなんとかあげてみることにする。残された力を振り絞って顔を前に向けた。

 その瞬間に目の前に銀色が広がる。直後ズボッと音が鳴りそうなほど剣先が俺の目に入ってきた。

 痛み、それより強い恐怖。悲鳴すらも押し込まれ残るのは絶望だった。


 「ば、ばか! 騎士が一般人を殺すんじゃない!」

 「すまない……ミス……」

 「こうなったら逃げるぞ! ほら早く!」


 騎士どもはすくっと立ち上がって蜘蛛の子を散らすように逃げた。


 (片目で済むってそう言うことかよ……)


 落ち着いた頃に痛みが押し寄せてきて必死に目を抑える。燃えるような熱さが逃げ場なく顔中を焦がすようだった。

 「そこのあなた。 その服はなんですか?」

 なんだか聞き覚えのあるセリフだったが、次は大人っぽい女性の声だった。


 「今は……服なんかよりも注目しほしいことがあるんだが……」

 わざとらしく片目を押さえる。

 「へーこんなもの本当に初めて見ました。すごく興味があるので一旦私の家に来ていただけませんか?」


 驚くほどむしされた。片目から出血してる人間をこんなにむしすることあるのか?


 「ちょうど帰るところがなかったから助かるよ。俺は米田裕也、あんたは?」

 「申し遅れました。私はそこで服屋を営んでおります、ハナフク ヒメヤというものです」


 とてもただの服屋とは思えないほどおしとやかな印象だが、たしかにオシャレな衣装に身を包んでおり長い黒髪は余裕の象徴とも見れる。

 ぱっと見では王女様とでも思ってしまうほどだった。


 そういえばさっき騎士2人がこのあたりでは服屋は一つしか見たことないって言ってたな。もしかしてその服屋の女将なのか?

 とりあずすぐそこらしいので案内されるままについていってみることにした。


 「ここです。私の服屋は」


 そうって指を刺されたのはただの壁だった。


 「ここってなんだよ? ただの壁じゃ__」

 上を見上げて絶句した。

 絵本のお城を想像するのが1番手っ取り早いだろう。まさに王宮というのが相応しい建物の入り口にちょこんと後ってつけたようなドアがついていた。


 「なんだこれ?! 城じゃねえか」

 「いいえ。服屋です」


 なんかプライドとかあんのかな。よくわかんねえけどキッパリと言われてしまったので何も言い返せなかった。

 とりあえずドアから入ってみる。石作りの建物からは想像できないほどの温かみのある木造の内装だった。

 ただとにかく広くて世界中の服がありそうな勢いだった。多くの人で賑わっている。


 「まあとりあえず、早速あなたの服の研究をしたくてならないのです。さあ私の部屋に行きましょう」


 手をグイグイとひかれて店の奥に連れてかれる。関係者しか入れなさそうなドアを通り階段を登ると部屋についた。


 「じゃあ、脱いでください」

 「その前に。あとでいくらでも服くらい見せてやるから目を少しでも治療してくれないか?」

 「え……まあ! 気づきませんでした! ひどい怪我を……少々お待ちください」


 そういって棚から出てきたのは真っ黒な眼帯だった。


 「これで大丈夫ですね。じゃあ早く服を見せてください」

 「こんなんで大丈夫なのか?」

 「大丈夫です。はやく見せてください」

 あんまり根拠はなさそうだ。 

 「なんで脱がなキャいけないんだ?」

 「ですから、来たままじゃ繊維や縫い方などわからないじゃないですか」

 「だからと言っていきなり脱ぐのはやばいだろ! こっちの事情も考えろ。あっちで着替えてくるからちょっと待っとけ」

 「あっちというのはどこ__」



 部屋を出てバタンとドアを閉める。

 クソでかい宮殿だったので一個くらい空き部屋があるだろうと思い横の部屋のドアをちょっと開けてみる。

薄暗く若干散らかっていたが誰もいなかった。


 ここで着替えようと思い作業着を脱いで思い出す。そう言えば冬場だから下にポロシャツと長ズボンを履いてきたのだった。

 これなら姫屋の前でも着替えられたなあと思いながらもなんとなく部屋を見渡す。

 少し嫌な予感がするシルエットが見えた。なんの気はないが手に取ってみる。


 ……これは……ぶラジャーとかいうやつなのではないだろうか。

 花柄だった。


 部屋の扉が開くつがいの音が聞こえた。

 入ってくるメイドと目が合う。

 時間が止まったようにお互い固まって凝視していた。


 「私のにな、何してんだよ!! しね! 変態!!」

 目にも止まらぬ速さで俺からブラジャーを奪い取る。だが俺も違和感を覚えていた。

 「なんでメイド服でブラジャーを外しているんだ?」


 顔を真っ赤にして黙ってしまった。


 「もしかして、メイドってノーブラなn__」


 頭をぶん殴られた。


 「メイド服ようの下着があるんだよ!! 殺されたくなかったらさっさと出てけ!!」


 作業着を持ったままつまみ出される。

 そらそうかと思いながら、痛む頭を押ヒメヤの部屋に戻った。


 「ありがとうございます。服を__ってえ?? なんでですかその服は!」

 次はポロシャツに興味を示し始めたようだった。


 「早く、早く脱いで見せてください!」


 もう一回さっきの部屋で着替えようかとも思ったがさすがにやめておいた。

 逆側の扉の方をみてみる。ホコリ臭い、しばらく使われていない物置のようだった。

 ここなら多分大丈夫だろう。そう思いポロシャツを脱いだ時だった。


 「ええ? なーにしてんの??」


 心臓が止まるかと思うほど驚き振り向く。

 雑多に積み上げられた棚の一つに髪の長い魔女のような風貌の女が一人入っていた。

 この宮殿は一体どうなっているんだ……

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