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築35年のアパート

作者: ゑいすけ
掲載日:2025/12/31

ほんのりホラーです。

築35年のアパートだが、内廊下で雨風が凌げて、バストイレ別、洗濯機も屋内に置ける。日当たりもいい。

ワンルームだが家賃は破格で、会社も徒歩圏内。俺は即決した。


しかも、管理会社はハウスクリーニング会社らしく、共用部の清掃当番はなし。

さらに廊下の照明はセンサー式らしく、誰かが通ると自動で点灯する。


いい物件だと思っていた。

問題があるとすれば、廊下に面した台所の窓だった。


荒い磨りガラス越しに、深夜や早朝、外廊下がやけに明るくなる。

構造上、光を遮るには何か貼るしかなく、廊下の照明で目が覚めることがあった。


パッ。


時計を見ると、2時17分。

誰か夜勤の住人でもいるのだろう。

朝6時起きの身には辛いが、センサーなら仕方ない。

次の休みにでも、カーテン代わりのものを探そうと思っていた。


そんなある日、共用の掲示板に一枚の張り紙が出た。


「住民のみなさまへ

このアパートの廊下の照明は、センサーライト式・時限式ではありません

利用後は、廊下にある照明スイッチを切ってください」


改めて見ると、各戸のドアのインターフォンボタンの反対、蝶番の側に小さなスイッチがある。

なるほど、手動だったのか。


誰かが気を利かせて、俺の帰宅に合わせて点けてくれていたのかもしれない。

そう思ったところで、気付いた。


このスイッチは、一度扉を全開にして廊下に出なければ、押せない位置にある。

廊下に面した窓からも、手が届かない。


俺に気付かれず、押せる人間はいない。


つぎの日、なんとなく帰りたくなくて、遅くまで飲んだ。

酔って歩いて帰ると、通りから見える内廊下は、誰もいないのに明るかった。


誰かが消し忘れたんだ。

そう思うと、気が抜けた。


部屋に入り、靴を脱いでから、

廊下の電気を消していないことに気付く。


ドアノブに手を伸ばした瞬間。


パチン。


すぐ近くで、スイッチを切る音がして、廊下が暗くなった。


俺は酔ったふりをして台所の電気を点け、テレビを点け、

ベッドに潜り込んで頭から布団を被った。


あの部屋には、一ヶ月と少ししか住めなかった。

作者の実体験をもとに書かれています。

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