そんなはずでは
フェルナンド王国のとある侯爵家一室。
一人の少女が産まれた。
名をクレスタ。
これは悪役令嬢の名前であって真のヒロインの名前では断じてない。
そう重要なことのため2度言うが、ヒロインではないのだ。
「クレスタお嬢様。それは危険なのでは?」
そんな少女は現在6歳を迎える。
そして今日は大事な日と思ってるのは大人だけ。
私はいつでも逃げ出せるように木の上で相手が来るのを待ち構えているところだ。
「マーリー大丈夫だよ。落ちることはないって」
ここで一つだけ重要なことを告げておく。
私は毎日木登りしている訳じゃない。
今日のために、魔法で登ったに過ぎない。
私の得意魔法は風魔法。
まぁ血筋のおかげで風魔法が簡単に使えちゃうのだ。
自慢じゃないが、高位魔法まで使える。
という話はまた今度。
「お嬢様ー。相手のかたそろそろ到着されますからーそんな木の上にいらっしゃったらお母様に叱られますよ」
真下の木より侍女が声をかける。
「うっ」
それを言われると母からの説教の方が面倒かもしれないと考える。
とりあえず降りようとした瞬間手を滑らせてしまった。
やっぱりこういうときは、お決まりだなーと心の中で呟きながら風魔法の準備をしていると、地面とご対面する前に私の身体はフワリと浮いた。
「おとうさまー」
私の身体を風魔法で浮かせ、自分の手元まで運ばせると風魔法を解く。
「我が家の姫は、今日はご機嫌ナナメなのかな?こんなことするなんて」
「うぅごめんなさい」
「許さないよ?しばらくお父様の抱かれてるなら許してあげなくもないけど」
「じゃぎゅーっするから」
「許そう」
お父様は私に甘い。いや私の家族全員私に甘いのだ。まぁぶっちゃけ悪いことをしない限りは温かく見守ってくれる優しい人達だ。
だけど、今日の御披露目からは許してくれるつもりはないらしい。
お父様の足は着実に家の中へ向かっている。
私つきの侍女ことマーリーとお父様の護衛のジョーシンは、安堵した顔で私を見ていた。
せっかくの逃げ出すチャンスが台無しだ。
逃げ場のない父の腕の中で安心感とともに、心からため息が溢れた。
我が家の姫様は、まだまだお父様の腕の中が好きだよね?
うん。だからまだ家の中に入りたくないの
うん?
だからね?
うん?今のを内緒にしてあげるから、ちゃんと大人しくしようね?
あー今日の逃亡はやっぱり失敗だった。
とりあえず一章
加筆修正