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第6話

「本当に助かった、ありがとう」

「あぁ? 別に大したことしてねぇよ」


赤い布を巻いた兵士が俺に礼を言う。

青い布を付けた兵士達を縛り上げ、広場の中央に集めて拘束した。


「お前達はこれからどうする?」

「我々は城に突入し、現国王様の捜索と救助を。原理主義派の思い通りにはさせない!」

「そうか、俺達はまだ余力が残っている。他に援軍が必要な場所はありそうか?」

「ありがたい! では城下の方を見てきて欲しい。そこまで兵の数も多くないから、大丈夫だとは思うが・・・それにフラン様をこんな危険な場所には置いておけないからな」


そう言いながら兵士は膝を折り、フランの前に跪いた。


「我々が必ず国を取り戻してみせます。どうかご無事で」

「うん! 兵士さんも気を付けてね」

「ありがたきお言葉、感謝致します!」


兵士は敬礼をフランに捧げ、小走りで隊に加わって城の中に消えていった。


「ここからは歩きで行くぞ」

「分かったぞお前様、フランの世話はしっかりしてくれよな」

「もちろんだ、逸れるなよ」

「は、はい!」


フランを真ん中に、俺を後衛。サクラを前衛に広場から離れる。路地を抜け大通りを横切ると、兵士達の死体が転がっていた。その兵士達の腕には赤い布が巻かれていた。


「兵士の姿が見えないな・・・」

「いや、さっきから着けられているぞお前様」

「数は?」

「六人・・・いや、構えろお前様!」


サクラが爪を構え、俺の前に飛び出る。

大通りの向こう側から馬に乗った騎士達が、大挙してやって来る。その腕には皆赤い布が巻かれている。


「サクラ、味方だ!」

「違う! その後ろだ!」


馬に乗った騎士達。その背後に続く騎兵達の腕には青い布が巻かれているのが見えた。

よく見ると、赤い布を付けた兵士達の顔には絶望と苦痛の表情が見て取れた。


「そこの者!」


赤い布を付けた兵士が、俺達の側に馬を止める。他の兵士達は俺達に目もくれずに、一目散に大通りを駆け抜ける。


「皆の者立ち止まるな、私に気にせず撤退せよ! お前達も早く逃げろ、今なら路地裏を抜ければ渦中を抜けられる」

「お前はどうするんだ?」

「私は殿しんがりだ。近衛騎士団の名の元に、最後まで務めを果たしてみせる」

「近衛騎士と言うと裏切った・・・」

「全員が全員そうという訳では無い! 私の命は現王の為に・・・ぐふっ」


兵士は吐血し、鎧の隙間から血が吹き出る。よく見ると、腹に折れた槍が深々と突き刺さっていた。

兵士はふらつきながらも剣を抜き、迫る騎兵達に剣を向ける。


「サクラ、やれそうか?」

「一人だと厳しいな。殺していいなら簡単だが」

「ダメだ、俺も手伝うから人殺しは無しだ」

「あいよ、お前様」

「フランはそこの路地に隠れていてくれ」

「は、はい! どうかご無事で!」


フランはすぐ側の路地に隠れ、俺は持って来た剣を構える。

ボロボロの兵士はチラリと俺達を見ると、剣を構え直した。


「初撃はいただくぞ!」


サクラが飛び出し、先頭を走る馬の首を落とす。続いてその後ろに続く馬の足を次々と切り刻んでいく。先頭集団が倒れると、ドミノ倒しの要領で騎兵達の足が止まる。


「邪魔をするな!」

「迂回しろ!」


馬から降りた兵士達が剣を抜いて走り寄ってくる。サクラが次々と相手をするが、数が多いせいで数人が抜けてくる。


「助太刀感謝する、名を聞こう」

「ジハード・アーサー! お前は?」

「近衛騎士団第十三部隊、リリーナ・グラマンド!」


リリーナは鮮やかな剣捌きで向かってくる兵士達を切り捨てる。傷を負っているのに、そう見えない程の活躍だ。

俺も負けじと剣を振るい、向かってくる兵士達を捌く。


「くっ!」

「こいつだけ弱いぞ! 狙え!」

「ふざけやがって!」


誰かの号令で一斉に俺に注意が向く。

剣、槍、弓。ありとあらゆる凶器が俺の命を狙う。


「一番槍はいただきだ!」

「甘い!」


槍を持った兵士が足元を狙って槍を突く。俺は槍を踏みつけ動きを封じ、兵士の手から槍を叩き切る。

飛んで来た弓を剣で弾き飛ばすが、その隙に剣を持った兵士が俺の背後に回る。


「いただいた!」

「伏せろお前様!」


サクラの言葉通りに伏せると、剣を持った兵士の両腕が吹き飛んだ。

威嚇する様にサクラが牙を剥き出しにし、周囲の兵士達に威嚇する。


「い、今だ! 馬を抜けさせろ!」


馬の死体に兵士達が通り道を無理やり開け、馬が次々と通り抜ける。


「お前様、我はお前様が第一。命に危機迫らばもちろんお前様を優先するぞ」

「・・・すまない」


サクラは俺の肩を軽く叩き、兵士達を次々と倒していく。

俺も剣を持ち兵士達に向かっていくが、兵士達は俺よりも不規則に動き回るサクラに注意が向いている。俺でも兵士達を無力化するのに苦労はしなかった。


「クソッ! だいぶ逃したな・・・」

「まぁ上出来だろう、お疲れ様お前様」

「あぁ・・・おい、リリーナも大丈夫、かっ!」


リリーナの方を振り向くと、そこには血塗れで剣を支えにしたリリーナが呆然と立ち尽くしていた。


「何故、逃がした」

「数が多かった。最前は尽くしたが」

「何故不殺などふざけたマネをしている」

「それは・・・」

「・・・だが、助かった。礼を言う」


リリーナはふらつきながら、王宮の方に向かおうとする。俺は咄嗟に腕を貸し、リリーナを支える。


「どこに行くんだ」

「王を・・・探しに」

「言いにくいが、お前達は敗走の真っ最中だったんだろ。じゃあ残ってるのは敵だけだ」

「黙れ、負けていない! それでも戦うのが騎士の務めだ!」


俺の腕を振り払い、リリーナは王宮に向かって歩みを進める。路地裏に隠れていたフランが出て来て、俺の袖を引っ張る。


「あの人を、一人で行かせるんですか」

「そろそろ潮時だと思うぞお前様。これ以上の深入りは危険だ」

「・・・いいや、確かめたい事がある。アイツに着いていくぞ」


俺がそう言うと、フランは覚悟を決めた様な顔で俺を見上げた。だが、俺の肩を引っ張ったのはサクラだった。


「言い難いが、今のお前様は戦力としては乏しい。逃げる方が得策だ」

「かと言って死にに行こうとしている奴を放っておきたくはない。それにさっきも言ったろ、確かめたい事があるってな」

「・・・はぁ、とんだわがままだな。そういう所嫌いじゃないぞ」


方針の固まった俺達は、リリーナの後を追って燃え盛る王宮に突入した。

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