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SS集03 鏡花は見た!

「じゃあ、ちょっと篠原(しのはら)さんの所に行って来るね」


『ああ、また後でな鏡花(きょうか)


「うん。それじゃあ」


 (まこと)との通話を終了して家を出る。篠原さんの家はすぐ隣だから、1分も掛からず到着する。

 大学3年生になった私は、就活等で忙しい事が多く最近はあまり篠原さんと会えていなかった。

 美桜(みお)ちゃんも同様なので、篠原さんのお世話を2人共出来ていない。でも少し前に、新しい家事代行を雇ったと言っていたので室内はそこまで酷くないと思う。

 今回呼ばれたのはあまりにも会わなさ過ぎて、寂しくなったらしく雑談配信に誘われたから。

 たまたま今日は暇だったので、ちょっとした気晴らしとして参加しても良いかなと思って誘いを受けた。


「……あれ? 居る筈なんだけどな?」


 インターホンを押しても全く反応がない。もしかして、お酒に酔って寝てしまったのだろうか?

 篠原さんは朝とか昼とか関係なくお酒を飲むし、飲酒雑談なんて配信も良くやっている。いつだったか、飲酒耐久配信なんて意味不明な事もやっていた。

 丸々一晩飲み続けたらしく、SNSで話題になったりもしていた。そんな篠原さんだから、酔い潰れて寝ている可能性もある。

 呼んでおいてそれもどうかと思うけど、隣の部屋だし迷惑と言う程ではない。ただ念の為に、生きているかどうかは確認しておきたい。


「あ、鍵開いてる。これは寝てるなぁ」


 玄関の鍵が開いているので、居るのは間違いない。色々とアレな所はある人だけど、鍵も掛けずに出掛ける人ではない。

 玄関や廊下にゴミはなく、新しい家事代行の人が定期的に掃除しているのは間違いないみたい。

 入り口からこんなに綺麗な篠原さんの部屋なんて、早々見られるものじゃない。謎の感動と共にリビングへ向かうと、何かが倒れる様な音がした。

 また缶ビールの山でもひっくり返したのだろうか。懲りない人だなぁ、だから積み上げるのは止めた方が良いって言ったのに。


「篠原さん? 居るのなら返事ぐらい…………え?」


 確かに篠原さんは居た。まだまだゴミが散乱する室内に。ただ問題が1つだけあって、見知らぬ男性の上に馬乗りで座っていた。

 男性って言うか、どう見ても高校生ぐらいの男の子だ。恐らくは真と同じ体育会系だと思う。そう言う雰囲気をしているので、多分そうじゃないかな。

 うん、まあ、寝ていましたね。そっちの意味で。人を呼んでおいてそれはちょっとどうかと思うんだよね。

 篠原さんだって人間なのだから、そう言う気分の時があるのは分かるよ私でも。ただね、タイミングと言うか……ん?

 相手は高校生ぐらいの男の子だよね? ハッ!? まさか私達が全然構わない寂しさから、未成年を連れ込んで不純異性交遊を!?


「篠原さん、悪い事は言いません。自首しましょう?」


「どういう事かな!?」


「未成年に手を出すなんて……私は悲しいです」


「誤解だよ!? そんな訳ないでしょ!?」


 どうやら私の誤解だったらしい事は、男の子本人の口から証明された。掃除をしている途中に一緒に転んでしまったそう。

 篠原さんが怪我をしない様に、男の子が下敷きになった結果があれだと言う事。良かったよ、私の知り合いから犯罪者が出なくて。

 女の子にお世話されたいなんて普段から言っている人だから、もしかしたら有り得るかも知れないと思ってしまった。

 日頃の行いって、本当に大事なんだなと改めて思ったよね。黒歴史を作りがちな私も気をつけないと。


「えっと、それで、貴方は?」


「あ、失礼しました。俺は東咲人(あずまさきと)です」


「私は宮沢鏡花(みやざわきょうか)です。そっか、貴方が新しい家事代行の」


「そうだよ〜変な誤解しないでよね!」


 あれで誤解するなと言われてもなぁ。美桜ちゃんもきっと同じ事を考えると思う。それはそれとして、東君は同じ篠原さんのお世話をする者同士。

 何だか仲良くなれそうな気がする。そんな風に思えるぐらいには、私も成長できたのかな。結構普通に会話が出来ている。

 相手が年下だからと言うのもあるけど、これはこれでまた一歩前進だと思います。彼は定期的に訪れているそうなので、ある程度仲良くなっておいて損は無いしね。


「わ、凄い。汚れ落とすの上手い」


「でしょー! 咲人君は凄いんだよね」


「そうですか? 俺は普通だと思いますけど?」


 東君は凄く綺麗に、素早く汚れを落として行く。私は料理ならそれなりに自信があるけど、掃除はそれほど得意な訳じゃない。

 だから手際良く掃除を進める東君を素直に凄いと思った。どうやら彼は父子家庭で、家事全般を昔から担当して来たとか。

 お父さんが不器用で良く色々と汚すから、綺麗に落とす技術が自然と身についたそう。私の周りには篠原さんぐらいしか、こんなに汚す人居なかったしねぇ。

 今度色々と教えて貰おうかな。将来的に真と暮らし始めたら、いつか役に立つかも知れないし。


「ふふー! 良いでしょう咲人君。譲ってあげないよ」


「欲しいなんて言っていませんから」


「え、俺の自由は?」


 何だか随分と篠原さんは彼を気に入っているらしい。見た感じ東君は篠原さんと相性が良さそうだ。

 家事全般が得意なら、篠原さんのお世話も出来るだろうし。こんな感じの男性なら、篠原さんと結婚してもやって行けそうな気がした。

 ま、彼は未成年だし歳の差もあるもんね。流石に2人が結婚する様な事にはならないだろうけど。

■お知らせ

本日12/1より『いつも教室の隅に居る地味なあの子が気になって仕方ない』の外伝作品、『ヤニカスで酒カスで汚部屋暮らしの限界配信者なお姉さん(31)は好きですか?』と言う篠原さんをヒロインに据えた年上ヒロインのラブコメを投稿開始しました。『教室の隅』シリーズとしてそちらもお楽しみ頂けたら幸いです。

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