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SS集02 中学時代の鏡花ちゃん

 私は佐々木鏡花(ささききょうか)、15歳。来年から高校生になる、中学3年生の平凡で地味な女子中学生。正にモブと言う言葉がぴったりの目立たない存在として暮らしている。

 クラスの中心となる様なタイプとは違い、教室の隅で壁のシミになっているのがお似合いの生徒。

 ただ1つだけ救いがあるとすれば、ギリギリぼっちでは無いと言う事。同じクラスには幼い頃からずっと友達でいるカナちゃんこと結城佳奈(ゆうきかな)と、麻衣(まい)こと小日向麻衣(こひなたまい)が一緒だからだ。

 幼馴染としてずっと過ごして来たので、何とか孤独にならずに済んでいる。ただ私は2人以外に友達と呼べる存在はおらず、2人には友達が他にもいるんだけどね。


「3組の佐伯(さえき)君もカッコいいよね」


「分かる〜サッカー部って爽やかな人多いよね〜」


「だ、誰の話?」


 接点がなさ過ぎて誰の事か分からない。暇があれば本の虫をやっている私には、そんなキラキラ陽キャ部活動に所属している人は分からない。

 同じクラスになった事がある人ならギリギリ分かるけれど、一度も一緒になった事がない人は殆ど知らない。

 カナちゃんと麻衣は他の友達とイケメン達を見に行ったりするけど、私はそんな事をしないので知らない事だらけだ。

 同じクラスのサッカー部に所属する人なら分かるんだけど。まあその人達も私は全く縁が無いので、まともに会話した事が無いんだけどね。

 むしろ出来るだけ話し掛けないで欲しいぐらい。アワアワしちゃうから。ちゃんと会話する自信が私には無い。


「鏡花ちゃん、男の子に興味なさ過ぎない?」


「えっ!? そ、そうかなぁ?」


「そうだよ〜全然興味ないよね〜」


 いつも利用する近所のファミレスで、恋バナをしているモブ3人衆な私達。そんな中で私だけイマイチ会話に入れていなかった。

 恋バナになるとわりとこうなってしまうんだけど、別に興味がないと言う程冷めているつもりはない。

 美的感覚としてのカッコいいと言うのは理解出来る。小説やゲームに登場する男性キャラクターを好ましく思う事だってある。

 声が好みの男性声優さんとか、俳優さんとかもちゃんと居る。ただ恋とか愛とか、そう言うのが良く分からないだけで。


「ゲームとかだと興味あるのに、現実の男の子は全然だよね」


「キョウちゃんいつもそうだよね〜」


「そんなつもりは無いんだけどなぁ」


 別に私は2次元こそ正義! 現実の男子なんて! とか考えているタイプではない。容姿が整っている男の子はイケメンだなぁとか思う事もある。

 むしろ眩しくて直視出来ないぐらいだよ。キラキラ陽キャが輝く姿に壁のシミに過ぎない私は浄化されてしまいそうだよ。

 ジメジメ陰キャな私には、彼らはあまりにも眩しい光だよ。決して近付いて良い存在じゃない。

 それに近付いたところで、私なんかを相手にする筈もない。恋愛関係に発展するとは微塵も思えない。

 誰が好きになるんだよ、こんな地味で平凡なモブBなんて。良いんだよ私は、いつまでも美男美女を遠くから眺める側の人間で。


「あれ〜? でもそう言えばキョウちゃん昔男の子の話をして無かった〜?」


「あ、そう言えば! してたよね小学生の時!」


「えっ!? 私そんな話、してたかな?」


 自分の事ながら全然覚えていない。私が男の子について何か言及した事があったのだろうか。

 ヤンチャな男の子に上靴を隠された話なら覚えているんだけどな。もう名前も覚えてないなんとか君の話だけど。

 後は私が転んだせいで、バケツの水で濡れてしまった小林君とか? あれは本当にごめんなさいだよ。今でも当時の申し訳無さを覚えている。

 私が何か言うとするなら、そう言う類の話しかないと思うんだけどな。少なくとも恋バナ的な話題を提供した事は無い筈だよ。


「あれって誰の事だっけ?」


「え〜覚えてないよ〜」


「そもそも私が覚えていないんだよ?」


 本当に分からない。私も2人も覚えていないのなら、きっと大した話題では無かったんじゃないかな。

 初恋なんてしたかなぁと言うぐらいに縁が無い私の事だし。多分誰かの話と勘違いしてるんじゃないかな。

 もしくは誰々君に話掛けられたけど、ちゃんと会話出来なかったとかそんな話だよ。その手の失敗なら何度も経験がある。

 そしてそんな黒歴史を積み上げて来た自分が嫌になる。どうしていつも失敗するんだろうね? せめて会話ぐらいは無難に成立させたいんだけどね。

 あ、とか、えっと、とかすぐ言っちゃうのを直したい。陰キャな自分を何とかしたい。高校生になったら、何とかならない、かなぁ?


「私はそもそも、男の子と普通に会話出来る様にならないと」


「……鏡花ちゃんは先ずそこだよね」


「私達となら普通に話せるのにね〜不思議だよね〜」


 いやもう本当にそこなんだよ。ド陰キャ過ぎて男の子とまともに会話出来ないモブBが、どうやって恋愛をしたら良いんだって話。

 自分から挨拶する事も出来ないのに、仲良くなるなんて無理無理無理。そんな女子では男の子だって無理不可能お断りだよね。


 と言うか社会に出ても、やっていけないよね。社会不適合者への道を真っしぐらだよ。それだけは嫌だから、せめて普通に男性と話せる人になりたい。

 こんな最底辺にいる私が恋だなんて、高校生になっても出来る気がしない。それよりも先ずは脱陰キャだよね。

 出来るかな? 出来たら良いな…………出来るだけ頑張ろうかな。とりあえず高校生になってから頑張ろうかな。今はほら、その為の充電期間と言う事で。

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