SS 私の可愛いエアリア
「よいしょっ、と」
神の器の幹部が呼び出した大悪魔を私はたった一振りで真っ二つにする。何か名乗っていたような気もするけど雑魚悪魔に用はないのよね。
「こ、この化け物め…!」
「えー、結構顔にもスタイルにも自信あるんだけどなぁ」
化け物扱いされ、私は少し不機嫌になった。全く、自分達だって散々異形のレッサーデーモンやらグレーターデーモンやら呼び出してるじゃない。そんな異形をしょっちゅう目にしてる人に化け物と言われるなんて心外だわ。
私のハートはダイヤモンドのように脆いんだからね?
え? ダイヤモンドは硬い?
私の持つエウルードにかかれば豆腐よ豆腐。この例えは美しさを表しているんだからね?
「もう残っているのはあんただけね。覚悟してよね」
「ひいいいいい! お、お助けぇっ!」
沢山人を殺してるやつが今更何言ってるかな…。
「却下」
一振りで首を跳ねるとその幹部とやらは倒れ、動かなくなった。まぁ、あまり人のことは言えないのかもしれないけどね。
ここはどうやら何かの研究施設らしい。なんの研究かは知らないけど、どうせろくでもないものだろう。
とりあえず私はくまなく研究施設の中を探索する。
なんで私が研究施設の中を探索してるのか、っていうと教会からの依頼なのだ。8年前に魔神王ヴァルバロイを封じて、おっと、教会には討伐したことにしてあるんだったっけ。まぁ、それ以来あなたこそヴァサーが遣わした神の戦士ですー、なんて持ち上げられちゃってね。いやー、権力ってコワイ。
魔王より強いこの私、アリー=フォルティスでも人である以上人間社会のルールには勝てないのよね。
そうやって探索していると厳重なロックがされている扉を見つける。権限レベル3以上のみ入室可、と書いてある。
これは何かあるよね。ロックされているなら壊せばいい。いちいち解除とかやってらんないし方法も知らない。
私はエウルードを振るうとドアを切り開いて中へ入っていった。
中にはカプセルがあり、その中には女の子がいた。
白銀の長い髪に端正な顔立ち。まだ幼いけど将来は男を惹き寄せる美貌を持つことだろう。
小さい頃の私にそっくりだ。ネームプレートがつけてある。
『実験体No.005エアリア』
エアリア!
忘れもしないその名前。私の心の中に封じられている魔神王ヴァルバロイの最愛の子。どこで私の遺伝子を拾ってきたかは知らないけど、そんなことはこの際どうでもいいのだ。
──ああ、やっと会えた。あの子を助けてあげて。
「わかってるわよ、ヴァルバロイ。私が責任もって助ける」
とはいえ、そのままカプセル壊しても大丈夫なのだろうか?
こんなことならゼナを引っ張ってくるべきだったかも。
──僕も力を貸すから大丈夫。
「なれば良し!」
私はカプセルの下に穴を開け、羊水を排出した後カプセルを切り裂いて中のエアリアを救出する。収納魔法で大きめのタオルを取り出すと、彼女を包んで保護するのだった。
私はエアリアを保護し、教会へと戻る。この子はホムンクルスなのだからヴァサー教会にとっては忌み子かもしれない。
でも私はこの子の母親になると決めたのだ。なれるのはこの子のオリジナルである私しかいない。
「アリー様、よくぞご無事で戻られました」
「大司教様、ご相談があります」
「ふむ、こちらへどうぞ」
私の抱く幼子を見て察したのだろう。大司教は応接室へと歩き出す。
「その子は預けていかれませんか?」
「悪いけど今はこの子を離したくない」
信用していないわけではないが、忌み子とわかり危害を加えられたら私は何をするかわからない。過剰な考えかもしれないが万に1つもあってはならないのだ。
やがて応接室に入り、向かい合って座る。
「それで、相談とはその子のことですかな?」
「うん。この子ね、エアリアっていうんだけど、私のコピーホムンクルスなんだ。詳しく調べたわけじゃないけど、間違いないと思う」
「どうされるおつもりで?」
「私が育てる。それを認めて欲しい。認めてくれるならなんでもするわ。そうね、もうじきまた2つの月が重なるわ。そうなったらまた神の器どもがまた異界の魔王を呼び出すかもしれないわね。現れたらヴァサーの名のもとに成敗してあげる」
神の器のことが教会内で知られるようになったのはまだ7年前の話だ。組織そのものは10数年くらい前からあったようだけど。ハタ迷惑な組織ではあるが、こいつらがいないとエアリアも存在しないことになる。ヴァルバロイも現れなかっただろうから、ちょっと複雑だ。
「なるほど。いや、育てたいなら別に構いませんよ。コピーホムンクルスを作ることは禁じられていますが、育てるのはまた別の話です。生命には変わりありません。陽の光を浴びても無事なようですし」
「それはダルクアンクレプリカっていう魔導器のおかげよ。壊れればこの子は消えてしまうわ」
それはゼナが以前教えてくれたことであった。ヴァルバロイの件があって、事前に色々教わっていたのだ。
「そうなのですね。不思議なものです。ですが答えは変わりませんよ。その子が人類の敵でさえなければ排除する理由などどこにもないのです」
「理解が得られて嬉しいわ」
「ですので何かあったらまたお願いします」
思ったより簡単に理解が得られて良かった。またなんか出てきたら私が出ることになるんだろうけど仕方がない。それがこの救世主の恩恵を持つ者の役目でもあるのだから。
私はフォーンの村にエアリアを連れて戻った。
エアリアはとても大人しい子だけど、きっと思慮深いのだろう。ゼナには呼び出しをかけてあるからもうじきやって来るはずだ。色々調べて貰うならこいつの方が早い。
「エアリア、今日からここがあなたの家。そして、私があなたのお母さんだよ」
「…お母さん」
エアリアがどこか不安そうに呟く。憂いを帯びた顔もまた愛らしく、彼女を抱きしめる。
「そう、お母さんだよ。恥ずかしいなら、アリーでもいいよ」
「…うん、アリー」
今日から私がこの子のお母さんだ。そして師匠にもなる。私の技をこの子に伝えなければならないだろう。この子がいつか大切に思える人と巡り会えるようにするために。そして私がいなくなった後の世界を託すために。
「エアリア、私の可愛いエアリア。私が必ずあなたを立派に育ててあげる。そして、今はまだ意味を知らなくていいけど、願わくば大切に思える人と出会えますように…」
私に残された時間は後どれくらいだろう。死ぬのは怖くないんだよね、あの子と眠りにつくだけだから。でも心残りはできてしまう。
──ごめんね、アリー。僕のせいで。
またあの子が謝ってきた。これで何回目?
そう思うなら来世で責任とりなさいよねまったくもう。
FIN
これでこの物語はおしまいです。
異世界に召喚された僕は路地裏に捨てられ美少女に拾われ最強の魔道士として覚醒して悪の組織相手に無双する〜拳も魔法も最強です〜
原題『神代創魔師と極滅の少女』
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もうひとつの連載【最強のサポートスキル拡大解釈で底辺パーティから這い上がります】もよろしくお願いしますm(._.)m




