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神の器3〜瞬の決意〜

「…だって、私もホムンクルスだから」


その一言に、瞬はエアリアが何を言っているのかわからなった。

エアリアは泣きそうな顔をしていた。いや、泣いているのだろう。その目に涙が滲んでいた。


「…私は英雄アリーのコピーホムンクルス。実験体ナンバー005。魔神王ヴァルバロイの依り代候補の1人として神の器によって生み出された」


「…なんだよ、それ…」

「…私の中にはダルクアンクレプリカと呼ばれる、賢者の石の基となった神器のレプリカが埋まってる。でも、それもいつまで持つかわからない」

━━いつまで持つかわからない?

瞬はまだ頭がごちゃごちゃしていた。ただハッキリしたこともある。

それはエアリアがホムンクルスで、そのダルクアンクレプリカが壊れれば消えてしまうということ。耐用年数でもあるのだろう。

「…何かの拍子にレプリカが壊れれば私は消えてなくなる。奴らの手に落ちれば魔神王ヴァルバロイの依り代にされるかもしれない。そんなのは嫌」

エアリアの目から大粒の涙が溢れ出す。

瞬はエアリアを強い女性だと思い込んでいた。でも違ったのだ。

感極まり、泣きじゃくる少女を胸に抱く。


その身体がとても細く感じられた。


「…助けて」

少女の嗚咽は止まらない。

溢れ出す苦しさを吐き出すように少女は訴え続けた。

「…あの子を憐れむ心を私にも分けて欲しい。私が助かるには奴らを潰してダルクアンクのオリジナルを見つけるしかないの…。その鍵が神代創魔師であるシュンなんだよ」

瞬は黙って少女の嘆きを心に刻み込む。

「…いつも悪夢ゆめを見るの。魔神王に身体を支配され、全てを破壊する悪夢ゆめ。怖いの。怖くて仕方がないの」

そして理解したのだ。なぜエアリアが自分を必要としていたのかを。


瞬は自分に問う。

━━僕はどうしたい?

━━そんなの決まっている。惚れたんだろ? 認めろよ。

考えるまでもないことだった。


「僕に何ができるかわからないけど…。約束する」

瞬はエアリアを抱きしめる。自分が今護りたい者をこの腕に感じるために。

この決意を揺るぎないものにし、心に刻み込むのだ。

そして瞬は決意を口にした。


「君の悪夢は僕が終わらせる。魔神王だろうが悪の組織だろうが知るもんか! その神器だって見つけてみせる!」

「…うん」

エアリアが瞬の背中に手を伸ばした。

「一緒に探そう。僕がエアリアを護れるくらい強くなるから」

「…うん」

そして顔を上げる。


その涙に濡れた顔には笑顔があって。


それがとても愛おしくて。


瞬は思わず唇を重ねるのだった。




「えと…ごめん」

急に気恥ずかしなり何となく謝る。いや、瞬も理由はわかっていた。弱味につけ込んだような罪悪感。

気持ちに嘘はないが、本当に受け入れて貰えたのかという不安がそうさせたのである。

「…? なにが?」

エアリアが小首を傾げる。

「思わずその、キス…」

自分で言ってて顔に火が着きそうだった。そして全てを言い終わる前に人差し指を唇に当てられ、発言が止まる。

「…嫌ならしてない。謝らないでほしい」

エアリアの顔は泣き跡と火照りでピンク色だった。しかも照れを隠すように目を逸らして伝えてきたのがまた愛おしくて。

これがキュン死にというやつか、とめまいがするほどの胸の高鳴りを感じていた。


聞こえるのは2人の鼓動のみ。その音だけが耳に残る。

2人は気恥ずかしさのあまりしばらく何も言えなかった。



「…とりあえず仕事する」

エアリアの一言に瞬は1度深呼吸し、立ち上がる。

「そうだね。中に人がいるんだよね。助けないと」

「…私が呼んでくる。瞬は残ってて欲しい」

瞬は自分が行こうと思っていたが、こういうのは経験豊富なエアリアに任せようと思い直して従うことにした。

「…じゃあ行ってくる。そこまで離れてないからすぐ戻る」

そう伝えるとエアリアは走っていった。頬を染めたのを隠すように。


1人になった瞬は先程のキスを思い出し、反芻する。

人生初のキス。それがなんともドラマチックだったなー、と1人ニヤつき、悶えていた。

そんなことをしばらく繰り返していると、何か嫌な感じがして横に跳ぶ。


そこから1秒程で瞬のいた場所に魔法球が着弾し、破裂。地面が手のひら程えぐれていた。

「誰だ!」

球の飛んできた方を見ると、5人の男達がいた。

「そっちこそ何ものだ? 番犬のキマイラがいないな。貴様がやったのか?」

キマイラはこの世界でもキマイラらしい。

5人のリーダーぽいのが先程魔法球を撃って来た者で、あとの者は手に武器を持っていた。

「だったらどうする?」

「殺す」

逃げ道を塞ぐようにリーダーの取り巻き達が瞬を囲むように位置を取る。

あのキマイラを倒したのを知ってて向かってくるなら何か勝算や作戦があるのだろう。


だがそれに付き合う義理はどこにもない。

千の光矢(サウザンドアロー)

光の矢を1000本生み出すこの魔法、実のところ光矢レイアローの数を極端に増やしただけである。

しかしその数が1000本ともなれば見た目のインパクトも凄く、そしてわざわざ狙いをつけなくても広範囲に放てば済む手軽さは便利であった。消費はバカ高いが原初の魔素(オリジンマナ)のスキル効果によるコストカットとMPの超回復によりあまり気にならないレベルなのである。


「な、なんじゃそりゃ!」

男達が1000本の矢を目の当たりにして退避を始めるが既に遅かった。

「シュート!」

瞬が腕を振り下ろすと同時に1000本の矢が広範囲に広がって降り注ぐ。

「ひいいいいぃぃぃっっ!」

「ぎゃあああっっ!」

魔道士風のリーダーはなんとか魔法で防いだようだが、取り巻き達は脚や腕、あるいは腹に刺さって悶絶している。

即死はしてないが、手当の必要な者もいそうだ。


「野郎! 喰らえ! 死界滅法陣イービルデッド!」

瞬の足元に魔法陣が出現する。

同時に聖光気セイクリッドオーラを発動。


そして魔法陣から無数の黒い蛇が姿を現すが、聖光気セイクリッドオーラに触れた蛇から霧散、消滅し魔法を無効化する。

「んなっ!」

あっさりと対処されたことに驚き、次の魔法の詠唱に入るが既に瞬は動いていた。

素早いステップで魔道士に肉迫し、どてっぱらにショートアッパーを叩き込む。

勿論死なないように加減はしてあるが、その一発で魔道士は意識を失った。


他の4人に目を向けると、ろくに動ける者はいないようだった。そこで縄を取り出し、魔道士を縛りあげる。

「逃げたり抵抗したりしたら死んじゃうかもね。手加減とか下手だからさぁ」

瞬がニタァッと嗤い4人を牽制する。勿論ハッタリである。

ケンカでもハッタリは大事で、ちょっと危ない奴と思わせるくらいでないと効果がない。


動けそうな者から順に縛りあげ、重傷の者には回復魔法で治療を施す。


「もうじき人が来るからそれまで大人しくしててね」

全員を1箇所に集め、動けないよう5人の首を縄で結びつける。動くと首が締まるため、これで下手なことは出来ない。


尋問しようとも思ったが、いくら回復魔法で治せるからとはいえ拷問してまで情報を引き出す気にはなれなかった。

まぁ、頼めば引き出した情報をもらえるかもしれないのでそちらに期待することにしたのである。



そしてしばらく待っていると、エアリアが人を連れて戻って来た。メンバーは主に衛兵のようで、叩きのめした5人も連行されて行く。


それから中に入り、囚われた人達の救出と研究員の連行をして馬車で護送していった。


瞬とエアリアも馬車に乗せてもらい、帰路についたのであった。



ここでくっつけた方がスッキリするので、くっつけちゃいましたw


即落ちもあれなんですけどね。


エアリアとしてはその場の雰囲気に流されたのもあるでしょうが、受け入れてもらったことが嬉しかったから彼女も受け入れたと解釈できるようには書いたつもりなのですがw


憐れむ心を分けて欲しい、って言い方は賛否両論あるんだろうなと思いますけど。良心に訴える狡猾さともとれますし、嫉妬心ともとれますから。僕としては後者で私を見て欲しい、っていう乙女心なのです。多分!



とりあえず序章はここで終了となります。


ここまで読んで気に入って下さったら評価やコメント等いただけると幸いです꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱⋆⸜♡⸝⋆


次回は19日更新しますー


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