全てを込めて
「世界との絆だと!?」
瞬の使ったこの魔法は自分と何らかの関わりのある人達から力を分けて貰う魔法である。
その呼びかけに戦乙女のメンバー達が応える。
──なんかよく分からんけど繋がってる感じがするニャ!
──そういえば貸しがあったものね。今返すわ!
──そうだったねぇ。まだ約束の飯も奢ってないんだ。帰って来たら奢ってやるよ!
その応援を受け、瞬の力が高まる。
「行くぞ!」
アルディスの前に瞬間移動すると右ストレートを放つ。オーラで受け止められはしたものの、アルディスは勢いに押され後ろへと滑りゆく。
──あらあら、大変なことになってるのねぇ。
──君の後ろ楯になったんだ。このくらいの援助はしよう
フォレンティア公爵夫妻の声が瞬に届く。僅かながらも力が高まっていく。
「神気閃光!」
瞬が収束砲撃魔法を放つ。アルディスは障壁魔法で防ぐと、高く飛び上がる。
──スオー子爵。我らベルムントの国民全てがお前を応援している。決して負けるな!
──この戦いに勝利を! 勝ってください子爵様!
ライオネルと一緒に戦って来た兵士たちの声が聞こえた。
瞬の力は更に増幅する。
「神滅破光!」
アルディスは空中から砲撃魔法を放つ。赤い光がはしるも瞬間移動であっさりかわし、背後を取る。
そして両手を組むと鉄槌を頭に叩き込んだ。アルディスはまともに食らうと石床に叩きつけられる。
──瞬負けんじゃねーぞ! 借りを返せねぇだろが!
──そんな奴ぶっ飛ばしなさい! 私が許す!
──瞬、お前は強い! 生きて会おうぜ親友!
宮松、水衣、明の声援に瞬の心は震える。
「氷砕の竜巻!」
「なんのぉっ!!」
氷の竜巻を神滅気の爆散で消し飛ばす。まだその力は届かない。
──スオー子爵! 我らベンジス聖堂騎士団はあなたを支持する!
エライネの声が脳裏に響く。その気持ちを受け止め、瞬は拳を振るう。
アルディスの横に瞬間移動し、パンチを放つ体勢に入るともう一度 瞬間移動して背後に回る。アルディスの蹴りが空を切ると、背中から殴りつけた。
「鬱陶しいですよ!」
それほど効いていないのか、身体を回転させローリングソバットを繰り出す。それを素早くバックステップでかわし、距離を取る。
──色々迷惑かけてみたいだし、私も協力する。
──シュン、アリスと再び会えたことに礼を言おう。私の力で良ければ受け取りたまえ。
アリスとマウテアまでもが力を貸してくれたことに瞬はテンションが上がる。
「行くぞアルディス!」
「まだ私の方が力は上です!」
アルディスの拳をかわし、カウンターで顔面を殴りつける。派手に後ろへ吹っ飛び、壁に激突すると石壁が壊れ、バラバラと一緒に崩れ落ちていった。
──いやいやいや、もちろん私も協力いたしますよぉ?
──当然です。神である私に喧嘩を売ったんですからね、懲らしめてやりなさい!
ゼナとサヴァードの声が聞こえる。更なるオーラの増幅に何かに届きそうな感触を覚えた。
アルディスは大量の赤い球を生み出し、それを拡散させて弾幕を張る。
「反射!」
魔法の鏡でそれらを弾き返す。跳ね返った球が他の球にぶつかり連鎖的に爆散していった。
──シュン、あなたなら絶対勝てるって信じてる。また私の腕の中に帰って来て。大好きだよ。
エアリアの優しい声が響く。その温かい声はエアリアの権能『神魔融合』と深淵気を貸し与える。
そして瞬のオーラは更なる高みへと至った。
白銀のオーラは虹色に輝く美しいオーラへと移り変わる。
創世神気。それは神滅気と双璧を成す最高位の力。
「な、なんだそれは!」
「愛の力だよ!」
雷鳴の如きスピードで迫ると、瞬のショートアッパーがアルディスの腹に食い込む。
「ぐへぇっ!?」
そして体が浮いた所へ瞬の連打が突き刺さった。
アルディスの後ろを防衛で塞ぎ、連打で張り付けにする。
右左右左右左右左右左とラッシュをかけ、ぶっ飛ばした勢いで防衛が砕け散る。アルディスは床に倒れ、血を流していた。それでもゆっくりと立ち上がり、瞬を睨む。
「ま、まだまだこれからですよ…!」
口の端から血を流しつつ不敵に笑う。しかし肩で息をしておりダメージは少なくないことを物語っていた。
「いや、終わりだよ。まだとっておきがあるんだ」
「なに! まだあるのか!」
瞬はエアリアから預かったアリーの人形を取り出す。
「アリーの魂を取り込んだのは失敗だったね! アリー、僕に力を! エアリアを泣かせないだけの力を!」
瞬が叫ぶとアリーの人形が光を放つ。その光から白銀の浮遊物が現れ、ふわふわと瞬の前を浮いていた。その浮遊物が青みがかった白銀の光を放つと、アルディスの胸の辺りから光が漏れる。
その光は上へと上がり、アルディスの身体から出ていこうとしているようだった。
「あ、あががが!!」
アルディスの取り込んだ魂が外へと排出され、瞬の元へと漂う。そしてその魂は人の形を取り、瞬の横に並び立った。
──僕だって須王瞬だからね。力を貸すよもちろん。
──エアリアと巡り会えたんだね。だったら力を貸さない訳にはいかないよね。
ヴァルバロイとアリーまでもが力を貸す。そして瞬は更に神滅気をも同時に展開する。それはアリーとエアリアの神魔融合にて混ざり合い、絶対たる力となる。
──今なら詠唱無しで終焉の浄滅が使えそうだね。
──ならやっとく? 好き勝手やってくれたお礼も兼ねて。
「ひ、ひいいいいいっ!」
神滅気を失い、アルディスは尻もちをつくと、這いずり回って逃げようとする。
「アルディス、君の負けだ」
──終焉の…
──浄滅!
ヴァルバロイとアリーの力を受け、青みがかった白銀の光が放たれアルディスを呑み込む。
「うあ……」
微かな呻き声を残し、あっけなくアルディスは蒸発した。瞬はその虚空を少しの間見つめた後、自分の傍らに立つ2人に交互に目を向ける。
「ありがとう、アリー、そしてもう1人の僕」
──無事エアリアと結ばれたみたいだし、もう未練は無いよ。
──そう? なら一緒に輪廻の輪に戻りましょうか。
──うんそうだね。あのさ、もし生まれ変わったらだけど…。
──うん?
──また会えると嬉しいな。
──ふふっ、グランデス様にお願いしておくわ。じゃあね、シュン。エアリアのこと、頼んだからね? 泣かせちゃダメよ?
「任せてよ。嬉し泣きならいいでしょ?」
──そうね。それならいいかな。
──よし、頑張れもう1人の僕!
などと話していると空感が歪み、元いた謁見の間へと戻る。
「…アリー? アリー! アリー!」
エアリアがアリーを見つけ、呼びかける。
──エアリア。最後に会えて嬉しいわ。シュンと仲良くね。体に気をつけてね、私がいなくてもしっかりね、それからそれから…
アリーは泪ぐんで言葉を探す。そして一言だけ選んだ。
──愛してる。私の可愛い娘、エアリア。そしてあなたも私の娘だよね。助けてあげられなくてごめんね。名前、教えて?
「アリス。私はアリスだよ! お母さん…!」
アリスは初めて見る自分のオリジナルに涙を流し、母と呼んだ。なぜかそう呼びたかった。もしかしたら得られなかった母の愛情を得られたような気になれたからかもしれない。
──そっか、アリスか。可愛い名前だね。元気でね、エアリアもアリスも仲良くね! 母と呼んでくれてありがとう!
アリーは最後にそう伝えると、ヴァルバロイとともに天へと昇っていった。
「「お母さん!」」
2人は最後にもう一度彼女を母と呼ぶのだった。
後はエピローグを残すのみとなりました。読んでいただければ幸いです。
剣じゃなくて拳と魔法の世界になってるわw
ドラゴンボールの元気玉みたいな系統の必殺技って他になんかあったかな…?
ワイルドアームズ2のアークインパルスかな?
意外と取り扱ってる物語って少ない気がする。
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