神滅気《ラグナオーラ》
瞬が穴を通り中へ入ると、そこは石床の敷き詰められた舞台の上だった。天には空が広がり、舞台の周りは石壁で囲まれている。そしてその舞台の上ではアルディスが待っていた。
「良く来てくれたね。名前はなんと言ったかな?」
「瞬でいいよ」
「そうか。シュンというのだな。ここは審判の間と呼ばれる場所でね、本来なら私が神に挑むための場所さ。そして話した通り、どちらかが死ぬまで出られはしない。そしてせっかくの神を決める戦いだ。出来れば世界中の人に知ってもらいたくてね」
アルディスが指をパチンと鳴らすと召喚陣が現れ、目玉の魔物がわらわらと湧き出てあちこちに散らばっていった。
「何をする気?」
「この戦いは全世界の空に映される。素晴らしい演出だとは思わないかい? この世界を旧人類が支配する世界へと移り変わる瞬間を世界が見届けるのです」
「そうはならないかもね」
瞬がいつもの構えを取り、リズムをとる。
「さぁ、世界よ見届けなさい! そして怯えなさい! 私の名はアルディス! 新たなる世界の神となる男!」
アルディスが深淵気を展開する。その黒いオーラと瞬の白銀のオーラがぶつかり合った。
謁見の間でアルハザードはふぅ、とため息をつくとエアリア達に背を向け、壁を凝視する。戦う気を見せないアルハザードにエアリア達は様子を見ている。
「さぁ、私と共に見届けようではないか。我が王が負けることがあれば、私の命も終わる」
アルハザードは壁を破壊し、空を見上げる。その空では瞬とアルディスの戦いが映し出されていた。
謁見の間にいたもの達もアルハザードが壊した壁から空を見る。
そして世界中がその戦いに注目をし始めた。
最初に動いたのは瞬だった。千の光矢で弾幕を作り、まっすぐ突っ込む。アルディスは障壁を生み出し、矢を全て防いだ。その壁を瞬がワンツーパンチで破壊し、肉薄する。
左ジャブを2発顔に当てるとアルディスの顎が上がる。そして右ショートアッパーがアルディスの腹に食い込んだ。そのパワーで身体が少し浮くと顔の位置が下がる。
左フック。アルディスの横っ面を殴りつける。
右ストレートが顔面を襲い、アルディスを吹っ飛ばすと壁に激突し、ズルズルと下に落ちる。
「神気閃光!」
そして追撃の収束砲撃魔法がアルディスを飲み込んだ。
光が止むとアルディスは立ち上がり、不敵に笑い出す。
「ふふふふふ…。強い、強いなシュンは。認めるよ、以前の私では勝てないようだ」
「以前の…?」
「ここからは、新世界の神となる者の力を見せてやろう! 見るがいい、これが私の力だ!」
アルディスのオーラが膨れ上がり、黒から血のような赤へと移り変わる。その威圧感は空気を震わせ、大地に悲鳴をあげさせる。そして一気に瞬目掛けて駆けた。
アルディスの右回し蹴り。それは力強くムエタイのように直線的で鋭かった。回避が間に合わず左腕でガードすると、身体ごと斜め後ろへ飛ばされる。体重が軽すぎるのだ。
「障壁魔法とはこういう使い方もあるのです!」
障壁魔法で半透明の障壁を生み出すと、そのまま壁が迫るかの如く瞬を押し潰しにいく。上にも横にも逃げ場はなく、瞬間移動でアルディスの真ん前に出る。
それと同時に右ストレートを胸に叩き込む。しかし全く効いた様子がなく、アルディスの右膝が腹を打ち付ける。
「ぐふっ!」
その衝撃で身体が浮くと、そのまま右の拳で殴られ壁に激突した。強く身体を打ち付け、瞬が呻く。
「神滅破光!」
そこを赤い砲撃魔法が強襲。しかし瞬はそれを瞬間移動でかわし、アルディスの真上に出る。そしてお返しとばかりに収束砲撃魔法を放った。
そして撃ち終わると飛翔でアルディス目掛けて突進する。
「神滅破光!」
アルディスがカウンターとばかりに真上に赤い砲撃魔法を放つ。しかしそれは瞬の期待通りであった。
瞬間移動で再び前に出ると、全体重を乗せたスローイングパンチをみぞおちに叩き込む。と同時に神気閃光を直撃させ、アルディスを吹っ飛ばした。
アルディスは身体を壁に打ち付けられるが、平然と地に降り立つと高らかに笑った。
「ふふふふふ、効きません。まーったく効きませんね。ですが落ち込むことはありません。何せ、あなたの相手はこの新しき世界の神なのですから!」
「うーん、もしかしてヤバい?」
余りの力の差に瞬は驚いていた。戦闘技術だけでは到底埋められそうにないほどパワーの開きを実感する。
「そうですね、まさに絶対絶命とはこのことでしょう。この力の差はどうしようもないのです」
アルディスはゆっくりと歩き、舞台に登ると瞬と対峙する。
「なるほど、ヴァルバロイとアリーの魂を取り込むとそこまで強くなれるわけか。僕も見習わないとね」
「ふふふふ、今更見習うことなど出来ないでしょう。あなたはこの新しき神の前に倒れ伏し、死にゆく運命なのです」
アルディスは余裕たっぷりにほくそ笑む。
それは絶対的な勝利への確信。もはや如何なる魔法を持ってしてもひっくり返ることの無い戦況であると疑わない。
しかし瞬は不敵に笑う。
まだ出来ることがある。アルディス自信が教えてくれた。他者の力を取り込んで強くなったと。ならば瞬も同じことをすればいいのでは、と考える。
「どうかな? 神代創魔師の魔法創造ってずるいよね。どんな魔法でも作れるんだから」
「ほう? この局面を覆す一手があると?」
「あるね。それを今から見せてあげるよ。そしてこれは君には決して真似出来ない魔法だ!」
「それはいいことを聞きました!」
アルディスが再び迫る。瞬はそれを瞬間移動で後ろに回り込んでかわし、無数の矢を放つ。
そしてもう一度瞬間移動で上に出ると、飛翔で空に滞空する。
そして、瞬の切り札が発動した。
「いくぞ! 世界との絆!」
次回は2本立てでフィナーレまでやっちゃいます!
18時に一挙2話掲載します。読んでやってくださいm(*_ _)m
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