2人の神代創魔師
瞬は急いでエアリアのレプリカを修復する。修復は上手くいったのだが、目を覚まさない。
「エアリア! 目を開けてよ!」
必死に声をかける。やっと終わったと思ったのに、と瞬が悔しそうに涙を流す。
「シュン、心配要りません。ダルクアンクを使えば何も問題ありません。ですがその前に…」
サヴァードは転がっていた仮面を目ざとく見つけ、近づくとその仮面を錫杖で突いて破壊した。
━━ギャアアアアアッッ!!
ピオルが断末魔の悲鳴をあげ、仮面は砕け散って霧散した。
「邪魔されては敵いませんからね。自分でばらしてくれて助かりましたよ」
ピオルの消失を確認し、サヴァードはダルクアンクを高く掲げる。
「母なるグランデスよ! 我は汝の子なり! 報われぬ魂に救済を与え、清浄なる御魂として返したまえ!」
ダルクアンクが辺り一面を光で包む。
そして奇跡は起こるのだった。
暗い闇の中、エアリアは目を覚ます。
「…ここは…?」
何かが手に触れた。それは少し温かく、どこか懐かしい手だった。
そして突然辺りの闇が晴れる。隣にいたのはアリスだった。2人は顔を見合わせ、驚く。そして同時に前を見た。
お花畑の中に見るも美しい女性が座っており、2人を見て優しく微笑んでいた。
その女性は黒い翼と白い翼を生やし、眩い白銀の輝きを背負っていて、そして優しい雰囲気がどこかアリーに似ている。
2人はああ、神様かなとなんとなく理解した。
「良く来ましたね、私の可愛い娘たち。ここは現世と魂の世界の狭間にして私の世界。私の名はグランデス。あなた達が来るのを待っていました」
「…グランデス…様?」
「私は死んだけど、もしかしてエアリア、あなたまで?」
「…わからない」
2人のやり取りを見てグランデスがクスクス笑う。
「ふふっ、2人ともまだ輪廻の輪に戻るのは早いわ。私から贈り物をあげましょう。きっと気に入ってもろえるわ」
その瞬間光が広がった。
それは祝福の光。2人は光の中で微睡み、目を閉じる。
光が止むと、エアリアが目を覚ました。そしてゆっくり身体を起こすと、涙で顔を腫らした瞬がいた。
「…ただいま」
「おかえり…!」
瞬はエアリアを抱きしめると、エアリアもそれに応え抱きしめる。
「…アリスも帰ってくる」
「え…?」
アリスとマウテアのいた所が光に包まれており、その光の中から抱き合うアリスとマウテアが姿を現した。
2人は目を開けると辺りを見回す。
「生きてる…?」
「おお、神よ…! あなたに感謝します!」
マウテアは感極まって神に祈りを捧げる。
「おや、まだ信仰を持ってくれていましたか。嬉しい限りですね。今回はまぁ、特別です。母なる神も許可を出してくれましたからね」
サヴァードはにっこり微笑む。
「それはいいけど、マウテア、アリス。君たちこれからどうすんの?」
「私は…自由に生きたい。でも隷属魔法が…」
もしアルハザードが戻って来たら逆らえない。そのことがアリスに重くのしかかる。
「おお、アリス…! シュン、なんとかならんか?」
「もう敵対しないなら解除するよ?」
マウテアが少々大袈裟にシュンに頼むと、瞬も条件を付けてオッケーを出す。
「シュン様それなら喜んで!」
「私もだ。恩に着よう」
「あー、それでしたら次いでに解除しておきましたよ?」
その返事に2人が喜ぶと、サヴァードがサラッと一言挟む。
「ふむ、なら恩に着なくていいな」
「様は要らないよね」
するとあっさりと手の平を返すのだった。
などと和んでいると、突如壁が破壊され2人の男が入って来た。
「おや、もう終わったようですね。ピオルなどやはり大したことありませんでしたか」
アルディスは謁見の間を見渡すとピオルの存在を感じ取れず終わったことを悟る。
「! あ、あなたはアルディス…!」
「ア、アアア、アルハザード…さま…!」
その侵入者を見てサヴァードとマウテアの顔色が変わる。
「おや、懐かしいですねサヴァード、いや太陽神ヴァサー!」
アルディスはサヴァードを見るなり目をギラつかせ、怨みのこもった眼差しを向けた。
「ふん、マウテアよ。生きていたか。さぁアリスよ、私のためにもう一度戦え!」
「嫌です! 私はもうあなたに従わない! マウテアが殺されたって嘘ついて騙してピオルに身体を奪わせて! あなたなんて大嫌い!」
アリスはアルハザードを拒絶し、マウテアを後ろに下がらせる。ゼナもマウテアを守るべくマウテアの手を引きサヴァードの背中へと回る。
「マウテア、あなたはこちらへ。あなたでは殺されてしまいます」
「愚かな。ならばまとめて死ぬがいい!」
「まぁ待ちなさいアルハザード。それより私の用件を先に」
アルハザードが力を振るおうとするとアルディスが止める。
「は! 申し訳ありません」
「で、この人誰?」
アルディスの名に聞き覚えはあったのだが出てこない。展開について来れず、思わず瞬がアルディスを指差す。
「ああ、そういえば君はお初だね。初めまして現代の神代創魔師よ、私の名はアルディス。旧人類の王であり、私もまた神代創魔師です。そして、魔王を殺し神の資格を得た者です!」
「魔王を殺したですって!」
それを聞きサヴァードが驚く。そうなるとヴァサーは盟約に従いアルディスと戦わねばならないのだ。そして今のアルディスの力を測るとそれは以前とは完全に別物だった。
「その通り! そして私はヴァルバロイとアリーの魂を手に入れ、以前とは比べ物にならない力を手に入れました。ヴァサーよ、あなたが神として君臨する時代は終わるのです!」
「なんということを…!」
「しかしですねぇ、困ったことにそこの神代創魔師も1度魔王を倒して弱った状態でした。そのせいでそこの神代創魔師にも神になる資格が与えられているはずです」
「神の資格ってこれのこと?」
アルディスに言われ、瞬は衣服を引っ張ってチラリと左胸を見せる。そこには赤い紋章が刻まれていた。
「…! ええ、そうです! 赤い紋章は神への第1優先権ですよ! つまり、アルディスが神になるためにはシュンが神になるか、アルディスがシュンを殺さないといけません」
「そうなんですよねぇ。全く、困ったことをしてくれました。神への権利を放棄してくれるなら生命だけは助けてあげてもいいですよ? 我々の仲間になることが条件ですが」
アルディスは瞬に誘いをかける。するとサヴァードは慌てふためいてそれを止めた。瞬がなびくとは思えないが、ついうっかりで放棄する可能性があるのだ。
「シュン! 放棄してはいけません! 打つ手がなくなってしまいます!」
「そういうことなら放棄はしないよ。アルディスだっけ、サシでやるんだろ? 受けて立つよ!」
瞬は意図を汲み取り、アルディスを指差して一対一を申し込む。強い力は感じていたが、引いていい場面でもないと思ったのだ。逃げることなど今更考えられるわけもない。
「話が早くて助かります。では神の資格を賭けて戦いの場へと招待いたしましょう…」
アルディスが手をかざすと虚空に人ひとりがくぐり抜けられそうな穴が空く。
「そこに入れば片方が死ぬまで出ることはできません。そして入れるのは私を除いて1人だけです。中で先に待っています。友に別れを告げる時間くらいは差し上げましょう」
そう伝え、アルディスは先に中へと入っていった。
「シュン、必ず勝ってください。もうあなたにしか頼ることはできません。奴が神の座に着けば私では勝てないでしょう」
「わかった。任せてよヴァサー様」
「…シュン、これを」
エアリアは瞬にアリーを象った小さな人形を渡した。それはいつもエアリアが大事に持っていた大切な宝物。
「…これにはアリーの魂の欠片が眠ってる。きっとシュンの力になってくれるはず」
「うん、ありがとう」
「…だから必ず生きて帰って来て」
エアリアはそう伝えると瞬を抱きしめ、頬にキスをした。瞬は小さな人形を収納する。肌身離さず、といきたいところだったが、万一汚れでもしたら申し訳ないと思ったのだ。
「うん、負けないよ。じゃあ行ってくるよ」
瞬は最後の戦いに赴くため穴をくぐる。瞬が入ると勝手に穴は閉じ、虚空へと消えていった。
次回ラストバトル!
ここで第9部分でチョロっと出したアリーの人形がまさかのこの物語のキーアイテムになります。
覚えてた人凄いですw
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