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幕間 旧人類の王

エポドスの王都ファランの近くにそれはあった。

山の中の朽ちた遺跡。そこの地下の一室には戒めの氷の中に封じられた存在がいる。

女と見紛みまごうほどの美貌と長い髪を持ち、細身ながらも絞り込まれた肉体の男。

その者こそが旧人類の王アルディスであった。戒めの氷は如何なる魔法でも溶けず砕けず、アルディスを永遠の氷の中に閉じ込めている。動きを封じられ目を開けることすらできず、この封印の部屋にいる者との念話と外の世界の強い力の気配を探ることくらいしかやることがなかった。


「王よ。お久しぶりでございます」


━━アルハザード、久しぶりだね。それに魔王ヴェールもよく来てくれた。外の世界は面白いことになっているみたいだね。


「はい。10年前に召喚した大魔王ピオルが魔神王ヴァルバロイの力の一部を得て復活いたしました。といってもそのピオルではなく魔神王ヴァルバロイの仮面として過ごしたピオルのようですが」


アルハザードは恭しく頭を下げ王に報告する。魔王ヴェールを引き連れ、偉大なる旧人類の王を復活させるべくやってきたのである。そしてアルハザードの手にはかつてエアリアから奪ったエウルードが握られていた。


━━懐かしい名前だね。どういうことかは後で聞くよ。でも確かに前より強くなっている。でもあれではあの英雄、そうそうアリーだったかな。あれには勝てないだろうね。


「そうなのですか? しかしもうあの忌々しき救世主メシアは亡くなりました。あの神代創魔師とはどうなのでしょうか」


━━どうかな。ヴェール、君なら勝てるかい?


「…さあな」


ヴェールは認めたくないのか、つまらなさそうに答える。かつての大魔王であれば、あの程度で大魔王を名乗ることに腹を立てていたものだ。しかし今や力関係は完全に負けていた。


━━少しは期待できそうだね。でも正直に言うと当てになんてしちゃいない。私さえ復活できればあれはむしろ邪魔だ。


「ご安心を。ピオルより我らの王を復活させる魔道具をいただいております」


アルハザードは懐から水晶玉を取り出す。これはピオルと魔王ヴェールの力を使いアルハザードが生み出した封印解除のための魔道具である。


━━それは朗報だね。ああ、早くこの忌々しい氷の封印を解いてくれないか?


「もちろんでございます」


アルハザードが水晶玉に込められた魔力を解放する。さらにその魔力をエウルードで増幅させ、氷を切りつけた。すると氷に亀裂が走り、氷全体にヒビが入ると涼し気な音を立てて壊れた。

そしてついに旧人類の王が再び現世の地を踏む。


「礼を言うよアルハザード。旧人類の末裔よ。ところでヴェール。行きたいところがあるんだけど頼めるかい?」

「いいだろう。どこだ?」

「かつて魔神王ヴァルバロイが敗れた地かな」


アルディスのは背伸びをした後手を開いたり閉じたりして動きを確認しながら魔王に頼む。ヴェールはその意図も聞かず了承するのだった。




3人が来たのはゾーラントの北にある廃墟。そこには瞬とヴァルバロイが封絶ディメンジョンシールで封じた石像の眠る場所である。

以前瞬達が来た時と比べそこかしこにクレーターや瓦礫が転がっていた。


「なぜここへ…?」

「うん。あの魔神王ヴァルバロイの力は異常だった。はっきり言ってこの世界は終わったな、って思ってたんだよね。あのアリーっていう救世主メシアじゃ勝てないと思ってたんだよねぇ。でもそれが勝ってるわけだから何かあるはずなんだ。私たちより先に来た者がいるようだけど、どうにもできなかったようだね。このクレーターは新しい」

「ピオルでしょうな、恐らく。ずっとヴァルバロイの仮面として過ごしてきましたからな」


アルディスはクスクスと笑いながら話すと封絶ディメンジョンシールで閉ざされたドームに目を向け歩き始める。


解除リリース


アルディスが解除の魔法を使用すると、その結界の一部は音を立てて壊れた。そこはちょうど瞬が開けた後に蓋をした場所である。ヴァルバロイの結界は破壊できなかったが瞬の結界なら破壊できたことはヴァルバロイと瞬にそれだけの力の差があることを意味していた。

アルディスは空いた空間から中へ入ると、魔王とアルハザードも続く。


「おやおや、これは愛らしい石像だね。そして、とてつもない力を感じるよ」

「この地にこんな物が…!」


アルハザードも魔王もこの石像に驚いていた。結界で封印されていたから何かあるだろうとは思っていたが、まさかこんなものがあるとは思っていなかった。


「ふふっ、感じるよ。ここにヴァルバロイの魂が眠っている。そして同時にその魂を救世主メシアが護っているのか。実に興味深いが、先ずはこの魂をいただかないとね」


アルディスは石像に両手をかざす。深淵気アビスオーラが滲み出し、魔力が高まっていった。


魂魄吸収ソウルスティール…!」


石像に亀裂が走り、音を立てて崩壊していくと中からは大きな青白い光が飛び出す。そしてアルディスが口を開けると中へと吸い込まれていった。そしてゴクリと飲み干す。


「ふふっ、ふふふふ…、はは、ははははは…。あーっはっはっはっはっはっ!!!」


込み上げてくる笑いと共に力の高まりを感じ取っていく。そのあまりの素晴らしさに遂にはしたない程品なく笑う。


「素晴らしいよこの力! 勝てる! これなら憎きヴァサーでさえ私の敵ではない! そしてそのためには…!」


アルディスがニヤリと笑って魔王ヴェールを見る。そしてアルディスの気は更なる高みへと到達していた。


神滅気ラグナオーラ。神をも殺すその力を持ち、魔王ヴェールに襲いかかる。魔王ヴェールも迎え撃つが、瞬との戦いでのダメージが残る魔王に抗うすべはなかった。


「アルディス…、貴様…!」


一撃で胸を貫かれ、真核という魔王の心臓を抜き取られる。

魔王は恨み言を呟くと血を吹いて絶命した。

真核には魔王の血が滴っており、アルディスはそれをも飲み込み自らの力とした。


「これで神となる資格は得た。しかし殺したのは私なのにあの神代創魔師にも資格が生じるだろう。超魔王ピオルと神代創魔師、どちらか生き残った方と決着をつけないといけなくなりそうだ。そしてアルハザード、君は本当に役に立ってくれた。私の右腕として今後も仕えてもらおう」

「ははっ、ありがたき幸せにございます!」


そしてアルディスはアルハザードに新たな力を授ける。

その新たなる恩恵ギフトの名は使徒アポストリ。それは新たる神の使徒を意味する。


「さぁ、行こうか。新たな時代の幕開けだ」


そしてアルディスもまたエポドスの王都ファランを目指す。全ての決着をつけるために。

次回いよいよ終章に入ります。

また1日1話ペースに戻ります。


アルディスが壊せなかった封絶結界を瞬が開けられたのは、同一存在なので干渉できたからです(´-ω-)ウム


おもしろいな、続きが気になる、と感じていただけたら、広告下の評価やいいね、ブックマークをいただけると嬉しいです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨


また、もっとこうして欲しいなどの要望や感想などのコメントをいただけると励みになります꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱⋆⸜♡⸝⋆

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