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神の器1〜依頼〜

「全く、登録前に勝負とかしないでください! いいですか? 本当はあなたまだ一般人なんですから、怪我したらイーマさんを処罰しなくちゃならないんです!」

戻ってきて受け付けに戻ると開口一番ド叱られていた。

説教はそれこそ20分に渡っており、受け付け嬢のキレっぷりが窺える。

もう瞬は半泣きであった。


「まぁ、とにかく登録はこれで完了です。実力があるのはわかりましたがちゃんと講習を受けてから、討伐依頼を、受、け、て、く、だ、さ、い、ね!」

受け付け嬢が荒々しくギルドカードを叩き付ける。ギルドカードには冒険者第6等級の刻印がされていた。

とほほと嘆きつつギルドカードを回収。すっかり落ち込んでしまう。

「…必要ない。ギルド規約で第3等級以上の冒険者と組む場合は免除されるはず」

「そんなのあるんだ」

エアリアが話に割って入る。その一言に受け付け嬢はもの凄く驚いていた。

「ええ、まぁ、ありますけど…。エアリアさんが組むんですか?」

「…そう。私が拾ったから私のモノ」

「ええええええええっっっ!」

その発言に周りの驚愕の声と視線が集中する。


誤解を生む発言だがエアリアに他意は無い。


せいぜいが自分が見つけたから組むのは自分だと主張しているに過ぎない。

しかしその発言はあらぬ妄想を掻き立てるには十分過ぎた。瞬などもう顔真っ赤で嬉しいやら恥ずかしいやらで完全に舞い上がってしまっている。


「そ、そういう関係、なんですか?」

「…何の話?」

受け付け嬢の問いにエアリアは意味がわからず小首を傾げ、眉をひそめていた。それで察したようである。

「意味わかってなかったんですね…」

周りも察したようでなぁんだー、と脱力していた。

エアリアは顔真っ赤で身悶えする瞬に目をやると、少し頬を染めていたようだが。



「そうそう、エアリアさんに受けてもらいたい依頼があったんでした」

気を取り直して受け付け嬢が依頼の話に入った。

「いつも通り公募にしても良かったんですけど、脅威度の判定もできない未知の魔物でして」

「…未知の魔物? わかった。詳しい話をお願い」

未知の魔物と聞きエアリアが話に応じると、2階の応接室へと通された。


応接室ではメガネをかけた細身の男性が待っていた。この男こそこの街のギルドマスターである。

「よく来てくれた。君の噂は聞いているよ極滅のエアリア。まぁ、とりあえず座って話そうじゃないか」

ギルドマスターは座るよう促すとソファに腰掛けた。その対面のソファに2人が並んで座る。

「本当は討伐隊なり編成して向かうのだが、君がここに滞在していると聞いてね。未知の魔物の討伐を依頼したい」

ギルドマスターは早速本題に入ると、1枚の調査報告書を渡した。

調査報告書にはモンスターの特徴や大きさ、居場所が記されている。そしてエアリアが気にしたのは他の記述だった。


未知の魔物の近くに何かの研究所らしき建造物を確認。その建造物から離れると魔物は追ってこなくなる模様。


「…ヴァサー教会に連絡は?」

エアリアが目を細めて確認する。

「いや、まだだ。奴らと確定したわけじゃない」

「奴らって?」

奴ら、という言葉が気になり話の途中ではあるが質問した。

「…神の器っていう組織がある」

「神の器についてはあまり一般には情報を開示していない。 だが極滅と組むなら知っておいた方がいいな」

ギルドマスターがそう伝えるとふむ、と両手の指を絡めて話し始めた。


「今から20年前のことだ。魔神王ヴァルバロイと名乗る魔神が突如現れたのは。奴は魔王すらも従え、勇者たちを駆逐して手がつけられない程強かった。それを生み出した組織が神の器というわけだ」

「勇者を駆逐って、その魔神王とやらはどうなったんです?」

「…倒された。倒したのは私の母」

その事実に瞬が驚き、目を丸くした。

「そう。英雄アリーと言えば今や御伽話にもなっているくらい有名なんだが…」

ギルドマスターが瞬を一瞥すると、エアリアがその疑問に答える。

「…シュンは召喚された異世界人。知らなくて当然」

「まぁ、何にせよ魔神王ヴァルバロイは倒されたが神の器の壊滅には至っていない。神の器のことはヴァサー教会の関係者と一部の者しか知らん」



ギルドマスターとの話も終わり、2人はギルドを後にした。

依頼は勿論受注。報酬も悪くなかった。

「シュンは無限収納インベントリ持ってたよね。色々入れて欲しい物がある」

と言われ、その準備のために道具屋を訪れていた。


「…奴らの施設なら捕縛用に縄がたくさん欲しい。それとタオルケットにマッチ、水それから…」

1日では終わらないかもそれないので野営の準備も必要だと言う。一般的に野営は雨風の凌げる場所で外套やタオルケットにくるまって寝る。テントはかさばるため、徒歩の旅では使用しないのが一般的で、使うなら収納魔法の習得が必須になる。ただ、テントを使うと人がいることがわかりやすいため、盗賊に狙われる危険もあるという。

そういった知識を教えてもらいながら瞬は必要な物を集めていった。


「…1度野営を経験した方がいいから、今日は野宿」

ということで今日は既に野宿が決定していた。お昼ご飯を食べてからの出発である。



お昼ご飯を食べ終え城下町ベルムントを後にする。

目的地はラースの森というベルムントを出て南側の大森林である。大森林自体は徒歩で30分程で着き、広がる草原の中にあぜ道があった。草原の方はあまり魔物も出ずたまに出てもはぐれゴブリンやオーク、稀にオーガくらいである。


森林の入り口辺りには看板があり、ご丁寧に『魔物出没注意』と看板が立ててあった。

「…森の中に入ると街道を通っても魔物に襲われる。気をつけて」

森に足を踏み入れると少し空気が変わったことを感じ取っていた。魔物の気配とかそういうのではなく、雰囲気的なものである。瞬は辺りを警戒しながら歩いていく。


不意に草木の揺れる音が耳に入り目を向けた。

「…オーガね」

草木をかき分け現れたのは1体のオーガ。4メートルに及ぶ巨躯のパワーも脅威だが、何よりそのタフネスさと獰猛さこそがこの魔物の真骨頂である。

「でっか!」

初めて見るオーガの大きさに目を丸くする。瞬も自分より大きい相手を何人もぶっ飛ばしてきたが、さすがにこのサイズは規格外であった。

「…大丈夫。聖光気セイクリッドオーラで殴れば問題ない」

「こうか」

瞬が聖光気セイクリッドオーラを身に纏う。その湧き上がるオーラに力がみなぎるのが感じられた。

自然と笑みがこぼれる。


高揚感。


瞬は元々気が強く、実際宮末にいじめのターゲットにされていた頃でもどれどけ殴られようと睨み返し、ボクシングを身につけてやり返すほどの反骨心がある。

つまり闘争本能が高いのであった。


オーガは瞬たちを見つけるとにぃ、と顔を歪める。


それが瞬には気に食わなかった。

チビだとバカにされたような気がしたのだ。


瞬がすぐさま動く。聖光気セイクリッドオーラを纏った全力の右フックをオーガの右膝に叩き込んだ。

オーガの膝がへし折れ、骨ごと砕ける。

その巨体である。片膝が破壊されればとてもそのバランスを保つことなどできない。


バランスを崩したオーガは前に向かって倒れ、瞬の足元に転がる。首の後ろががら空きであった。

そこを思いっきり踏みつけると頑強なはずの首がそれこそ木の枝をへし折るように容易く折れ、オーガは絶命した。


「…シュンお見事」

エアリアがエウルードを脇に抱えて拍手する。

「いや、このスキルが強すぎるだけだよ」

瞬は照れを隠すように後ろ首を掻いてはにかむ。

そしてゾッとした。

これと似たように能力を持っていた宮松。そんな奴とやり合ってしまったのかと。それこそ下手をすれば死んでいたかもしれないのだ。


瞬はオーガの死体に目を向ける。殺らなければこちらが殺られるとはいえ、やはり人型の遺体を見るのは気分のいいものではない。顔も大きさも人とはかけ離れているおかげで良心の呵責に苛まれる心配はなかったが。

瞬はさっさとオーガの死体を無限収納インベントリにしまうと、エアリアと並んで再び歩き始めた。


「目的地まであとどのくらい?」

地図はエアリアが持っていた。なぜなら瞬には土地勘が全くないのだから当然ではあるが。

「…このままだとすぐに着いてしまう。野宿できない」

森に入ってからは実は1時間程しか経っていなかった。地球の間隔だとまだ午後3時程だろうか。日もまだ明るく森の中は木漏れ日が反射してきらめいていた。


「無理してやらなくてもいいんじゃ?」

なにも好き好んで野宿したいわけではない。エアリアと寝られるのは嬉しいのだろうが。

「…そうだね。依頼を終わらせる」


そこから少し歩くと木に赤で矢印が描かれていた。

「…あった。目印」

どうやらわかりやすいよう目印がされていたようである。地図だけでは確かにわかりようもない。そのため目印をつけてあったのだ。

2人は矢印に従い、木々の間をぬって歩いていく。

そして歩くこと15分。

「エアリアさん、あれ!」

「…うん」

2人の視界にドーム状の建物が飛び込んできた。

オープニングイベントですなー。

次回はストーリー上大事な部分になります。


オープニングイベントですのでなるべく投稿の間隔を短くしたいため、明後日まで毎日18時に投稿します。

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