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魔神王ヴァルバロイ

「…どういうこと?」


信じられないものを見せられ、エアリアは戸惑う。どうしてアリーの魂がヴァルバロイと一緒にいるのか、もはやわけがわからなかった。


「それを今からお話します」


そしてゼナは語る。

ヴァルバロイとアリー、2人の関係を。




世に魔神王が召喚されたのは今から20年も前のこと。世に現れたとき、魔神王はその姿を幻影魔法により世界に知らしめた。姿は小柄だが白い仮面を被り、圧倒的な存在感があった。


ヴァルバロイは自らの目的をヴァサーを神の座から降ろすことだと宣言し、世界に宣戦布告をする。

最初に立ち塞がったのは魔王ヴェールと配下の悪魔達だった。魔王ヴェールが何故魔神王ヴァルバロイと敵対したのか、それは魔王としての矜恃と役割にある。ヴァサーに挑むのであれば先ず自分がその試練とならなければならないのだ。


ヴァルバロイは自らの眷族魔神種を生み出し数の不利を補うとその戦いは長引き、1年半にも及んだ。やがてヴァルバロイは魔王ヴェールと対峙。王と王との戦いはヴァルバロイに軍杯が上がった。いや、それどころか一対一であれば魔王ヴェールですら全く相手になっていなかった。


その後どういうわけか魔王ヴェールは魔神王ヴァルバロイの軍門に下る。

そして人間達との戦いになったのだが、人間達もただ手をこまねいていたわけでもなかった。その頃には各神の恩恵ギフトを得た勇者たちも育っており、配下の悪魔や魔神達に対抗したのだ。


そして魔神王ヴァルバロイに対しヴァサーとその眷属神の恩恵ギフトを受けた勇者達が戦いを挑んだのだが、結果は全滅。魔神王ヴァルバロイは強すぎたのだ。


そこに現れたのがアリーだったという。



「アリーと私は魔神王ヴァルバロイ討伐のため、ゾーラントの北にあるヴァルバロイのいる神殿へ向かいました」


ゼナが話を続ける。


「最初は広域殲滅魔法で神殿ごと破壊しようと思っていたのですが、見られていましてね。魔神王自ら姿を現したのですよ。そして配下の悪魔、魔神達を引かせて私たち2人を呼びつけたのです」




ヴァルバロイは2人を自分の前に立つよう呼びつける。2人が応じると仮面を取り、素顔を晒した。その顔はどこかあどけなさが残ってはいたものの、憎悪と悲しみの入り交じった目をしていた。


「見てわかったよ、本当にそっくりだ…」


ヴァルバロイはアリー見つめると潤んだ瞳で笑った。戦いに来たはずなのに変な空気になってきたな、とゼナは警戒を強める。


「あなたがアリーで間違いないよね? あなたをずっと待っていました」

「どこかで会ったかしら?」

「いいえ、初めてですよ。でも僕はあなたを知っている」

「まさか魔神王にナンパされるとは思わなかったわ…」


アリーもまた警戒を強め、槍を構える。

その一方でヴァルバロイからは全く殺気を感じない。戦う気すらないのかと思えるほどに。


「ナンパ、ねぇ…。これでも一途なつもりなんだけど」

「! ふざけるな!」


ヴァルバロイの態度にアリーが怒る。

こいつのせいで何人死んだ? どれだけの人間を不幸にしているのか、と思うと話をする気にもならない。

アリーはその身に光を纏いヴァルバロイに斬り掛かる。

神光気ディバインオーラと呼ばれるそれは聖光気セイクリッドオーラの上位互換。これこそがアリーの絶対的強さの根底にあるスキルであった。

ヴァルバロイは動かない。ただ一方的に斬られ、叩きつけられ、胸を突かれる。

傷は浅いが確かにその連撃に血を流していた。

それでもヴァルバロイは微動だにしない。


「ああ、とても綺麗だ…」


ヴァルバロイはそう漏らすと涙を流していた。何かを懐かしみ、まるで愛しい者を前にしたときのような優しい笑みすら浮かべて。その姿にアリーは槍の手を止めてしまった。


「なんなのよ…、あんたは一体なんなのよ! その手で私も殺せばいいじゃない! あなた、私ですら相手にならないくらい強いくせに一体なんなのよ…」


アリーは一連の連撃で理解してしまった。自分とヴァルバロイとの隔絶した差を。とてもじゃないが勝てる気がしない。

だがそれ以上に、感じてしまったのだ。ヴァルバロイの瞳の奥にある悲しみの感情を。


「…話しなさいよ、聞いてあげるから」

「アリー、いいのですか?」

「ゼナ。悪いけど私じゃこの子に届かないわ。せめてどんな気持ちでこの世界を滅ぼそう、てのか知りたいじゃない?」

「そうして貰えると嬉しいよ。椅子とテーブルくらいは用意するから」


ヴァルバロイは丸テーブルと椅子を用意し、お茶とケーキまで出していた。そして2人に座るよう促す。


これはどういう絵面なのかとアリーは困惑していた。魔神王討伐に来たはずが、廃墟のど真ん中にテーブルと椅子を用意してその魔神王とお茶を飲んでいるのだ。

ヴァルバロイは1口お茶をすするとぽつりぽつりと話し出した。


「信じられないかもしれないけど、僕は今から20年くらいかな? 先の未来から来たんだよ。僕を召還したのは神の器っていう組織の奴らなんだけどね」

「約20年後の未来ですか。にわかには信じ難いですが…」

「僕は元々違う世界から召還されたんだ。ヴァサーの勇者達と一緒にね。僕の持っていた恩恵ギフトは神代創魔師。系譜はヴェルム=カッソ。ゼナ、君ならこれの意味するところを知っているんじゃないかい?」


神代創魔師、という言葉にゼナは強く反応する。彼は知っていた。その意味するところを。


「まさか神になったのですか、あなたは」

「え? 神に? どういうこと?」


アリーは意味がわからず説明を求める。もし彼が神だというなら勝てるわけがない。


「神代創魔師とは神になる資格を持った者のことです。歴代でも何人かいましたね。そして神代創魔師が神になる条件のひとつに魔王を殺すことがあるのです。その後神の座に座るのですが、元いた神に勝って主神となるか、眷属となるかを選べるのですよ」


魔王は死んでも不滅である。そのため、死んでも何年かするとまた復活するのだ。


「なんであんたがそんなこと知ってんのよ」


ジト目でゼナを見るアリー。胡散臭い奴だと思ってはいたこともあり、話が大き過ぎて信じられる話ではない。

するとゼナはククッと笑ってから答えた。


「ええまぁ、実際にこの目で見てきましたからね。最初に神の座に座ったのは他でもないヴァサーですよ。それで同じパーティにいた3人が眷属に着いたわけです」

「うえええ…」

「それは僕も知らなかった」

「てかあんたいくつ?」


年齢を聞かれゼナが考える。あまりに昔過ぎて覚えていないのだが。


「5万年くらいは生きてるかもしれませんね。何せ私不老不死なもので。ですからまぁ、ヴァサーが他に神になろうとする者を嫌って殺した、なんてのも見てきました」

「うわー、心狭いのね。てか1000歳以上…。うんまぁそうか」


アリーはヴァサーへの信仰など欠片もないため、もしかしたらろくでもない奴なんじゃないかとさえ思えた。

そっちよりもゼナの年齢の方が驚きであった。ゼナの公称は1000歳以上だから嘘は言ってないが、差があり過ぎである。


「5万歳以上とか普通信じないでしょう。そういうことです」

「話し続けるよ? 僕はさ、魔王倒しちゃったんだよね。あいつがやたらと喧嘩ふっかけてくるから。僕は神になんてなりたくなかった。ただ最愛の人と一緒に生きていけたらそれで良かったんだ。でもヴァサーは条件を満たした僕を許さなかった。そのせいで最愛の人を殺され、その怒りと憎しみで魔神王として覚醒し、奴らを滅ぼしたんだ」


そこまで話すとヴァルバロイはお茶をくいっと飲み干す。しかし今の話を聞くと今のヴァルバロイは随分理性的だ。そこがなんとも不思議だった。


「今のあなたは随分理性的よね」

「前の世界で復讐は終わったから。でもヴァサーの関係者を見ると正気を保つ自信はないけどね。君達2人は違うのわかってるから敵意はないよ」

「なんてハタ迷惑なヤツ…」


これでは悪いのはヴァサーではないかとさえ思えてしまう。ヴァルバロイの気持ちもわからないでもないが、さすがにこの魔神王を放置というわけにはいかない。恐らく放っておけばこの世界を破壊しかねない。しかし止める手段もなかった。既にこの世界の主神より強い存在など、どうこうできるわけがないのだ。


「で、あんたはこれからどうしたいの? もう誰も殺さないって約束するならできる範囲で協力するけど?」


正直何が出来るかわからなかったが、ヴァルバロイがもう暴れないならなんでもするつもりだった。

そしてアリーの協力の申し出にヴァルバロイは嬉しそうにしている。


「じゃあ、僕を殺して封印して欲しい。アリー、あなたの魂の救済というスキルならそれが出来ないかな?」


魔神王ヴァルバロイの申し出はあまりに意外だった。

50部分まで来ましたー꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱⋆⸜♡⸝⋆

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