採取依頼
フォレンティア公爵家での依頼の後、2日程は特に依頼も受けずゆったりと過ごす。そして3日目の朝に運動がてらちょっと討伐依頼でも受けようか、ということでギルドに来ていた。
「…シュンは何か受けてみたい依頼ある?」
掲示板にはそれなりに依頼も残っており、討伐依頼もあった。どれもエアリアにとっては欠伸が出るほど簡単
興味はそそられなかったが。
「うーん、特に。受け付けで何かないか聞いてみようよ」
ということで受け付けで依頼の相談をすることにした。
「そういうことでしたらこれをお願いしたいです。実は2組依頼を受けてくれたパーティがいたんですけど、帰って来ないんです。場所もそう遠くないですし徒歩でも2日で往復できると思うんですよね」
そう言って依頼書を提示する。内容はエクスタ草の採取で群生地さえ知っていれば難しくはない。
エクスタ草は媚薬の材料になる草で国内でも群生地は2箇所しかない。媚薬の原料となる草花は幾つかあるが、エクスタ草は特に強力と言われ栽培も難しいのであった。
2人はこの依頼を受けることにし、早速出かけることにした。準備は予め大量の物資を無限収納に蓄えてあるため、中身を確認するだけである。後はエクスタ草の特徴を知らないといけないため施設に隣接されている図書室で調べる。手書きの写しではあるが、花の色、大きさ、形状など特徴が細かく記されている。
これでエクスタ草のことが把握できたので昼飯後に出発することにした。
町を出てその群生地へと向かう。群生地は山の方でそれこそ頂上の近くに咲いているのだが、魔物もそれなりに生息している。だがそこまで強力な魔物は確認されていないはずであった。
道中は穏やかなもので、平原ではそうそう魔物と遭遇することはない。しかし森に入ると状況は変わる。生物が住むのは常に餌のある所なのだ。
森の中にもちゃんと道があり、 そこを道なりに行けば目的の山に到着する。森の中は手入れがされている訳では無いため雑草が生い茂り、規則性もない。たまに花が咲いているのもあるが、それほど目を引くようなものもなかった。
道中たまにオークやらオーガが湧いて出てきたが特に問題もなく仕留め、ようやく山のふもとに辿り着く。
そのふもとには誰が使っているのか小屋があり、誰も住んでなどいない。ところどころ壊れていてすきま風が入り、廃屋のようである。
時間は午後4時頃で、出かけてから3時間程での到着である。ここから頂上付近まで普通に登ると約2時間ほど。そうなると辺りも暗くなり、夜行性の魔物が活発に動くようになるためこの場所で一夜を明かすことにした。
そして明日迷わないようにするため、遠視で山の中を散策し場所の確認を行うことにする。
瞬は意識を飛ばし、山を散策する。上空から山を見下ろし、山の中をくまなく調べた。
すると頂上近くに桃色の花を咲かせた植物を発見する。コスモスのような形状に色、だいたいの大きさは一致。恐らく間違いないだろうことを確認する。
そしたら次は周囲の確認である。2組の冒険者パーティが帰って来なかった理由を調べないといけないのだ。そうなっている以上必ず何らかの脅威があるはずであった。
群生地周辺には特に何者いなかった。たまに狼がいたくらいでオークの一匹も見当たらない。
ならばと次はルートの確認を始める。すると、中腹辺りの木にべっとりと血が付いていた。そして刻まれた草花が散らばっており、木にも傷痕がついている。恐らく戦闘の跡だろうと判断し、周囲の捜索を始める。
そして何かを引きずった跡を見つけた。草木が不自然に揃ってなぎ倒されていたのである。その跡を辿ると途中で草花は途切れ少し開けた場所に出る。その開けた場所では大きな1つ目に何本もの触手が生えたような魔物が数体蠢いていた。器用に触手を駆使し、跳ねたり這いずり回ったりで移動しているのだが、意外と早い。
そしてその先には見覚えのある施設。それは神の器の実験施設に似ていた。中に入るべきかどうか瞬は迷う。ゴブリンジョーカーの時のように手練がいれば気づかれる恐れもある。それは避けたかった。
瞬は意識体を引っ込め、目を開ける。
「エアリア、もしかしたら奴らの研究施設かもしれない建物を見つけた。明日行ってみよう」
「…わかった。とりあえず依頼の物を採取してからにしよう」
「それとなんか変なでっかい目ん玉に触手が生えたような魔物がいたんだけど、なんだろあれ」
「…そんな魔物聞いたことない」
エアリアにとっても未知の魔物のようで、顎に手を当てて思考を巡らせているが該当する魔物はいなかった。
未知の魔物に神の器と関係のありそうな施設。はっきり言って真っ黒であった。
時刻は既に5時をかなり回り、少しづつ明るさが失われ始める時間に入る。瞬は封絶で結界を張り、特製のキャンピング馬車ゴーレムを引っ張り出して野宿の準備に入るのだった。
そしてその様子を目玉の化け物がしっかりと見て、その映像を創造主のいる施設へと送るのだった。
「面白いのが来たな。あれは実験体005エアリアか。もう1人のガキは知らんが、顔がよく見えなかったな」
男は送られてきた映像を眺め、後ろにいる女性に視線を送った。
「マスター。005と戦わせてください」
「ふむ、そうだな…。いいだろう。そうなるともう1人のガキが邪魔だな。アーシからの報告ではかなり腕が立つらしいから私が相手をしよう。期待しているぞアリス」
「私の方が優秀であると証明して見せましょう」
男はアリスを見るとクツクツと嗤う。失敗を繰り返しようやく完成したアリスは男の最高傑作であった。
実験体No.013アリス。英雄アリーの遺伝子から生まれたエアリアそっくりの存在。違うのは髪の色くらいで彼女は黄金色であった。
どちらがヴァルバロイの器に相応しいのだろうな、と男はその時が来るのを楽しみにしていた。
明日18時と20時で2話出します。
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