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フォレンティア公ディニータ

「あらまぁ、つまりスキルで作っているから作り方を知らないということかしら?」


夫人はキョトンとしていた。この少年は隠す気がないようだけど、自分を売り込んでいるのかしら? などと考えていた。だとしたら随分と交渉が下手なのね、とさえ思われているのだが、知らぬは本人ばかりである。


「そういうことになりますね。僕は魔力だけは多いもので、特に材料を集める必要もなく作れるんです。今すぐ作って見せましょう」


そして瞬は神器創造を使い、例のシャンプーとボデイーソープを作ってみせた。それも10組である。


「こ、これは凄いな…」

「あらあらまぁまぁ、容器まで作れちゃうのね」


2人はまさかの展開に驚いていた。材料が要らないとなるとこの少年が材料を知らないというのも信じざるを得なくなる。


「ですので作った物を調べるなりして量産しても僕は文句を言いません。それは公爵様にお任せいたします」

「いいのかね? 多大な利権が生まれるかもしれんぞ?」

「あいにく研究は苦手でして。ノウハウもありませんし」


実は材料も名前は知っているのだが見たことは無い。そして分析アナライズを使えば作り方も知ることはできる。しかしその効果は格段に落ちる物でありそれを説明するには恩寵の加護のことを話す必要があった。

なので作るならご勝手にどうぞ、私は協力しませんけどねと遠回しに言ったのである。


「そういうわけで、もし無くなるようならまたお作りいたしますのでその時はまたご依頼ください」


と頭を下げるのであった。これで角は立つまいと。


「これ、どれだけ持つのかしら?」


と言われ、無詠唱で分析アナライズを使用する。すると経年劣化無しというとんでもない代物だった。しかしそれは普通に考えて無理がある。そこで適当に妥当な年数を挙げる。


「1年以上は持つはずです。傷んだ物を見たことありませんので、試しに2年分置いていき、また来年お伺いする、ということでどうでしょう?」

「ほほう、継続的にか。ふむ…」

「まぁまぁまぁ」


夫人は瞬の評価を上方修正する。継続的な唯一無二の美貌を維持するシャンプーとボデイーソープの取り引き相手、ともなれば瞬の存在価値は上がることになる。それに第1等級魔道士と冒険者の2人と親密な関係になれば有能な駒としても期待できるのだから。


「ふふっ、それでいいわよ」

「ありがとうございます。それと実はご相談があるのですが」

「ほう、なにかね? 言ってみなさい」


第1段階クリアー、と瞬は手応えを感じ次の手に移る。本来ならそれをやるのはマヌケであるのだが…。


「ミッドグラファーの戦いで功績があったことを知ってらっしゃしゃたので、もう知っているかもしれませんが…」


と少しもったいぶる。公爵であればどの程度で叙爵が有りうるかくらいはわかるはずである。


「実はあの後ライオネス殿下直々に仕えてみないか、と誘われまして。それであくまで可能性なのですが、叙爵するかもしれないのです」


その一言に公爵夫妻は雷に撃たれたような衝撃を覚えた。

貴族には派閥というものがある。そしてベルムントの派閥には第1王子派と第2王子派がいるのだが、その派閥も理解せずにそんな話をするものでは無いのだ。もし違う派閥にそんなことを伝えればそれこそ暗殺だって有りうる。ましてや第1等級冒険者と魔道士のセットなど目の上のたんこぶ以外の何者でもないのだ。


ではこの夫妻はどの派閥なのか。

答えは中立であり、まだどちらにも付いていなかった。そしてフォレンティア公爵家の持つ力は大きい。それこそ第1王子派も第2王子派もこの公爵家を味方に引き込んだ方が勝ちだと思っている程であった。ゆえにこそ慎重に判断材料になる何かを探していたのである。


そしてその公爵家当主は考える。

━━まさかライオネス殿下の差し金か!? それともこの少年がライオネス殿下のために私を派閥に取り込もうとしているのか? 見えん! 何を考えている!


実際のところは単なる陞爵したときのコネ作りなのだが、フォレンティア公爵家の特殊な立ち位置が深読みをさせる。

これがその辺の平民が男爵になります程度の話なら深読みはしなかっただろう。取るに足りない相手なのだから無礼者を軽くあしらって終わりである。


しかし瞬は違う。ミッドグラファーで英雄になるほどの戦果を挙げ、世界でも数少ない第1等級魔道士である。そして瞬の戦いに関する情報も持っていたため、その戦力は無視できないものがあった。さらにそのパートナーはこれまた数少ない第1等級冒険者で天下に轟く大英雄アリーの娘で、教会とも繋がりを持っているのである。そんな化け物2人のいる派閥と内乱で敵対など考えたくもなかった。


そしてさらに瞬の相談に公爵家当主は戦慄を覚えた。


「僕は貴族社会に明るくないので、その時は色々ご教授いただければと。もし相談に乗っていただけるのであれば、これを献上させていただきたいと思います」


そう言って取り出したのはミスリルソードなのだが、勿論ただのミスリルソードではない。この材料にはなんと、瞬の血が少し混ざっていた。そのせいでその武器はもはやミスリル製ではなくセイントミスリルという超レア素材になっていた。

それは聖剣であり、そのレア度は伝説級レジェンドである。


ディニータはその剣を手に取る。物凄い力を感じ取り、戦慄すら覚えた。そして瞬を見る。


「これはどうしたのかね…?」

「神の器のアジトを一つ潰した時にたまたま見つけまして。僕は剣を使えないので宜しければ」


しかしそれは嘘だと看破する。少年は暗にこう言っているのだ。


もし内戦が起こったらこの剣も量産しちゃおうかなー。


その証拠にとんでもない品質のシャンプーとボデイーソープをわざわざ目の前で作って見せたではないか。同じ物は作れなくともとんでもない品質の武器は作れると思った方がいい。


━━そして貴族になったら色々ご教授して欲しい、だと?

それはつまり後ろ盾になれ、そしてライオネス派に付けと言ってるようなものではないか! そしてこの剣だ。これは相当な、恐らく聖剣クラスだろう。これだけの手土産とそして妻との契約。それに頭も悪くない。これは懇意にせざるを得まい。


勿論実際はただの賄賂である。そこまで考えてなどいない。


「なるほど、君のように有望な者が貴族になるなら歓迎しようじゃないか。そのときは是非ライオネス殿下とともに挨拶に来たまえ。その時はディニータと名前で呼ぶことを許そう」


と名前で呼ぶことを許すのだった。しかもそれを王子殿下の前で言っていいということは、私は既にこの新興貴族と親しいのです、と王子にアピールすることになる。それは必然ライオネスの味方であると公言するのに等しい。


そして今回のことはディニータにとっても有意義であった。何せ叙爵のことまでは知らなかったのだ。しかしそれを知ったことでどっちに付くのが正解かハッキリしたのである。そしてライオネス派に付く理由もできた。


「ありがとうございます!」


瞬は内心ガッツポーズで頭を下げ礼を述べた。こうして瞬のまさかの行動がベルムント王国内の情勢に大きな一石を投じることとなったのである。

陞爵と叙爵がごっちゃになってたので修正しましたw


おもしろいな、続きが気になる、と感じていただけたら、広告下の評価やいいね、ブックマークをいただけると嬉しいです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨


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