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ミッドグラファーの戦い3

「…本隊も既に戦いが始まっている頃。急ごう」

「うん。行こう」


伏兵として待機していた連隊は瞬とエアリアたった2人で半壊していた。そうなるともはやこの連隊は機能することもない。後は敵本陣を叩くのみであった。





ベルムント側は苦戦していた。黒騎士部隊がきっかけで崩れ始めて来たのだが、鉱山側からの増援部隊にも苦しめられていた。

ベルムント側前衛の重装歩兵達も1人、また1人と倒れていき、陣形が崩れていく。鉄砲隊も発砲して敵の騎兵を攻撃していった。銃はパーカションロック式のマスケット銃で多少の連射は効くものであった。そのおかげで敵の騎兵にも損害が出始めているのだが、やはり黒騎士達が厄介すぎた。


黒騎士達は銃弾などものともせずその剛腕でベルムント兵を屠っていく。ウォーハンマー部隊は敵の騎兵に抑え込まれ、戦況はバルドーラに傾いていた。


しかしそこを瞬とエアリアが横から敵の本隊に攻撃を開始した。


極滅閃光衝ダークマッシャー!」


エアリアが闇のオーラを収束させ、解き放つ。その黒い閃光は敵陣の真横を通り行き射線上の敵兵を穿ち、死を振り撒く。

そして敵の足を止めると、その後続を狙って瞬が広域殲滅魔法を使用した。


氷砕の竜巻(アイシクルトルネード)!」


3つの竜巻を後陣と増援部隊のいる場所に生み出す。この竜巻により一気にバルドーラの損耗が進む。

巻き上げられ、氷漬けになって大地に叩きつけられる者もいれば氷の塊にその身を打ち砕かれる者、液状化した窒素による凍傷で動けなくなる者とたちまち各部隊を混乱に陥れる。


そして敵前衛に対しエアリアがその牙を向く。エウルードの鎌一振りで多くの騎兵の胴体を切断。無敵だった黒騎士ですらその身を真っ二つにされていく。

そしてエアリアは見た。黒騎士の中に人はいない。つまりあれは人ではなかったのだ。


ではどうして動いていたのか。その答えをエアリアはすぐに理解する。なぜなら、黒騎士の中身から賢者の石が落ちてきたからだ。

つまり黒騎士は動く鎧(リビングメイル)であり、それを動かしていたのは恐らく死霊の類だろう。つまり浄化されないために賢者の石が入っていたということになる。


そうなると浄滅魔法で対処可能になるのだが、エアリア的には自分で狩った方が早かった。何せエアリアのエウルードはまがりなりにも神器である。つまりレア度は神話級ミソロジーであり、たとえ希硬鉱石アダマンタイトであっても物によっては真っ二つに出来るスペックがあった。


エアリアが素早い動きで全ての黒騎士達を真っ二つに切り裂き、賢者の石が中から落ちると黒騎士達はその動きを止める。

そこからは形勢逆転。ベルムントの猛攻が始まり、たちまちのうちにバルドーラ軍を蹂躙していく。


瞬は敵の指揮官を狙い突っ込んでいた。敵陣は混乱を極め、既に後続部隊は半壊していた。とはいえ本隊の逃げ道は鉱山側にはなく、大平原を戻るしかない。瞬は飛翔レイウィングで一気に敵の後方まで回り込み逃げ道を塞ぐ。

着地と同時に千の光矢(サウザンドアロー)を放ち敵の足を止め、突っ込む。


敵に瞬を止められる程の者はいなかった。


聖光気セイクリッドオーラを纏った瞬は次々に敵を吹っ飛ばし、最も偉そうな男に肉薄。その偉そうな男は腰をぬかして地面にへたり込む。


「降伏して武装を解除しろ」


その指揮官には多くの返り血を浴びた瞬が悪鬼にしか見えなかった。さっきまで優勢だったのが、この少年が戦線に参加した途端自陣は崩壊。言われるまでもなく戦闘の継続など不可能なほど追い込まれていた。


「こ、降伏する! おい、降伏の軍使を出せ!」


命令された兵士達が白旗を掲げ、降伏を伝えるため馬に乗って駆けていった。音声魔法という便利なものがあり、周囲にバルドーラの降伏を伝えながら走る。


降伏の報せを聞いた兵士たちは次々に武器を捨て、馬を降りて両手を上げる。

ある兵士たちは自軍の敗北を知り、項垂れて悔しそうに地面を叩いた。

勝利を知ったベルムントは勝どきを上げ、大いに湧いた。


生き残った者は捕虜となって捕えられるが、戦は終わったので酷い仕打ちを受けることは無い。これは国際条約で決められた捕虜の取り扱いのルールである。


瞬も指揮官をロープで縛り連行。ベルムントの総大将であるライオネスの元に連れて行く。エアリアも途中で合流すると、その様子を見ていた兵士たちが口々に2人の健闘を讃える。ライオネスのいる所は当然最後尾でそこには死臭もない。


ライオネスの傍には明と水衣もいた。

しかし、返り血に汚れた瞬を見て明が青ざめる。

「ひっ!」

思わず声が漏れる。まだ血に慣れていない明である。無理もないといえばそうなのだろう。

だが、受け取る側はそうではない。


自分を見て怯え、後退る明を見て瞬の思考は崩壊する。


━━ナンデボクヲソンナ目デミルノ?

自分の手を見る。たくさん殺した手は真っ赤だった。顔を拭う。腕にベッタリと血が付着した。

また明を見る。怯えた表情は変わらない。

瞬の頭を文字が埋め尽くしていく。


ボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシボクハヒトゴロシ…!


涙がほろりと落ちる。

それは崩壊の序曲プレリュード


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッッッ!!!」


涙は止まらない。ここに来て見ないふりをしていた現実が瞬を襲った。一度溢れ出した感情は止まらない。

襲い来る吐き気に抗えず嘔吐した。

心配し、周りが声をかける。

周りの人達が自分を人殺しと罵っていた。そんなはずはないのに思い込みが幻覚を見せる。


ナンデナンデナンデ…!?


「見るなぁっ! そんな目で僕を見るなぁぁぁっっ!」


涙を溢れさせ、瞬は怯えていた。そして全力でその場から逃げ、魔法で空を飛び森の中へと向かう。


「…シュン!」


エアリアが急いで瞬を追いかけた。エアリアにとっては最悪の事態であり、最も危惧していたことが現実となる。


「バカ!」


水衣が涙を流して明の頬を張る。ライオネスとしてもせっかくの勝利に水を差され、明を叱責せざるを得なかった。


「何をしているんだお前は! 誰のために戦ったのか知らないわけじゃないだろ! 折角の勝利に水を差しおって…! 後でちゃんと話し合うんだ。いいな?」


あえて胸ぐらを掴み、皆の前で怒鳴りつけた。


「お、俺はなんてことを…」


自分が情けなくなり、顔を上げられずにいた。

大事な親友を傷つけた自分に腹が立ち、握る拳に力が入る。急いで瞬を追いかけ、明が走る。


「すいません、陛下。私も追います!」


ライオネスの返事も待たず水衣も明を追って走っていった。



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