戦争の足音
朝、瞬が目を覚ますと下着姿のエアリアがいた。そのあられもない姿にドギマギしつつ、じっくりと目に焼き付ける。
ゴクリ
思わず唾を飲む。ブラもショーツも地球の物に近いことに感動。そして2つのメロンにも感動。そして素晴らしいことにその肌は痣も傷もなく、とても戦いに身を置いている人間のものとは思えない美しさである。
キメの細かい絹ごし豆腐のようなツヤがあり、この柔肌を味わうのは自分だけでありたいと願うのだった。
「…ん、おはよう」
エアリアが目を覚ます。瞬も慌てて挨拶をしつつ後ろを向いた。さすがに本人を前にジロジロ眺めるわけにはいかない。
「…こっちを向いてくれていい」
少しして声がかかる。期待して振り返ると既に服に着替えていた。単に収納から直接着ただけである。
「…がっかり?」
「いや、そんなことないよ」
ベッドから半分身体を起こしていたため、胸の谷間が見えていた。視線でバレバレでエアリアがにこっと笑う。
「…えっち」
イタズラっぽく言われ、すっかり赤面させられる。こんな表情もするんだな、と嬉しい気持ちもあったようだが。
昼飯は宿屋で食べ、部屋を引き払う。様々な準備は既に済ましており、後は旅立つだけである。
次の目的地は水の都アクアデイル。途中でハラスという街を経由するため、野宿で1泊そこでも1泊する予定であった。
ただこの予定も瞬がまたとんでもない物を作ったため予定が崩れてしまう。
「…で、これはなに?」
「キャンピング馬車というゴーレム?」
馬車の箱は木製だが金属でしっかり補強してある。タイヤも太くゴム製でしかも四輪駆動。つまり箱そのものがゴーレムであった。この世界のサスペンションは木製の張り型なのでそちらを流用しており揺れも少ない。
そしてカモフラージュ用の馬もゴーレム。ここが最も瞬が苦労した所で、実際の馬の骨格をベースにしてある。分析と神器創造の併用によるものでこれに気づけばすぐであったが。
ただゴーレムは基本的に1つの命令しか実行できない。この場合箱ゴーレムが車輪を回し、方向を変える場合は『右に曲がれ』ではなく『タイヤを右に傾けろ』でしかもゴーレムにタイヤとは何か、という情報を予め入力しないといけなかった。なので制御クリスタルというものを作り、自分のイメージで動かせるよう改良したものである。
実はこれがかなりとんでもない代物で、認知機能を持たないゴーレムを自在に操れるという、この世界ではまだなし得ていない技術であった。
そしてこの認知機能を持たない、ということがゴーレムが戦闘で使い物にならない理由でもある。しかしこれがあればゴーレムの実戦投入も可能になってしまうのだ。
さらに中は空間拡張の魔法で広くなっており、ベッドやテーブル、ソファはもちろん風呂とトイレ用の部屋も用意されていた。わざわざこの馬車を作るために2つの魔法を作成してのである。このゴーレムの欠点は速度が普通の馬車より少し早い程度ということぐらいであった。道があまり良くないため、速度を出すのは不安しかなかったのである。
「…中が凄いことに…」
「頑張ってみた!」
エアリアは中を見て絶句している。対照的に瞬は褒めて欲しそうに瞳を輝かせていた。その様子を察し、頭を撫でる。
「…うん、これなら旅も快適だね」
「でしょ? じゃあ行こうか!」
瞬は反応に満足すると馬車に乗り命令する。すると車輪が回りだしゆっくりと動き始めた。
悪路にも関わらず大した揺れもなく馬車は走る。速度はおよそ時速15キロ程と悪路であることを考慮すれば、普通の馬車よりかなり早い。しかも休息も水も食事もいらないのだ。実質的に馬車の倍くらいは早いのではないだろうか。
ベンジスからハラスまではおよそ60km。単純計算4時間で着いてしまう計算になる。なんでこうなったか。それは単に瞬が馬車の速度とかそんなもの知らなかったからである。
「…予定よりかなり早く着いてる…」
「案外近いんだね」
「…普通歩きだと1日では厳しい。あの時間からなら馬を使っても野宿になる」
もう既にハラスの街の近くまで来ており、2人は馬車を降りた。そして馬車を無限収納にしまう。あんなものを街に入れて調べられると大変なことになりそうだったからである。
ハラスは割と大きな街で、国境付近のため国防上大きな役割を持っている。そのためそのチェックも厳しい。
2人は門番にギルド証を提示した。
「ほほう、第1等級冒険者か。強いヤツは歓迎だ。さ、中へ入りなさい」
エアリアのギルド証を確認すると門番が随分と上機嫌に対応してくれた。そして瞬もギルド証を提示する。
「ん? こんな小さいのに冒険者か。その格好は魔道士だな」
「ええ、そうですけど」
「小さいのに見上げた愛国心だ。無理はするなよ」
「愛国心? なんの話です?」
瞬もエアリアもこの国の人間ではないため、愛国心と言われても違和感しかなかった。エアリアの登録してある国籍はゾーラント王国でベルムント王国とは同盟関係にある。瞬は国籍がギルド登録したベルムント王国になっていた。
「ん? 傭兵で来たのではないのか? そうか、もしかしてそちらの女性もか?」
「…旅の途中で寄っただけ」
「うーむ、第1等級冒険者の力は欲しいな…。すまんが向こうで話だけでも」
その門番は1人に何かを伝え走らせた後、半ば強引に門近くの詰所まで連れて行く。実際に引っ張られたのは瞬だけであったが、それで付いてくるだろうと判断してのことであった。
そして一室に案内され、席に着く。そこにいたのは先程走らされていた門番とちょっと立派な鎧を身につけた中年の騎士であった。
「やぁ、無理に連れて来てすまないね。私はこの町で騎士をしているツヴェイだ。早速だが傭兵として君たちを雇いたい」
「…傭兵? 戦争でもするの?」
「まぁ、そういうことだ。隣国バルドーラとは仲が悪くてね。国境付近にミスリル鉱山があるんだが、そこを奪還したい」
「…明日発つ予定。それに私はベルムント国民じゃない」
「そこをなんとか! 最近奴らの方に黒騎士部隊というのが出来てこれが手強くてな…。このままではこの街まで攻めて来るのも時間の問題だ。そうなれば一体どれ程の領民が犠牲になるか!」
騎士は机をバンと叩き、歯を噛み締める。その手がわなわなと震え悔しさが滲み出ていた。
「…悔しいのはわかるけど私には戦う理由がない。戦力が必要なら本国に応援を頼むのが筋。私一人で覆せるものでもない」
エアリアの言っていることは正論である。エアリアは国籍上は同盟国だはあるが、一冒険者に過ぎないのだから2国の争いには無関係であり、助けてやる理由もない。
「もちろん応援は頼んである。到着は明後日の予定だ。勇者や聖女も応援に来る手はずになっている」
「え…!?」
その一言に瞬の顔色が変わる。勇者と聖女は恐らく陽神明と天寺水衣のことだろう。そう考えると瞬としては捨ておくことなどできるはずがなかった。そしてそれはエアリアも良く知っている。既に顔を合わせ、言葉も交わしたのだから。
「エアリア、ごめん。少し滞在する日にちを伸ばして欲しい」
「…うん、そうだね。少し考えさせてください」
明後日、もし明達がいたら瞬は間違いなく参戦する。親友を死なせないために彼は全てを賭けて戦うだろう。そうなったら私も腹をくくろうとエアリアは誓うのだった。
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