奪われたレプリカ
瞬が裏口から外へ出ると聖堂騎士団の騎士達が皆倒れており、ローハル大司教も腹から血を流し倒れていた。
「おや? もう来ましたか。ジルバは使い物になりませんでしたか。残念です」
「誰だお前は!」
アーシの手には木箱があり、その箱から妖しく黒光りする拳大の石が見えた。これこそがダルクアンクレプリカ。エアリアの体内にある命と魂の神器のレプリカと同じ物である。
「おやおや、教会で会ったでしょう。ま、覚えていませんよね。私はアーシ=クセイダー。神の器の手の者ですよ」
「その手に持ってる物を返せ」
「お断りします。グレーターデーモン」
アーシはグレーターデーモンを自分の周りに来させ、肉の壁を作る。そして空へと浮かんでいった。
「待て!」
「私を追いかけたらこの人達死んじゃいますよ?」
アーシに言われ周りを見る。まだ生きてる人もいるが、決して放置していい状態ではない。ローハル大司教も腹から血を流し危険な状態であった。
瞬は追うのを諦め、全員の救護に力を注いだ。
何人かは既に息絶えていたが、殆どは助けられたようだった。ローハル大司教も傷が癒え、顔に血の気が戻る。
「良かった、助けられて。でも…」
ローハル大司教が亡くなればエアリアも悲しむだろう。助けられたのは良かった。しかし肝心のレプリカは奪われており、エアリアも姿がない。
と、そこへ空感が歪み始める。元に戻るとエアリアの姿があった。
「エアリア!」
早速声をかける。エアリアは瞬に気づくと駆け寄った。
「…シュン、良かった。大司教様もご無事で良かった」
不安の種だった大司教の安否も確認でき、ホッと胸を撫で下ろす。他の騎士団員も多くは無事のようだ。
「エアリア、ごめん。僕が遅かったばっかりに…」
「…レプリカは奪われたのね」
しかしエアリアはその事で瞬を責める気はない。一緒にいれば同じ空間に閉じ込められたかもしれないからだ。それに奪われたのは聖堂騎士団の失態である。雇われてもいないのにその責を問われる筋合いもないだろう。
「…シュンは悪くない。エライネ達の責任」
「うっ、それはそうだが…」
「…シュンがいなかったらみんな死んでる。感謝こそすれ、責任を問うのは筋違い。だから問題無い」
言ってることが正しいだけにエライネも騎士達も何も言えなかった。
「まぁまぁ、エアリア。そう言うものではないよ。普通の人間がグレーターデーモンをあっさり葬り去る方がおかしいんだ」
「…ごめん、言い過ぎた」
ローハル大司教がエアリアを宥めると頭を下げ謝罪する。しかしこれではあまりに心配であった。
「まだグレーターデーモンは残っている! 掃討戦だ。気合いを入れろ!」
エライネが団員達に発破をかけ、気合いを入れる。まだまだグレーターデーモンは残っており、民衆にも被害が出ていた。
「…シュン。手分けしよう。その方が早く終わる」
「だね。そういえば戦乙女の人たちもいたよ。頑張ってた」
エアリアの提案に瞬が応じる。見ればエアリアの胸鎧もウェストガードもボロボロであった。これは攻撃のせいではなく深淵気の力に装備が耐えられなかっただけなのだが。
そんなことを知らない瞬はエアリアにもっといい装備が必要かもしれないと考えるのだった。
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