魔人
「急がないと!」
瞬は教会を目指して走っていた。教会に近づくと聖堂騎士団がグレーターデーモン達と戦いを繰り広げているのご見て取れる。 そちらは任せて走っていると、目の前に黒いエネルギー体が降り注ぎ瞬は後ろへ飛ぶ。
降り注いだ跡の床は破壊され、地面が露出している。上を見やると教会の建物の上に誰かが立っていた。
その者は教会から飛び降りるとふわりと着地する。教会の中へ入るのを邪魔するように立ち塞がった。
金髪で口にピアスをつけ、まるで何処かのヤンキーのようである。鎧もつけず、タンクトップにロングパンツなものだから余計にそう見えるかもしれない。しかも得物はどう見ても釘バットにしか見えなかった。
「お前が実験体と一緒にいたヤツか。チッ、ヤバそうだから気をつけろと言われたが随分チビじゃねぇか」
そして目が合うなり舌打ちまでして悪態をつく。
「うるさい。どけよ」
瞬がステップを踏み接近を試みると男はその釘バットで目の前を叩きつけた。石床が壊れ、勢いで土砂や石が舞い上がる。
そのまま今度は左方向に釘バットを振るう。
ステップで回り込んでいた瞬はその釘バットを聖光気で受け止め後ろへ飛ばされる。
「ご機嫌じゃねぇか。思ったより楽しめそうだ」
「その辺の雑魚とは違うみたいか」
「俺はジルバってんだ。気に入ったぜ。名乗りな」
ジルバはニヤリと笑うと釘バットを瞬に向ける。
「瞬だよ。その釘バットなんなのさ」
ジルバの持つ釘バットは木製バットに釘を打ち込んだ一般的な釘バットである。それが石床を軽く破壊し、そして瞬の聖光気を叩きつけても折れもしないのだ。誰が見ても普通では無いと思うだろう。
「こんなんでも魔法の武器なのさ。俺の闘気に耐えられるくらいのなぁ!」
ジルバの身体を黒い闘気が包む。それはあのゴブリンジョーカーが持っていたオーラに似ていた。
ジルバが釘バットを振りかぶり瞬に迫る。そして横、斜め、縦と釘バットを振り回すがそれを容易くかわす。
「ちょこまかすんな!」
「水爆」
接近したジルバから少し距離を取り魔法を発動。少し間をおいて半径1mほどの小爆発が起こる。
接近したためちょうど真後ろで爆発。ジルバは後ろを押されたように前のめりになる。そこを瞬が潜り込み腹にアッパーを食らわせた。
アッパーは闘気の障壁を突き破りジルバの腹に突き刺さる。膝をつくが、倒れずに釘バットを杖代わりにして堪えた。
「口ほどでもなかったね」
「! んだとゴラァッ! ぶっ殺す!」
石にしようとしたが急激にジルバの魔力が膨れ上がる。危険を感じ瞬が距離を取った。
ジルバの口から牙が伸び、頭から角が生える。肌は赤黒く染まり、身体も一回り大きくなっていった。
「魔人の恐ろしさを見せてやるぜ!」
「魔人…?」
「そうだ。魔王と契約し手に入れた力さ」
ジルバは勝ち誇ったような笑みを浮かべ釘バットを瞬に向ける。そしてその肥大したパワーでもって殴りかかった。
「防衛」
魔法の壁がジルバの一撃を受け止める。ヒビはない。
「しゃらくせぇ!」
さらにもう一度殴るとヒビが入り、3撃目で壁が割れる。瞬は釘バットを後ろに跳んで避けた。
そして光矢を50発ほどまとめて放つ。
その全てが着弾。光が弾ける。
しかしジルバのオーラに阻まれ効果は薄かったようだ。
「ちょっと痛かったぞ…」
「気になったんだけどさ、あんたら魔王とグルなの?」
「あ? あたりめぇだろ!」
ジルバはさらに釘バットを振り回し襲いかかる。
瞬も急速に間合いを詰め、腹に全力のフックを放つ。ジルバが釘バットを振り下ろすより早く直撃。オーラの壁を容易くぶち抜き光がジルバの背中を突き抜けた。
釘バットは振り下ろされることなく手よりこぼれ落ち、膝から崩れる。さらにラッシュをかけ、顔面を連打。
「ゴブリンジョーカーの方が強かったな…」
トドメというわけではないが、釘バットを拾い片足を破壊、へし折る。騎士団に捕えさせるにしてもこのまま引き渡して回復されると面倒になりそうだからだ。
瞬は釘バットを無限収納にしまうとジルバの捕縛を騎士団に頼み、再びエアリアを追って走り出した。
後ろから歓声が聞こえたが、応えてやる時間はない。
教会の中にもグレーターデーモンが残っていた。エアリアの居場所を知るなら騎士たちに聞く必要がある。普通に聞いても顔馴染みですらないのだから教えてくれるわけがない。そこで目についたグレーターデーモンを一体、また一体とワンパンで葬っていった。
「エアリアとローハル大司教様見ませんでしたか?」
「大司教様なら裏口から避難しているはずだ!」
助けた聖堂騎士に聞くと方向を指差して教えてくれた。助けた甲斐があったようである。
瞬は礼を言うと、足早に裏口へと向かった。
短くしすぎたのでもう一本投稿します๛ก(ー̀ωー́ก)
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