マウテアという男1〜苦手な相手〜
すいません、前回後書きで29日としていましたが、書き間違いでしたm(_ _)m
当分の間は毎日投稿させていただきます(๑•̀ㅁ•́ฅ✨
ようやくベンジスの街に到着し、門を越えて街の中へと入る。戦乙女達の護衛依頼はここで終了となり別れることとなった。
「じゃあ、あたいらは行くよ。もし困ったことがあったらいつでもいいな。暫くはこの街にいるからねぇ」
「なかなか楽しかったわよ。じゃあまたね」
「また会おうニャ。これからも仲良くするニャ」
「…うん。またね」
「色々あったけどまぁ、いい経験だったよ。じゃあまた」
それぞれが言葉と握手を交わす。なんだかんだですっかり打ち解けた仲である。再会を約束し笑い合うのだった。
その後瞬とエアリアはハクリタ商会のベンジス支店まで付き添い、無限収納に収めた荷を運びに行くのであった。
「…これで依頼完了。ギルドへ報告もあるけど、捕らえた山賊も突き出さないと」
「あ、忘れてた。ギルドに報告してから?」
完全に忘れ去っており、頭をポリポリ掻く。
「…うん。ギルドに山賊を捕らえたことも報告しないといけないから、警吏に突き出すのはその後で大丈夫」
2人はギルドへ向かって歩き出す。瞬は場所を知らないので後を付いていくだけだが。
「はい、確認しました。これで依頼は完了です。戦乙女の人たちにも聞いたのですが、山賊を全員退治してくれたそうですね。なんでもほぼ全員捕らえたと聞いたのですが」
受け付け嬢に依頼の完了報告を行うと当然のごとく山賊の話になる。全員石にして無限収納の中に収まっているのだが、なんと説明したものかと瞬は困っていた。そこまで考えてなかったのである。
「…全員石になって収納魔法で収納してある」
しかしエアリアはそんな心配何処吹く風でストレートに説明した。さすがに無限収納は秘密であるが。
「ゴルゴンかコカトリスでも飼ってるんですか…。とりあえず警吏まで職員を同行させてください」
何を言ってるのか正しく理解できていなくても自分の仕事をキッチリする受け付け嬢であった。他の職員を呼び、2人に同行させる。
「…わかった。行こうシュン」
「うん」
警吏達の詰め所はこの世界では守衛詰め所と呼ばれ、街の治安維持を担っている。捕らえられた犯罪者はここに送られ、その罪状により懲役労働が課されるのだ。簡易的で即日に終わるが裁判も行われる。
守衛詰め所は地下に牢屋があり、犯罪者を拘留するため建物は凄く大きい。ギルド職員の案内があるため話が早く、すぐに守衛への引渡しとなった。
人数が多いため守衛も人を集め、中庭の訓練所に通される。
「で、本当に収納魔法の中に収めてあるのですか…?」
守衛が疑いの目で瞬を見ている。
ゴトゴトゴトゴト…
しかし瞬が無限収納から大量の山賊の石像を吐き出すとどよめきが広がる。石化魔法もそうだが、収納されてた人数が桁違いであった。
「あの…。これ誰が石化解くんです…? これだけの人数の石化を解くのは教会に依頼しないと…」
「ああ、それは僕がやるからいいよ」
守衛が石像の量に呆気にとられていると、瞬はさっさと石化を解き始めた。解く方法が復活なので魔力効率が悪いが魔力量が桁違いの瞬には問題にならない。
「も、元に戻った〜」
「ぜ、全部白状する! だから助けてくれええええ!」
「ひいいいい!!」
石化を解くと、涙を流して喜ぶ者、瞬を見てビビりまくる者から守衛に助けを求める者まで様々であった。確実に言えることは石化の効果は凄かった、というところだろうか。
「一体何やったんですかあんたら…」
その様子にただならないものを感じずにはいられない守衛であった。
山賊を引き渡して報奨金を受け取り、2人は宿をとるため評判の宿屋に来ていた。このベンジスの街の名物料理チーズフォンデュは酪農も盛んなベンジスならではの料理である。チーズが好物のエアリアは特に美味しいと評判のこの宿屋に目をつけていたのだが、問題が発生した。
「部屋、1つしかとれない?」
「すいません、今日は来客も多くシングルは全て埋まっております。混雑が予想されましてダブル1部屋でお願いできませんでしょうか…」
ベンジスといえば温泉で、観光地としても有名である。その温泉は美容、滋養強壮、肌荒れ、浮腫にいいと評判で療養に訪れる貴族も多い。そのため空きがなかったのである。
「…わかった。それでかまわない」
「はい、ありがとうございます」
エアリアが了承しダブルを1部屋頼むとスタッフが深々と頭を下げた。
「エ、エアリア、い、いいの?」
その様子を見ていた瞬はかなり動揺している。顔はニヤケていたが。
「…信じてるから」
これを言われるとさすがに何もできない。心の中でちょっとがっくし来た瞬であった。
部屋はベッドが2つ並んでおり、後は丸テーブルに椅子が2つの簡素な部屋である。トイレ、洗面もあり、風呂は共用の大浴場。それは高級宿として十分通用するレベルであった。
「…とりあえずお昼食べたい」
という一言で2人は食堂へと赴く。
食堂は多くの人で賑わっており、店員が忙しそうに駆け回っている。少し待って席を確保すると早速名物のチーズフォンデュを2人前頼んだ。
「そういえばこの後はどうするの?」
「…ヴァサー教会に顔を出すつもり。ここの大司教様とは顔馴染みだから。予定がなければシュンも来て欲しい」
「うん、行くよ。ヴァサー教会てどんな所なの?」
この世界のことを何も知らない瞬にとっては全てが目新しいことである。特にエアリアに関係したことはなんでも知っておきたかった。
「…ヴァサー教会は冒険者にとっては恩恵を授かる以外にも、神依魔法と呼ばれるヴァサーの眷属の力を借りた魔法を習得する所。一般の人にとっては心の安寧を得るための信仰の拠り所」
端的でわかりやすい説明にふむふむと頷く。
「教会は独立した組織でもあるから聖堂騎士団と呼ばれる騎士団もいる。そこの団長も知り合い。でもここの騎士団には1人苦手な人がいる」
「苦手な人?」
こくりと頷くと少し嫌そうな顔になる。
「…有能なんだけど、やたらとモーションかけて来る。思い込みが激しくてその気は無いと言ってるのにしつこい」
「うわー、貴族の坊ちゃんか何か?」
めんどくさそうな奴キタなー、と瞬が嫌そうな顔をする。
「…領主の三男。出来れば関わりたくない」
と苦手な人の話を始める。
しかし噂をすれば影。
「エアリアさん! ベンジスに帰ってきてたのですね! このマウテア、貴方にお会いしたくて馳せ参じました」
なにやら芝居がかったセリフを吐き噂の男がやって来た。
「…耳が早すぎる。なんで宿までわかったの…」
エアリアががっくしと頭を抱え、ため息を着く。楽しい気分が台無しであった。
「なにこいつ…」
背も高く整った顔立ちで騎士鎧に身を包んだ男。見てくれは良いが、第一印象はなにやら痛そうなヤツであった。
そのマウテアが瞬に気づくと怪訝そうに見下ろす。
「む? 依頼人の方でしたかな? これは失礼を。私の名はマウテア。マウテア=フラーレン=ベンジスです。そう、何を隠そうこの私がこの、あ、美しく咲く白銀の華、エアリア=フォルティスのステディなのです」
男の評価を痛そうなヤツから唾棄すべき相手に格上げした瞬であった。
名前わかりやすすぎたw
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