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プロローグ2〜エアリアの悪夢〜

少女は夢を見ていた。

それはいつも見せられる悪夢。自分は身体の自由を奪われ、動くこともできずただ暗闇の中にいた。

━━ああ、またこの悪夢ゆめか。

少女にはこれが夢だとわかっていた。わかってはいるのだが恐怖が心を捕らえて離さず、闇に染めあげようとしている。

闇の中から異形の魔神が現れ、下卑た笑いを浮かべて少女に近寄っていく。

━━いや! 来ないで!

少女は叫ぼうと思っても声にならず、唯一動く首を振り乱して拒絶の意志を見せた。

「お前は私になる。お前はそのために生まれたのだ」

魔神がゆっくりと手を伸ばす。

━━やめて! 誰か、誰か助けて…!

どれだけ拒絶しても少女は知っている。この悪夢の終わりがどんなものかを。

いつもそうだ。最後には自分は醜い異形の魔神となり、街を破壊し、人を殺し尽くし、神をも殺すのだ。


しかし今回の夢だけは違った。

2人の間に眩いばかりの光に包まれた小柄な少年が割って入ったのだ。少年は魔神に鉄拳を食らわせて吹き飛ばすと闇が晴れ、辺り一面にお花畑が広がった。

━━ありがとう。助けてくれて。

少女が礼を言うと少年は照れたようにはにかんだ後、少女の頬に口付けをし、すーっと遠くへと離れていく。

━━待って! あなたは誰なの?

少女が手を伸ばすがその手は届かない。

代わりに少年の声が響いてきた。

「もうじき会えるから。だから、僕を見つけて」

少年は輝きを放ったまま虚空へと消えていった。



「お願い待って!」

エアリアは目を覚ますと何かを求めるように天井に手を伸ばしていた。

はーっ、息を吐き、その腕を額に乗せる。そして涙を拭うとなぜか自然と笑みがこぼれた。

エアリアが身体を起こすと長い銀髪がふわりと舞う。

そして背伸び。シャツからは2つの豊かな膨らみが主張しており、スタイルの良さを物語っていた。

エアリアはベッドから出ると鏡を覗く。涙で目が腫れてないか心配になったのだ。

だがそんなものは杞憂であった。鏡には色白の端正で、そして儚げな美少女しかいない。

むしろ紅い瞳にほんのり滲む涙は大抵の男の庇護欲を掻き立てるだろう。


今日はここベルムントを含め4つの国で勇者の召喚が行われる日である。勇者召喚が行える日は10年に1度しかない。それはこの世界の2つの月が重なる日に行われるためである。

エアリアが4つある国の中からベルムントを選んで来たのは偶然ではない。この世界最高の大賢者ゼナの導きによるものである。

着替えを終え、胸鎧と肩当てとウェストガードを取り付けると愛用の武器エウルードを手にする。

エウルードは斧槍にさらに巨大な鎌を付けた漆黒の武器で無論、ただの武器ではない。グランデスの神器の1つと聞かされ受け継いだそれは、その実用性に疑問の出る形からは想像もつかない破壊力を秘めている。

そしてそのエウルードこそがエアリアが探し求める人物を見つけるキーアイテムなのである。

「エウルード、頼むね?」

エウルードは静かに黒く輝き続けていた。


朝の第2の鐘が鳴り、エアリアは宿屋を後にする。

2つの月が重なる時間までかなりあるため、狩りに出かけたのであった。




そして2つの月が重なる時間がやってくる。






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