護衛依頼4〜お宝げっと〜
戦闘のゴタゴタを終えた後もう少し道を行くと結構開けた場所に出た。
「今日はここで野宿にしましょう」
セイルが馬車を止め、野宿することになった。
時間的には午後5時を少し回ったところだろう。空は既に薄暗くなってきたためであった。
瞬が馬の飲み水を創り4つの桶を満たすと馬達はこぞって桶に群がり水を飲み始める。
「ちょっといいかい、瞬」
「…もうおチビとは呼ばないのかい?」
エルザが声をかけると軽口を叩く。別に煽るつもりもないが、良く思ってない相手に下手に出る気もないのだ。
「いや、その、悪かったよ。本当にすまなかった」
エルザが頭を下げる。
「そう思うならもうチビ呼ばわりもうしないよね。好きでチビに生まれたわけじゃないんだから。相手の身体的特長を馬鹿にすることは、間接的に産んでくれた両親に対する侮辱でもあるんだからさ」
身体的特長というものはほぼ遺伝に依るところが大きい。だからこそ瞬はチビと馬鹿にされることを嫌う。恐らくもう二度と会うことはできないだろう大事な家族。もう親孝行もできず、育ててくれた恩を返すことすら叶わないのだ。形見もなく、あるのは心にある思いだけ。
ゆえにこそ瞬はそんな相手を嫌悪してしまうのだ。
瞬のそんな考えを感じ取り、エルザは本当に馬鹿なことをしてしまったと後悔する。
「本当にすまなかった。つまらない嫉妬だったと思うよ」
その一言を聞き、何となく事情を察する。
「そっか。もしかしてエアリアをパーティーに誘ったことある?」
「…ああ、あるね。でも私達とじゃ本気を出せなくなるからって断られたよ。それなのに今はパートナーがいる。どんな奴かと思ったら余り強そうに見えなくてね…」
言葉を選び、事情を話す。もちろんその内容がどうあれ相手を馬鹿にしていいわけではない。
だが、憧れていた相手が自分じゃない他の誰かを認めたこと。それがどれだけエルザの心を傷つけたかは理解できた。だから瞬は彼女を許す。怒ってはいたが、だからといっていちいち敵対する気もないのだから。
「正直あそこまでやれるとは思ってなかったよ。多分私達が束になっても敵わないだろうさね」
「じゃあさ、仲直りのしるしに盗賊どものお宝もらいに行かない?」
瞬はししし、と悪い顔をしていた。それを見てエルザは
「いいねぇ、話がわかるじゃないか」
と、話に乗るのだった。
みんなで集まりお宝集めの話し合いを始める。
「まぁ、とりあえずは場所の特定だよね」
というわけで山賊の頭目を無限収納から取り出し、石化を解く。
「やぁ、気分はどうかな?」
「ひ、ひぃっ!」
話しかけると恐怖に顔をひきつらせる。今度はどんな目に合わされるか不安で仕方がなかったのだ。
「アジトの場所を吐いてもらおうかねぇ。瞬は回復魔法使えるんだろ? 死なない程度なら痛めつけ放題だねぇ」
エルザが頭目の襟首を掴み要求を突きつける。瞬のことも怖かったが、エルザは歴戦の凄みがあった。
「しゃ、喋る! 喋るから勘弁してくれ!」
そして石化により完全に心をへし折られていたため、頭目は大変素直だった。
戦った場所からは動いていたが、頭目がここの山を根城にしていただけはあり場所の把握はできていた。
頭目の言った先を瞬が遠視で確認するとそのアジトは確かにあり、仲間も数人見つける。
「見つけた。まだ仲間もいたんだね」
「場所わかったニャ? お宝あったかニャ?」
ニャムが目を輝かせて期待を寄せる。
瞬はにやーっと笑みを浮かべ人差し指と親指で円を作った。
この意味を理解し、エストも目を輝かせていた。
「…じゃあこの人はもう用無し。石にしておいて」
エアリアも案外容赦がないようである。
「ま、待ってくれ! 石は、石はやめてくれ!」
頭目が青ざめ、身体を精一杯動かすが逃げられるわけもなく。腕を掴んでしばらくしてから、
「やなこった(ハート)」
パキパキパキ…
「いやーーーーっ!! 人でなしぃぃぃっっ!!」
にっこり笑顔で再び石にするのだった。加護を持ってるせいで長く触れる必要があったようである。
「さて、じゃあ誰が行く? 瞬くんは案内で必要だから確定としてあと2人くらい?」
エストはウキウキ気分である。とても行きたそうだ。
「まだ山賊も残ってるし、エストとニャムが行きな。あたいは極滅と少し話したいことがある」
エルザの提案に2人が両手を挙げて喜ぶ。
「お宝を入れる袋は大丈夫?」
「ちゃんとあるニャ」
瞬に聞かれニャムが取り出したのはそれこそ登山に使うほどの大きなサイズのリュックサックだった。これならかなり入るだろう。
「…じゃお願い」
「頼んだよ」
そして2人に見送られ、3人はお宝の回収に向かった。
「その、すまなかったね」
3人が見えなくなった後、エルザはエアリアに頭を下げる。
「…大丈夫。降格申請出したところで恥をかくのはエルザ」
「だろうね、あの強さは異常さね」
再審査試験は完全な実力勝負である。申請及び推薦した有資格者以外の教導官と一対一で戦うのだが、第1等級クラスの実力があるのに落ちるわけがなかった。
「一緒にいてどんな感じだい?」
「…私はずっと孤独だった。シュンは背中を任せられるし、いてくれるだけで助けられてる。だから大事な人」
そう話すエアリアは嬉しそうに微笑むのだった。
瞬達3人は草木を掻き分け進んでいた。道は完全に把握しており、迷うことなくアジトの見える位置まで辿り着く。
この山の中には洞窟があり、山賊はそこを根城にしていた。木の影から様子を見る。見張りは2人。中の様子を確認したときは全部で7人と多い人数ではない。
「正面突破で良くないかニャ?」
「異議なし」
「おっけー」
作戦もクソもなく力押しである。決めたと同時にニャムが駆ける。その後をエストが追随。瞬はも後ろに付く。
「な、なんだてめぇら!」
当然気づかれ驚きの声をあげる。しかしニャムがシュッとナイフを投げると見張りの右肩に命中。隙ができあがる。
「ニャンニャニャーン」
と鼻歌まじりに跳ぶと、見張りの顔に膝がめり込んだ。見張りは鼻血を吹いて倒れる。
「裂空剣!」
エストは離れた間合いから剣閃を飛ばす。エストの魔法剣の技で風属性をともなう剣閃がもう1人の見張りの右腕を切断した。血が吹き出し、怯むとニャムが接近して蹴り飛ばす。
「敵襲か!」
騒ぎを聞きつけ中の山賊達が姿を見せると、空間移動してきた瞬が次々とタッチしていく。
「な、なんだ? って、うおおおおおお?」
パキパキパキ…
石化の魔法により徐々に身体が石になっていく。
「ひいいいいぃぃぃっっっ!!」
「い、石になっていくうううぅぅぅっっっ!!」
恐怖に怯える悲鳴をあげながら石になっていく山賊達。ニャムによってぶっ飛ばされた山賊達もキッチリ石にすると、無限収納でしまっていく。
「やっぱりえげつないニャ…」
「触られたらアウトって反則よね…」
その様子にニャムとエストは開いた口が塞がらない。確かに触られたらアウトなのは強すぎる。
「いや、これ加護持ってる人だと効きにくいみたいよ? ちょっと長めに触れてないと石化しなかったし」
結局はできるのだが、実戦的ではない。
「弱点自分で喋ってるニャ。ダメニャよ?」
「知られても別に困らんよ。それよりお宝お宝」
ニャムが咎めるが、瞬は気にした様子もない。実際、知られたところで何も変わらないのは確かである。
中へ入ると山賊がまだいたが同じように石化させ、収納していく。中は所々にランタンが取り付けられており思いのほか明るいようである。
奥の方にはそんな管理でいいのか、とツッコミたくなるほど無造作に金銀財宝がまとめられていた。
「すげぇーーーー!!」
「お宝ニャーーー!!」
「きゃー、お宝よー!!」
口々に感嘆の声をあげ、戦乙女の2人は宝をリュックに詰めていく。瞬は解析を使い何か変わったものがないか探していた。すると、
神鉄鉱石の女神像
慈愛の神ラフティを象った神像。材質はかなり貴重。
「ほうほう、オリハルコンかぁ。これはもらっておこう」
そんなに大きくないので武具を作るには少ないが、何かにコーティングして使えそうだった。ラフティはヴァサーの系統の神なので溶かすのに忌避感はない。
「ねぇ、瞬…でいいかニャ?」
お宝を物色しているとニャムが瞬に後ろから話しかける。
「いいけど、どうかした?」
瞬は振り向かず物色を続けた。一気に収納すると戦乙女の取り分がなくなるので、めぼしいものだけ確保しているのだ。
「今夜一緒に見張りをしないかニャ? 2人きりで…」
耳元でニャムが甘く囁く。
もっとも、瞬はその意味を全く理解していなかったが。
「うーん、戦力だけで考えたら僕とエアリアは別々がいいのかな。でもパーティー毎に分けた方が良くない?」
単にエアリアと2人きりになりたいだけである。
「…そういうことじゃないニャよ。男と女の遊びニャ」
垂れかかり、胸を押し付ける。
ずざざざっ!!
驚いて声も出なかったが、慌てて離れる。
「いや、何を言って…!」
「お前の強さに濡れたニャ。極滅には黙ってれば大丈夫ニャ」
頬を染め、胸を強調して誘ってくる。エストはそちらには気づかず一心不乱に宝を詰め込んでいた。
「…ごめん。無理。僕が耐えられない」
以前の自分なら間違いなく応じただろうな、と思ったが知ってしまったのだ。本当に人を好きになる気持ちを。
それはバレなきゃいい、という問題ではなく。
自分がどう感じるか、という問題なのだ。
「…童貞?」
ぐさぐさっ!!
ニャムがにやーっと笑っての一言にダメージを受ける。
「上位冒険者だと一夫多妻なんて珍しくないニャよ? 極滅だって知ってるニャ。特定の1人でいいなんてお子様思考ニャ」
ニャムは更に瞬の倫理観を否定し、誘いをかけた。
特に獣人は強さを重視する。その倫理観は強い子孫を残すことに重点が置かれているため、1人でいいというのは勿体ないと受け取るのだ。
なんとも魅力的な話である。
「ごめん、僕には無理。僕のいた所は一夫一妻だから」
頭を抱え、その誘いを拒否した。
確かに男ならハーレムは憧れるが、地球人の倫理観とそして何より、カッコをつけたかったのだ。惚れた女性のために。
「ふられたニャ…。まぁ、気が変わったらいつでも声をかけてくれニャ」
残念そうに諦める。惚れたという程でもないのでまだあっさりしたものだが。
「…はいはい」
気が変わることはないだろうと思っての返事である。
瞬に後悔はない。
大事なものだけは見失いたくない。そう誓ったのだから。
その後3人はお宝を根こそぎ回収し、帰路につくのだった。
「やなこった(ハート)」
の部分て人によっては「だが断る!」とか言わせたい人もいるんだろうなw
でも瞬に言わせると違和感しかなかったからなぁ…。
おもしろいな、続きが気になる、と感じていただけたら、広告下の評価やブックマークをいただけると嬉しいです
(๑•̀ㅁ•́ฅ✨
また、もっとこうして欲しいなどの要望や感想などのコメントをいただけると励みになります꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱⋆⸜♡⸝⋆




