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護衛依頼3〜山賊の末路〜

そこからも旅は順調に進み、昼を少し回ったところで山のふもとまで辿り着く。ここでも休憩を取るため停泊することにした。

「この先からは魔物や山賊がいるそうです。ここで十分な休息をとってから行きましょう」

とのことで一堂はセイルより昼食を振る舞われ、休憩していた。昼食であれば弁当での配給が可能だったのでみんな大好き唐揚げ弁当である。


「おい、チビ。ちょっといいか」

相変わらずのチビ呼ばわりでエルザが瞬に声をかける。

「なに?」

「お前、人を殺したことはあるかい?」

ぶっきらぼうに応えると、とんでもないことを聞いてきた。当然瞬にそんな経験などあるわけもない。

「ないよ」

「だろうね。いいかい、第4等級てのは冒険者としては1人前なんだ。褒められた話じゃないかもしれないが、このクラスになると手を血で染めたことの無い奴はいない」

どうやら真面目な話らしい、と瞬はきっちり応対することにした。エルザの話は続く。

「殺らなきゃ殺られる。敵は喜んで殺しに来るし、逃がせば他の誰かが犠牲になる。綺麗ごとじゃない世界だってことをわかってほしいね」

エルザの言っていることはこの世界の常識であり正論でもある。それで咎められることもない。冒険者をやっていれば必ず通る道でもあった。

「頭では理解してるよ。でも不必要に殺す気はないし、そのための手段も持ってる。それじゃダメかい?」

「ダメだね。どんな手段か知らないが、もし山賊に会って1人も殺さないようなら私の権限で降格申請させてもらうよ」

「降格申請?」

降格と聞き、瞬が眉をひそめる。

「そうさ。あんたどうせ極滅の推薦で昇格してんだろ? その場合、教導資格のある人間は正当な理由があれば降格の申請をすることができるのさ。わかるかい?」

それはつまり、昇格を推薦したエアリアの顔に泥を塗るということである。

そう判断される、ということは教導資格を濫用した、と受け取らるのだ。実際この制度はその濫用に対する抑止力として制定された取り決めなのである。当然降格させられれば推薦人にも程度により罰則があるのだ。

エルザは見下すような目で見やると腕を組んで出方を待つ。

「殺す必要が全くないと言える状況を作ったら降格申請は通らないと解していいのかな?」

「そんな状況があるのか知らないけど、もしそうなら申請はしないさ。濫用は資格剥奪もあるからね」

それでも不敵に笑い答えるとエルザはふん、と呆れたように答えるのだった。


「…シュン、大丈夫? 私が言おうか?」

エルザとの話を終えるとエアリアが心配して話しかけてきた。瞬には秘策があるので特に気にしてはいないが。

「大丈夫。対策はバッチリだから。まだ出発まで時間あるし、遠視ウィザードアイで様子を見てみるよ」

「…その魔法便利過ぎ」

ノーリスクで敵情視察できるのだからチートである。


瞬が意識を飛ばすと、山賊が双眼鏡でこちらを遠くから監視しているのが見えた。そして続々と集まる山賊たち。1人で出向いて全員拿捕しても良かったが、さすがに許可は降りないだろうと考える。ならばとエアリアに山賊の件を伝えた。

「こっちに気づいてドンドン集まってるね。今のとこ10数人くらいだけどまだ増えそう」

「…武器は」

「弓を用意してるね」

「…防衛イージスを全員と馬車に個別展開、それから千の光矢(サウザンドアロー)の同時展開、できる?」

エアリアの要求はハッキリ言って普通の魔道士にできることを大きく逸脱している。しかし瞬にとっては容易いこと。

「できるよ」

とあっさり答えるのだった。


「…みんな集合。セイルさんもお願い」

エアリアが声をかけ、全員を集める。1番ランクの高いエアリアが小隊のリーダーを務めるのが慣例なため即座に集まる。

「なになに?」

「なんかあったニャ?」

エストとニャムが何事かと急ぎ足で駆けてくる。エルザは大体の予想はついているのだろう、落ち着いた足どりであった。

「…山賊はこちらに狙いを定めてる。弓を持ってるから作戦会議をします」

「あー、来たかー」

「ふん、予定通りさ」

エストはあまりいい顔してなかったが、エルザはやる気のようだ。楽しそうにフフンと笑う。

「…馬車と依頼人、積荷の防御はシュン1人で足りる。シュンは山賊と遭遇したら全員と馬車、依頼人に防御魔法を個別展開して魔法の矢を無数展開して待機。近づいてきた山賊を個別撃破して。他は全員山賊の討伐」

「え、それかなり無茶苦茶じゃないですか? 普通1人の術士にそんなこと不可能です」

エアリアの作戦は普通に無茶苦茶である。術の同時展開だけでも相当熟練の魔道士の技であり、しかも展開する量も桁違いであった。エストが不可能だと思うのも無理は無い。

「余裕だけど?」

しかし瞬は簡単だと言う。

「このおチビにそんな能力があるってのかい!」

にわかには信じられず、エルザも不信感が募る。

「…あるから言ってる。問題は無い。それと、近づいて来るまではシュンが魔法で監視する。負担大きいけど頑張って」

「大丈夫だよ」

「このおチビの能力を見せつけよう、って魂胆かい。確かにこれだけのことを1人でされたら、誰も殺さなくても降格申請はできないねぇ」

エルザは心底面白くなさそうに吐き捨てた。余程瞬が気に入らないようである。

「エルザ、そんなこと考えてたの?」

「ちょっと厳しすぎニャ」

そのことで仲間内からも非難の声があがるが、エルザは気にせずふん、と無視を決め込む。


そして作戦が決まり、瞬は先頭の馬車の中で遠視ウィザードアイによる監視をし、動きがあれば同乗しているエストに報告。そこからエアリア、エルザ、ニャムの順に伝達される、という段取りであった。


瞬は山賊達の動きを注視していた。かなりの数が集まっており、弓を持って散開し、馬車の包囲に入っている。

「大分いるな、30超えるかも」

その間も馬車は進む。もうじき弓の射程距離に入りそうな所で頭目だろうか、逞しい髭を蓄えた大男が手をあげると、順に弓を引き絞り始めた。


「馬車を止めて。矢が飛んでくる!」

瞬がそう伝えるとエストが馬車を飛び降りて後ろに止まるよう伝える。そしてセイルも馬車を止め始めた。

そして防衛イージスを全方位展開。降り注ぐであろう矢に備える。

「矢が来るよ! 全員備えな!」

戦乙女の面々は山賊用の備えで簡素だが木の大きな盾を馬車に積んでいた。それを構え、矢に備える。


数拍おいて大量の矢が飛んできたが、その全ては防衛イージスによって弾かれた。


それを離れた位置から様子を見ていた山賊が、全て弾かれたと頭目に伝えていた。

「なぁにぃ? 魔道士かめんどくせぇな。しゃあねぇ、半分は剣に持ち変えろ。数で圧倒するぞ」

そうして馬車を包囲するようにゾロゾロと姿を見せたのだった。


「お前らに告ぐ! ここは完全に包囲した。命が惜しければ降参しな!」

頭目が大きな声で降伏勧告をする。戦えば仲間も死ぬため、先ずは数を見せつけて降伏を迫るのが通常なのだ。

最も、女性の場合は慰みものにされるのがオチなため、女性冒険者は滅多に降伏をしない。当然それは戦乙女にも言えることであった。

口上に興味のない瞬はとりあえず全員と馬車に防衛イージスを個別展開している。これ、最後まで聞くもんなのか、等と呑気に考えていた。

「兄貴ぃ、すげぇ上玉がいますぜぇ…」

下っ端の1人がエアリアを見ていやらしい目を向ける。

「おい、そこの銀髪! お前は特に可愛いがってやる! 死にたくはないだろう? 降伏しな!」

頭目もエアリアを気に入ったようで指を差してニタニタといやらしい目を向けた。


そしてそれが瞬の逆鱗に触れてしまった。


「あ? エアリアを犯す…だと?」

直接的には言ってないが、そういうことである。

馬車の上に乗っていた瞬はギラリと頭目を睨んだ。

「ヤッていいのは僕だけだバカヤローーーー!!!」

ブチ切れて大声で吼え、聖光気セイクリッドオーラを展開。

聞いていた戦乙女達は目が点になっていた。

エアリアは驚いて顔を赤らめている。


そして空間移動テレポートの無声発動。

「消えた!?」

いきなり叫んだ少年が消えたかと思うと、頭目の横にいた男がいきなり吹っ飛ぶ。そう、いつの間にかすぐ側に馬車の上にいたはずの少年がいたのである。

「…死ね」

瞬が小さく呟いた瞬間頭目が吹っ飛び、一撃で気絶した。一応生きてはいる。死ねと言いながらも手加減は忘れない。

ぶち切れた瞬を山賊如きに止められるわけもなく、瞬間移動テレポートを繰り返してはワンパンで半殺しにしていく。

「い、いかんあたい達もいくよ!」

ぶち切れて暴れまくる瞬に呆気に取られていた面々は我に返り山賊の討伐に動いた。

瞬は逃げる山賊も許さず半殺しにしていく。そこからは山賊たちも何もできず倒れていった。全員倒れたのを確認すると、今度は瞬が瞬間移動テレポートでまだ生きてるのも死んでるのも馬車の前に集めていった。ほとんどが半殺しにされていて動けないため問題は無い。それを全員で1人ずつ縛りあげ、拘束する。

全部で重症32名。死者5名であった。


瞬も人の死体、それも惨殺死体を見るのは初めてで少し気分が悪くなったが、戦闘の興奮状態のおかげか吐かずには済んだのだった。

放っておくと死にそうな者もいたため、死なない程度に回復するよう抑え目の復活リヴァイブで傷を治した。

「で、こいつらどうすんだい?」

エルザはじとーっと瞬を見やる。エルザとしては面倒なので頭目以外殺してしまいたかったが、瞬が止めたのであった。

「た、助けてくれ! 大人しくいている! 約束する!」

山賊どもが懇願するが、それは無惨にも叶わなかい。まだ地獄は終わってないのである。

「ああ、大丈夫。死にはしないから」

にこーっと答える瞬。ただし、目は笑ってない。

「ほい」

そして山賊の1人にタッチする。


パキパキパキ…


「ぎぃいいぃいいあああぁぁぁっっっ!!!」

触れた手から石になっていき、腕、胸、腹へと石化が進行していく。その石化は5分かけてゆっくり進行していき、ご丁寧に頭が最後といういやらしさであった。

石化ペトリフィケーション

これこそが瞬が安全に山賊どもを運ぶ手段であった。

「どんどんいくよー(にっこり)」

どんどん山賊の手に足にとタッチしていく。

そして山賊どもの悲鳴が響き渡った。

「ぎゃあああっっ!! 手が! 手の感覚がああぁぁっ!」

「ひいいいぃぃぃいっ! い、石になっていくぅぅっっ!」

「こ、怖いよぉぉぉぉっっ!!」

「おがぁぁぢゃゃゃあああんんん!!」


こうして32体の恐怖に引きつった石像が完成した。

そしてそれを無限収納インベントリにしまうと、

「はい、いっちょあがり」

と仕事を終えるのだった。いかに無限収納インベントリといえど生き物は収納できない。そこで考えたのが石化だったのである。

「…あいつは怒らせない方がいいねぇ…」

「…エルザ、後で謝っときなね?」

「…お、恐ろしい奴だニャ!」

戦乙女の面々はドン引きしていた。


エアリアが瞬に駆け寄る。

「…シュン」

「終わったよー」

瞬がにこーっと微笑むと、エアリアが口を開く。

「…シュンは私を犯すの? やっていいのは僕だけだって…」

と、頬を染めて困ったように聞いてきた。

「し、しない! しないよそんな! いや、したくない訳じゃないけど、無理矢理はダメというか!」

そしてすっかりしどろもどろになった瞬は焦りながら懸命に取り繕う。

「…えっち」

その様子にエアリアは更に頬を染め、そっぽを向くのだった。


瞬はまたもキュン死にしそうになっていた。

明日も更新꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱⋆⸜♡⸝⋆


「やっていいのはry」

のとこホントは

「俺が先だバカヤロー!!!」

て書いてたけど、BREAK AGE って漫画でやってるの忘れてて直しました。

パロネタというには無理があるよなー(´・ω・`) ショボーン




おもしろいな、続きが気になる、と感じていただけたら、広告下の評価やブックマークをいただけると嬉しいです

(๑•̀ㅁ•́ฅ✨


また、もっとこうして欲しいなどの要望や感想などのコメントをいただけると励みになります꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱⋆⸜♡⸝⋆

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