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護衛依頼2〜戦乙女〜

明達と別れた後、2人はハクリタ商会に来ていた。依頼書には収納魔法があった場合報せてくれとあったからだ。ハクリタ商会は食品から雑貨、果ては武器に防具に魔法道具と幅広く取り扱っている。本店の方は2階立てで1階は食品を2階は雑貨を扱っていた。

店舗には『準備中』の札がかかっていたが、買い物の用事はないのでかまわず入る。


中へ入るとカウンターがあり、その奥に商品が木箱に入れて置いてあった。カウンターには商品と値段が書いてあり、品物を手に取って選ぶのではなく口頭で伝えて店員が集める方式らしい。盗難対策なのだろう。

「すいまーん、依頼を受けた冒険者なんですけど…」

カウンターで整理をしていた男性店員に声をかける。

「ギルド証の提示と依頼書をお願いします」

と言われたので2人はギルド証を見せ依頼書を見せた。

「だ、第1等級! 少々お待ちください」

店員は走って奥へ行くと、入れ替わるようにちょっとでっぷりしているが人の良さそうなおっさんが出てきた。

「いや、どうもどうも。私が依頼人のセイルです。ここで話すのもなんですし、奥へどうぞ。おい、お茶を頼む!」


セイルに案内され、応接室に入る。応接室には絵や石像に壺などが飾られ、観葉植物もあった。

2人は促されてソファに座ると、セイルも対面に座る。

「いや、まさか第1等級冒険者の方に受けていただけるとはありがたい話です」

「…第1等級冒険者のエアリアです」

「第4等級冒険者の瞬です」

セイルが話し始めると、自己紹介をする。

「…収納魔法があるので事前に報せに来ました」

「おお、それはありがたい。どのくらい入りますか?」

「…2人で馬車2台分」

さすがに容量無限とは言えず、過少申告する。1人1台分でもかなりの量で、普通はオーク2体も入れたら満杯で多い人でワゴン馬車1台分なのだ。

「それは凄い! それでしたら明日8時少し前にこちらへ来ていただけると有難いです。その分の報酬も上乗せしましょう」

「分かりました。では明日その時間に伺います」

セイルはその容量に驚くと、是非にと報酬の上乗せを持ちかける。それに瞬が応じ、話がまとまった。


その後2人は必要なものを買い揃え宿に戻った。

そしてまたも瞬は1人思案に耽っていた。今度の依頼は護衛依頼で山賊もいる。できるなら殺さずに確保して引き渡すべき所に引き渡せたらなぁ、などと考えていた。

降参させるのはともかく、その後連れていくにしても安全を確保しないといけない。これが最大の課題だろう。

「あ、そうだ」

瞬は1つ閃き、とある魔法を作るのであった。


次の日の朝、2人はハクリタ商会本店を訪れていた。

「いやー、助かります」

と言われ用意されたのは大量の荷物であった。そのほとんどは食品で卵も大量にある。まだ梱包技術が地球の水準にはほど遠いため、卵の輸送は収納魔法で行うのが一般的であった。ただ問題は収納魔法はヴァサー神殿で習得はできるのだが、覚えられるかどうかは資質に大きく左右される。そして使い手の少ない魔法で、使えるだけで引っ張りだこなのだ。

「えー、卵の木箱が20個、胡椒が2箱にそれから…」

とセイルが目録を読み上げ、順番に瞬が収納していく。そしてテンポが良かったせいか、2人で馬車2台分と申告したのを忘れ瞬が1人で全て収納してまった。

「おや? 1人で収納してしまいましたね…」

セイルがその収納量に驚く。

あ、しまった、と2人は顔を見合わせると、

「…シュンは元々2台分。私達の荷物は私がまとめて持ってる」

と苦しい言い訳で誤魔化す。

「そうなんですか? いやー、キャラバンの大型積載馬車1台分なんて聞いたことないですよ。ワゴン馬車で換算すると3、4倍くらいですか。凄いですね」

セイルの説明に完全に固まる2人。そもそもワゴン馬車の積載量は1、2tだがキャラバンの大型積載馬車は6tである。瞬は当然そんなことは知らないし、エアリアも元々収納魔法は持っていなかったため、感覚がわからなかったのだ。

なんでこんなに用意していたかというと、ダメ元である。何せ馬車2台分、といっても馬車にも種類があるのだ。種類により積載量は異なる。言い方があまりにも曖昧で気になり、試しにと用意したのだった。

「口外禁止でお願いします…」

「追加報酬は純益の1割相当、金貨5枚でどうでしょう?」

返事をせず値段交渉に入られ、相場より安い金額を提示される。相場は想定純益の2割だから半分である。そして金貨5枚も恐らく過少申告であろう。

「…それでいい」

わかってはいたが、ゴネても無駄と判断し条件を呑む。この容量だと国から声がかかる可能性があり、それは避けたかったのだ。ならば相当安い条件を呑み、貸しにした方が良いと考えたのである。商人は信頼が命なのだからここまで譲歩すれば滅多なことはないだろう。

「…ごめんエアリア」

やらかしてしまい、しょげる瞬であった。



集合の時間になり、セイルは部下のステネを引き連れキャラバン用の大型積載馬車を出す。集合場所へと向かうとそこには3人の女性冒険者が待っていた。

「お待たせしました『戦乙女』の皆さん」

セイルが彼女たちに声をかける。

「いや、時間通りだ。それにしてもまさか極滅がいるとはね」

3人の中でも一回り大柄な女性がエアリアを見て、フッと笑う。

「…エアリアです。よろしく。この子はパートナーのシュン」

「第4等級冒険者の瞬です。よろしくお願いします」

パートナーとして紹介され、瞬も自己紹介をする。

「あたいはエルザ。戦乙女のリーダーで第3等級だ。極滅にパートナーができてなかなか強いと聞いていたが、こんなチビ助とはね」

エルザはそのチビ助を見下ろすと、チッと舌打ちする。

その舌打ちでちょっとピキッと青筋が立ったようだ。

「私はエスト。第3等級よ。よろしくね」

エストはポニーテールの魔法剣士である。パッと見は普通の剣士なのだが、その剣には魔石を精製した魔晶石が埋め込まれていた。

「ニャムはニャムだニャ。第4等級ニャ」

ニャムは猫の獣人である。獣人と言っても人の顔に猫耳と猫のヒゲ、鼻が付いて尻尾があるくらいで他は人間とそう変わりない。そして動きやすさ重視の軽装でヘソも出していた。

「まぁ、明日までの付き合いだ。仲良くしようじゃないの」

エルザがフン、と笑うが目が笑っていない。

「では参りましょうか」

セイルが馬車を走らせると、エアリアと瞬が先頭のセイルの馬車に乗り、戦乙女の面々は後ろのステネの馬車に乗ってベンジスへと向かった。


しばらくは街道で見晴らしのいい平原が続く。こういう平原はあまり魔物の類は出にくい。なぜなら見晴らしがいいため隠れる場所がなく、狩りには向かないからである。餌のない所には住み着かないのだ。それでもたまに群れからはぐれたオークやゴブリンくらいはいることもあり、冒険者の肥やしとなる。


旅は順調そのもので2時間程進むと休憩に入る。馬も動物であるため、休息は必要なのだ。

しかしそこで問題が発生する。

「なにぃ? 水を載せるのを忘れてただぁ!?」

その報告にセイルがステネを叱責する。それも当然で、馬というのは人間以上に多くの水を必要とする。ましてや馬車を引く馬は全部で8頭もいるのだ。途中水飲み場があればいいが、この道程にはそれがなかった。

「す、すいません! ついうっかり…」

ステネが平謝りするが、それで事態が改善するわけもなく。

そしてセイルも怒ったところでどうにもならないのだが、怒らずにはいられない。

そこへ助け舟を出したのが瞬だった。

「あの、水なら僕がなんとかできますよ」

水を生み出す魔法が精霊魔法にあるのだが、瞬も同じことができる。神器創造のスキルを使えば、たとえ空気中の水分が足りなくても大量に作れるのである。

「おお、それはありがたい」

セイルの顔に笑顔が戻る。

そして瞬の逆襲が始まった。

「ベンジスに着くまでの水を無制限で提供しますよ。ところでセイルさん。収納した分の追加報酬っていくらでしたっけ?」

「え、金貨5ま…」

書面を既に交わしているので本来なら横紙破りである。しかしここはゴネるチャンスであった。

「相場っていくらでしたっけ?」

笑顔の圧力。

「…金貨8枚で」

ここで戻る損失を計算すれば仕方がない、と承諾するセイルであった。それでも相場より安いが、あまり悪どいこともできまい。

書面の5に斜線を引いて消し、拇印を押して8の数字が書き込まれるのを確認し、瞬は満足するのだった。


早速馬の水飲み用の桶に水は張ると、美味しそうに馬が飲み始める。

「…シュン、私も水」

エアリアも自分の水は用意していたが、瞬の作る水が飲んでみたくなった。快く引き受け木のコップに水を入れる。しかも氷のおまけ付きであった。

神器創造にかかれば水の状態変化くらいは難しくないのだ。相応の魔力を使うが、瞬にしてみれば微々たるものである。

「…これ、なんか魔法かかってない?」

1口飲むと身体から疲れが抜けていくのを感じ、創った当人に確認。しかし当人にそんな覚えは無い。

ポイントもあるし、と瞬は解析アナライズの魔法を創って確認してみることにした。


祝福の水 品質 極上

効能 疲労回復 怪我の治癒(小) 免疫向上 万病緩和

鎮痛 肌荒れの改善と美肌効果 内蔵機能回復


「ブフォ!」

その結果が脳裏に浮かび思わず吹き出す。

「…何創ったの?」

と聞かれ、その効果を耳打ち。

エアリアは頭を抱えるのだった。


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(๑•̀ㅁ•́ฅ✨


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