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プロローグ1〜須王瞬〜

「なにごと?」

魔法陣の光に包まれたかと思うと、瞬達は見知らぬ場所に出ていた。

自分たちの周りには神官らしき人たちと鎧を着込んだ騎士たちがいて瞬たちの動向を見守っている。

その騎士たちが道を空けると豪奢な衣装に身を包んだ白人が姿を現した。

「ようこそ異世界へ。勇者たちよ」

おいおいまさかの異世界召喚かよ、と瞬は何が起きたのか此処に至った経緯を思い出すことにした。



「悪いけど君の気持ちには応えられない。ごめんなさい」

放課後の校舎の裏野次馬たちが見守る中、今日も瞬は撃沈していた。

「どうしてか、聞いていい?」

瞬は上目遣いで相手を見る。上目遣いになったのは単に瞬がその相手より背が低いだけの話である。身長156センチ。15歳の男子としてはかなり低い方であろう。そのまだあどけなさの残る面持ちだが、そのブレザーの下には鍛え抜かれ絞り込まれた肉体が隠されていた。

「君、私で5人目だよね。入学して2ヶ月で5人。ちょっと多くないかなぁ? そんな移り気な人を恋人になんて選ベないよ」

「う、それはそうだけど……」

その指摘はもっともであった。瞬は何も言い返せずにうつむくばかりである。

「それに、慣れたのかな? あまり悔しそうじゃないよね。軽いんだよ、君の言葉は。きっとまだホントの恋を知らないんだね。いつかそういう恋ができることを願ってるよ。バイバイ」

図星だった。その指摘に瞬は何も言えず、ただ相手がきびすを返して立ち去るのを見ているしかできなかったのだ。

振られたことよりそちらの方が痛かったに違いない。


「あー、また振られちゃったなー」

教室に戻り、瞬は親友の明に愚痴る。

親友の名は陽神ひのかみ明。背もそこそこ高く、顔も面長のイケメンであり、成績も良い優等生である。当然性格もしっかりしており、中学のとき生徒会に所属していたほどであった。

「あの子の言ってたことはあたってると思うぞ」

呆れたように溜息をつき明が告げる。

「それは身に染みた……」

「ま、いつか瞬にも俺みたいに運命の相手と出会える日が来るさ」

明がふっ、と笑って胸を逸らす。

「燃えるような恋か。そんな漫画みたいな恋してみたいよ」

机に突っ伏しながら瞬はスマホを弄る。まぁ、いつものやりとりであった。

「あー、また宮松から果たし状来てるわ」

瞬がMINEを開くと宮松からのメッセージにボヤく。

瞬と宮松はいわゆる犬猿の仲、というよりは一方的に宮松が突っかかって来ており、MINEの連絡先を調べて辿り着くほどの執着を見せていた。

「お前、ブロックしろとあれほど」

「そしたら家まで押しかけてきたことがあったんだよ」

そう。瞬はブロックしたくてもできないのである。宮松の執着心は強く、家も当然のように知られている。以前に乗り込まれたときなど瞬はマジでキレかけたのだ。

しかしわざわざケンカを吹っかけては一方的にボコられて終わる。それが宮松クオリティでもあった。

「17時に河川敷かー。めんどくさいなぁ」

フラれた感傷ぐらいには浸らせろと言わんばかりに瞬がため息を着く。

「やりすぎるなよ…?」

全くもう…、と頭を抱えて溜息をついた。

「わかってるよ!」

瞬は一言残すと膨れっ面でブレザーを翻し、駆けて行った。

「一応止めに行くか……」

明はスマホを取り出して電話をかけた。



「ふん、良く逃げずに来たな。待ってたぜ」

宮松(かい)は怒気を孕んだ様子でゆっくりと立ち上がる。

その180センチを超える巨躯と真っ赤に染めた髪は見るものに恐れさえ抱かせるだろう。目つきも悪く、普段歩くだけでも人が勝手に避けていくほどであった。しかし瞬は全く気にした風でもなくのほほんとしている。

河川敷の堤防の上では野次馬として凱の仲間がたむろしており、野次を飛ばしていた。

「いい加減しつこいぞ宮松。勝てないんだからケンカ売るな」

瞬はうんざりした面持ちで相手を見上げる。宮松との距離はほんの数メートル。始めようと思えばすぐに始まる距離だ。

「うっせー全く、チビのくせしやがって。ボクシングやってるからってチョーシこいてんじゃねぇ!」

宮松が奥歯を噛み締め睨みつける。

「いや、僕がボクシング覚えたのは君が僕をいじめのターゲットにしたからだろ」

そう。宮松は中学1年の頃小さいから、という理由で瞬をターゲットにしていた。しかし瞬は殴られても蹴られてもへこたれず睨み返してくる。それが気に入らずエスカレートし、大怪我をさせたこともあった。しかしある時から殴り返して来るようになり、遂には勝てなくなったのだ。

格下だと思っていた相手に負けたことは、宮松を大いに苛立たせた。それからは何度挑んでも返り討ちにされ、ボクシングを習い始めたのを知ったのはその後だったのである。


「宮松ー、1分くらいもてよー」

「暴れん坊チワワは手加減してやれよー」

「なんだよ暴れん坊チワワって」

野次馬たちの笑い声が響く。

むろん、暴れん坊チワワとは瞬のことである。最初は狂犬と呼ばれていたが、小柄なのでチワワでよくね?

となって付いたあだ名であった。勿論笑いの種としてだが。

「うるせー外野は黙ってろ!」

「チワワ言うな!」

2人して外野に文句を言うと野次がピタリと止まった。



「いくぞオラァッ!」

宮松が雄叫びをあげて瞬に殴りかかる。

大きく右手を振り上げるが瞬にとっては無駄にモーションの大きいテレフォンパンチに過ぎなかった。

瞬はひょいっとパンチをしゃがんでかわすと、楽に懐に潜り込んでショートアッパーを宮末のどてっぱらに叩き込む。

「……ぐぇっ!」

瞬のパンチ力はもし精密な機械で本気で測れば160キロには達するのではないだろうか。それゆえ多少の手心を加えても宮松の膝を付かせるくらいわけなかった。

そして膝を付けば顔の位置が下がる。


その後は一瞬であった。


瞬の多少手加減した右フック1発で宮松が地べたに這いつくばったのである。

「まーた暴れん坊チワワの勝ちかよ」

「宮松ダッセー」

「30秒も経ってねーし」

またあっさりとケリがつき、外野の嘲笑が響き渡った。

「この野郎また手加減しやがって…。ちくしょう…」

宮松は地べたに伏しながらも瞬を睨みつけていた。

そしてその辺に生えていた草をブチブチとむしり取ると、握ったまま地面に叩きつける。

「本気なんて出せるわけないだろう…」

瞬が憐れむように宮松を見下ろす。追撃はしない。勝負はついたのだから。



「2人ともやめるんだ!」

と、そこへ明が河川敷へ降りてきて止めに入る。彼女の天寺水衣あまてらすいいも一緒である。

天寺水衣は中学時代の瞬と明のクラスメイトであり、学級委員長でもあった。強気な性格で目力も強く、背も瞬より7、8センチは高い。セミロングで整った顔立ちなため男子からも人気があったのだが瞬のストライクゾーンからは外れている。

関係性としては明も含め小学生からの腐れ縁であろうか。

「もう! 2人ともやめなさいよね! 瞬もいちいち相手にしないの!」

物怖じせずに水衣が2人に制止をかける。

「うげっ、水衣も連れてきたのか」

瞬は水衣の顔を見て心底嫌そうな顔をした。水衣の説教はとても長い。以前など2時間正座させられ、こんこんと説教されて以来大の苦手なのである。

「うげっとはなによ失礼ね!」

ズカズカと肩を怒らせて瞬に歩み寄り、頭にゲンコツを食らわせると今度は宮松を指さす。

かなり痛かったのか瞬は頭を抱えてうずくまっていた。

「あと宮松! あんたも瞬にケンカ売るな! どうせ勝てないくせに!」

「んだと天寺てめぇ!」

頭にきた宮松がなんとか立ち上がり、天寺に掴みかかる。

「ふん!」

しかしみぞおちへの正拳突き一発で宮松は再び膝をついて崩れ落ちる。

そう。天寺は強いのである。空手初段をとるほどに。

瞬の場合は後が怖いから避けないというのもあるが。


「ヒュー! 天寺ちゃんかっけー!」

「あー、俺天寺に賭けりゃ良かったわ」

「あん?」

はやし立てる野次馬どもの声に水衣が睨みを利かすと一発で静かになった。


と、そこへ急に瞬や明、宮松に水衣を巻き込んで魔法陣が生まれ光を放った。

「え? なに?」

「おおおおお?」

「こ、これは……?」

「おいおいおいおいおい!」

4人が口々に驚きの声をあげたかと思うと、魔法陣は4人を飲み込んで虚空へと消えていった。

「なにが起こったんだ一体……?」

「さぁ……?」

取り残された野次馬達は何が起きたのか理解できず、ただ呆然とそこに佇んでいるだけであった。

リメイクしたら別物になりましたw

プロローグが長いので3つに分けますw

時間差投稿で3本…出せたら出します。

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