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ヲタッキーズ119 SF作家のアキバ事件簿

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第119話「SF作家のアキバ事件簿」。さて、今回はスーパーヒロインの他殺体が街路樹に引っかかって発見されます。


捜査を進めるキレ者SF作家とキレイ目スーパーヒロインの前に、東秋葉原の地下カジノに巣食うロシアンマフィアの存在が浮上して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 盗まれた死体


万世橋警察署。僕の新作"最後のヲタッキーズ"プロモビデオのカメラクルーが来てる。

今どきレアなロン毛のカメラマンが、メイド服にレオタード系コスプレのモデルを煽る。


「セクシーに頼むよ!いいね、いいね!…右の君、ソコでテリィたんの股間に手を伸ばして…そう!掴み取る感じ!」←


彼女達はモデルで、スーパーヒロインではない。

モノホンのムーンライトセレナーダーはコチラ。


インタビュー受けてるw


「人気SF作家、世界のテリィたん。彼が新作のためにリサーチしたのが彼女、ムーンライトセレナーダー。ねぇムーンライト。"最後のヲタッキーズ"主役のサンシャインコンチェルターのインスピレーションとなった御感想は?」

「テリィ様のお力になれて、ヲタッキーズ一同、光栄に思いますわ」

「ヲタク心理に精通したテリィたんの妄想が、何度も"リアルの裂け目"に絡む事件の解決につながったとか?」


ニコやかにインタビューを受けていたムーンライトセレナーダーだが、急に笑顔が強張りインタビュアーを睨みつけるw


「そんなコト、誰に聞いたの?」

「SATOのレイカ司令官」

「ちょっと失礼」


インタビュアーに背を向けスマホを抜く。


「レイカ。内密にお話し出来る?」

「え?後でね。今、人生補完委員会だから」

「なう!」


レイカは溜め息をつき、会議室の外へ出るw


「ムーンライトセレナーダー。取材には協力する約束だったわょね?」

「取り消すわ」

「なぜ?」


ムーンライトセレナーダーは、まくし立てる。


「ストリッパーみたいなコスプレ女や作り微笑のインタビューには我慢スルわ。けど、テリィ様の妄想が事件解決に役立ったですって?」

「事実でしょ?」

「トンデモない!」


慌てて、レイカは子供に諭す口調にシフトだ←


「ねぇ先月まで秘密組織だったSATOがweb記事になるなんて、滅多にないコトょ。とにかく!この件は首相官邸も気合いが入ってルンだから協力して。わかった?」

「…わかりました」

「全ては来年度の予算獲得のためだから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南秋葉原条約機構(SATO)はアキバに開いた"リアルの裂け目"の脅威に対抗スル組織だが、今ではその存在は公表されている。

僕の推しムーンライトセレナーダーが率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"は、SATO傘下の民間武装会社(PMC)だ。


万世橋(アキバポリス)のギャレー。


「あのカメラマン、カッコいい。眼福。取材って良いわぁ」

「姉様は、あのコスプレしないの?」

「チップもらってもお断り。レオタードもヤメたいのに」


フテくされるムーンライトセレナーダーを必死?にナダめるヲタッキーズ妖精担当のエアリとロケットガールのマリレ。


この最悪タイミングで僕が顔を出す。


「お邪魔…だね?」

「あ、テリィたん。エアリ、私達そろそろアレょね?」

「え。アレ?…あ、そうそう。アレだったわ。失礼」


マリレに目配せされ、慌てて席をハズすマリレ。


「ムーンライトセレナーダー!この取材は、僕の意見じゃナイんだ。官邸筋から良い広報活動だと逝われて、つい引き受けちゃったンだょ」

「別に結構です。テリィ様」

「ホント?」


もちろんホントのハズがナイ。


「テリィ様の取材はドーでも良いと申し上げてるのです。もうキワどいコスプレヒロイン達のトコロへお戻りになれば?ソレに"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"のアンカーパースンだか何だか知らないけど、何ょ腕ナンか組んじゃって」

「ソンなコトを怒ってるのか?僕は、てっきりお母さんのコトかと。アレは再調査したら、発見があって…」

「関係ナイわ。そのコトはもう忘れました。さぁ取材をお続けになれば?何ょキワどい(以下同文w)…」


ソコへ今度はエアリが顔を出す。


「ダメょ姉様。神田松富町で死体発見。"blood type BLUE"。スーパーヒロインみたい」

「ごめんなさいね、せっかくの取材だったのに」

「LUCKY!テリィたんの活躍をナマで見られるわ。読者にもリアルに伝えられるわ!」


ムーンライトセレナーダーの精一杯の皮肉に全く気づかず、指をパチンと鳴らして喜ぶ巨乳アンカーパースン。


「読者のみなさんをガッカリさせたくないわね」


スマホ画面の中では、レイカ司令官が腕組みをしているw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ムーンライトセレナーダー。少し話さないか?」

「結構です」

「どうすれば許してくれる?」


御機嫌ナナメだ。非は僕にアル。


「ほっといてください」

「そうしようと思ったけど無理だった。ポニーでも買ってあげようか?」

「テリィ様。現場です。もっと集中して」


神田松富町は、東を山手線に挟まれ、西は中央通り、北は蔵前橋通りに囲まれた古い街並みだ。

市場時代の秋葉原の面影を残す中小のビル街で、その街路樹に…女の死体が引っかかっているw


「スーパーヒロインが降って来た…あら?テリィたんも来たの?何で?」


余計なお世話だ。高所作業車に乗って鑑識と一緒に検視してるのは、万世橋(アキバポリス)のラギィ警部←


「今、テリィ様とは喧嘩中なの!で、どんな感じ?」

「どんなも何も…枝はバストを突くし、ヒップにはライトが当たってる。もぉ最悪ょ…テリィたん!下から見るな!降りたらビンタょ!」

「そりゃ楽しみだ」


ラギィとは彼女が前任地で"新橋鮫"とか呼ばれてた頃からの付き合いだ。軽口も叩ける。


「腐女子。30代後半。枝の後方にある、あの低いビルの屋上から飛んだ。"blood type BLUE"だけど"飛ぶ系"のスーパーヒロインではなかったようね。ハイ、これ!」


ラギィが何かをポーンと投げて寄越す。おサイフだw


「…お財布に入ってたIDに拠ると、名前はジョナ・キレン。保険会社勤務。後は…クリーニング券とクレジットカード」

「これって自殺?」

「自殺じゃない!」


後から追いかけて来た巨乳キャスターが発した疑問に、僕とムーンライトセレナーダーは異口同音←


「な、何なの?この2人…でも、なぜ?」

「死ぬつもりなら、あんな低いビルは選ばない。ソレに木を避け、コンクリート目掛けて飛ぶハズだ。ソレに木に引っかかってる角度からして恐らく突き落とされてる」

「テリィたん、スゴい!だとしたら、死因は何かしら」


グッと詰まる僕を"天の声"が救う。


「絞殺ょ。気管が潰されてる。索痕は無し」


頭上?で検視中のラギィからの報告だ。


「索痕とは、ロープの痕のコトだ。索痕がナイ場合は、手で締められたってコトになる」

「スゴーい。テリィたんが犯罪捜査に引っ張りダコになるハズね!」

「いやぁソレほどでも。あ、推すなょコラ」


グリグリ胸を押し付けて来る巨乳キャスターw


「テリィ様は、ホントに優秀なので、その才能を現場でロスするワケには逝かナイわ。テリィ様、ラギィ警部に御一緒して遺体を検視局に置いて来てください。ソコで何か見つかるかもしれません」

「え。ムーンライトセレナーダー、僕は現場の方が活躍出来ると思うけど」

「ソレは気のせいです。後は目撃者を探したりスルつまらない聞き込み仕事ばかりですので」


僕はムーンライトセレナーダーの耳元でささやく。


「わかった。でも、ポニーは考えといて」


そして、巨乳のキャスターには…


「さぁ君も一緒に逝こう、死体安置所へ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「私、死体と同じ車に乗るの?」


スーパーヒロインの死体を載せたストレッチャーが前を通り過ぎた時、巨乳キャスターのエマリが大きな胸を震わせる。


「大丈夫。貴女は助手席に乗りなさい」

「え。良いの?」

「私達は死体に慣れてるから。ね、テリィたん?」


ラギィ警部がマスコミに優しさアピールしながら、僕には射るような鋭い眼差しを向ける。

ウムを逝わさズ、神田消防(アキバファイア)の救急車の後部に乗せられて、死体を挟んでラギィと向き合う。


「最近のメディアは本質的にパパラッチだな。特に、あの巨乳娘は…」

「話しかけないで!ムーンライトセレナーダーから全部聞いてルンだから」

「…えっと、ドッチの話かな?」


一瞬でラギィの目が三角にw


「ドッチって?!あのね、テリィたん。彼女は3年も母親の捜査に費やした。やっと忘れられると思ったのに…」

「(何だソッチかw)でも、新発見があった」

「新発見?」


彼女の秘密を知る者は限られてる。何も知らないラギィに、彼女はどーゆー話をしたのだろう。


「ラギィ、彼女からは何も聞いてないのか?彼女の母親と同時期に同様の殺人が3件起きてる。1件目は母親の元生徒。2件目は事務員。3件目はNPOの弁護士だ」

「え。検事はソレを見逃したの?まさか、今、次長検事やってるミクス?テリィたんの元カノの」

「あのな。彼女は、当時まだ学生(で、渋谷の裏で僕と同棲w)だょ!因みに、その検事は4年前に死亡。だから、とりあえずムーンライトセレナーダーには話したンだ」


ラギィは死体の上に身を乗り出す。


「で、彼女はなんと?」

「出禁だってw」

「まぁ」


その瞬間、凄まじい衝撃!救急車はホトンド横倒しになり、激しくバウンド。後部ドアが荒々しく開けられるて…何と!


迷彩服に覆面の女達!全員が短機関銃(MP-5)で武装←


動くな(don't move)!」

「お前とお前、死体を下ろせ。早くしろ!どーせ死んでる」

「おっと、お前らは動くな」


顔面をぶつけて血塗れのラギィと、何ともないけど戦闘能力がゼロの僕は同時にホールドアップ。

手下?の迷彩服の女達がワゴンの後部座席に死体を手荒く押し込んで飛び乗る。走り去るワゴン。


僕とラギィは顔を見合わせるw


第2章 帰って来た死体


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「テリィ様は大丈夫?脳損傷は?」

「アルとしてもパーティのし過ぎね。あと心臓に毛が生えてたわ。ムーンライトセレナーダー、私の方が重傷ナンだけど」

「助手席のエマリは?」


誰も気にかけてナイようなので"仕方なく"気にかける僕←


「あの巨乳キャスターの子ですか?調書だけとって、とりあえず帰したわ。あと、現場から去った黒いワゴンを緊急手配。襲撃現場と建物の屋上も捜査中ょ」

「ラギィ。一体誰が死体を欲しがるの?」

「数え上げればキリがナイ。例えば、臓器売買の闇業者。解剖実習が赤点だった医学生。フランケンシュタインを製作中のマッドサイエンティスト」


スラスラ答える僕。ラギィのヒネリのない補足←


「あの死体に、何かの証拠を残した犯人とか?」

「展開が単調!被害者は、実はウクライダのスパイで、高機動ロケット砲システムの射程を延伸、モスクワを狙える極秘ソフトの入ったマイクロチップを死ぬ間際に飲み込んだ。極秘の内に、その回収を狙うCIAとSVR。今、アキバの地下で血で血を洗う暗闘が始まる…ココまで詰めないと、今どきの編集者は振り向かないょ」

「SF作家のみならズ街の軍事評論家でもあるテリィ様のリアリティあふれる仮説には、いつも感心しますが、取材は終わったので、あのコスプレ女達がポールダンスとか踊り出す前に連れて帰っていただけます?」


ヒネリはナイが執拗にレッドカードを切るムーンライトセレナーダー。僕は、敢然と抗議だ。


「ダメだょムーンライトセレナーダー。捜査はコレから、お楽しみもコレからだ。何しろ僕は"目撃者"だからね!そーだょな?レイカ司令官」


こんなコトもあろうかと捜査会議にリモートで呼んでおいたレイカに声をかける。


「本件は、被害者が"blood type BLUE"で"リアルの裂け目"関連なので、我々SATOと万世橋警察署との合同捜査になるわ。よろしくね、ラギィ警部」


官邸直属機関の司令官からの要請に渋々うなずくラギィ…とムーンライトセレナーダー。


「わかりました、テリィ様。でも、約束して。本件が終わったら、しばらく、出禁です」

了解(ROG)した。だが、警告しとく。ムーンライトセレナーダー、君は必ず心変わりスル」

「絶対に変わりません、テリィ様」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田山本町は地下アイドル通り(旧田代通り)と山手線に挟まれた界隈だ。再開発から取り残された古い木造家屋が並ぶ。

死んだスーパーヒロイン、ジョナの一家は神田山本町のアパートに住んでいる。ムーンライトセレナーダーと訪問スル。


「キレンさん?ヲタッキーズです。奥様のコトで」

「ムーンライトセレナーダー?ホントにメイド服にレオタードなんだな。スーパーヒロインって本来こーゆーコスプレなのか。妻は普通の会社員だったから」

「お気の毒です」


応対に出たのは主"夫"のミドウ・キレン。実直そう。


「何時間か前まで、ココにいたジョナが死ぬなんて」

「彼女は、なぜあの場所に?何か当ては?」

「ワカラナイ。会社は神田五軒町だから、現場から遠く離れてる。通勤路でもナイ」


悲しげに首を振る。


「ココを出たのは?」

「仕事をして来ると言って6時頃出て行った。出張から戻ったばかりで、書類仕事をしなくちゃと言ってオフィスに戻った。何時間かで帰ると言ったのに」

「当日はご出張だったの?」


ソレは初耳だ。日曜日なのに。


「研修でシンガポールに行ってた。1泊2日で2日間」

「最近気になる事はありましたか?奥様は、スーパーヒロインだったそうですが?」

「弱いテレパスだった。ただ、人の心を読んでいると思われるのが嫌いで、彼女は、スーパーヒロインに覚醒した事を隠していた。最近は残業が多かった。世界的なエネルギー危機の中で、昨年は日本法人の半数が解雇されてる。必死に働いてたんだと思う」


実は"リアルの裂け目"が開いて以来アキバでは腐女子がスーパーヒロインに覚醒スル現象が相次いで起きているのだ。


ソレにしても外資はタイヘンだ。同情はスルが…


「ホントに残業だったのかな?」

「おい!どーゆー意味だ?浮気を疑ってるのか?妻は、毎晩ココに帰って子供達を抱きしめてた。駆け寄る子供達をな。浮気を疑うより、なぜ死んだのかを捜査してくれ!」

「深夜に電話とか?」

「テリィ様!」


今度はムーンライトセレナーダーに睨まれるw


「待て。そういえば…確かにあったな。妻が解雇したハバス・トックとか言うオバサンが深夜に電話で怒鳴り込んで来たコトがあった。きっと金が必要だったんだろう。スマホを切れば良いのに、妻は無視出来ないようだった」

「ソレでお金を出したの?」

「いいや。金を渡してもハバスの為にはナラナイと渡さなかった。ハバスが自分で何とかすべき問題だと…なぁ妻は?私の妻は何処ナンだ?さよならを言いたい」


顔を見合わせる僕とムーンライトセレナーダーw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


目の前でピシャリとドアが閉められるw


「死体は盗まれました、と正直に言っただけなのに!」

「まぁ当然ですね。しかし、良い仕事に良い家族。なぜあんな事件になったのかしら…エアリ?ハバス・トックって言うオバサンだけど、ちょっち調べてくれる?…え。もう捜査本部に連れて来た?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


史上最年少で首相官邸の最高顧問となった超天才ルイナのラボは、主に警備上の都合からSATO司令部に併設している。


「テリィたん、大丈夫だった?」

「え。何で?」

「覆面の死体泥棒が現れたって…何度もメールしたのょ!」


ルイナはヲタッキーズの顧問も兼ねている。因みに彼女は車椅子にゴスロリがトレードマークだ。


「ごめん。スマホの電源を切ってた。でも、死体泥棒のコトは何で知ったの?」

「ムーンライトセレナーダーが教えてくれた」

「そっか」


ココでも先回りされてるw


「ムーンライトセレナーダーがテリィたんの無事を知らせてくれたの。で、彼女は許してくれたの?」

「いや。でも、事件には同行しても良いって」

「ソレは…進歩ね」


何処か寂しげな車椅子の超天才←


「進歩ドコロか大チャンス到来さ。彼女が築く心の壁に、僕はドアを作ってコジ開ける。梯子をかけるか穴を掘るでもOKだ」

「作戦は?」

「"僕らしく"さ」


フト遠い目になるルイナ。


「そう。で、プランBは?」

「テリィたん!女ばかりの死体強盗団に襲われたんだって?ソコに元カノとかいなかった?」

「おいおい。影でスピアの"元カノ会"が動いてルンじゃナイだろーな?」


ルイナの相棒でハッカーのスピアだ。彼女は、ナゼか僕の"元カノ会"の会長を(勝手にw)自称してるw


「まさか。"元カノ会"は常にテリィたんの味方ょ」

「ホントかょ?奴等の狙いは遺体だった…あれ?スゴいメールが来てるwテリィたん、どこ?テリィたん、すぐ電話して、テリィたん今週末映画見に行こ?何だコレ?」

「途中で無事だってワカッタから…」


トボけるスピアはジャージ姿だが、その下は恐らくスク水w


「今週末はオケのステリハだ。ウェットだから無理」

「そ。でも、とにかく!テリィたんが殺されてなくて良かったわ」

「どーせ最近のハリウッド映画は、リメイクばかりでツマラないょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び万世橋(アキバポリス)でムーンライトセレナーダーと落ち合う。

取調室の隣室でマジックミラー越しに被疑者を観察。


しかしw


「ホントにこの人?間違いナイ?」

「YES。姉様、被害者の元同僚でハバス・トックさん。見事にオバサンでしょ?」

「でも…死体どころかスポンジも投げられなさそうょ?」


ムーンライトセレナーダーが指差す先にガリガリの女子。

拒食症?とりあえず、ラギィ警部の事情聴取を拝見スル。


「ハバス・トックさん。貴女が連行された理由わかる?」

「いいえ。聞いてナイわ」

「昨夜、ジョナ・キレンさんが殺害されました」


真面目に驚くハバス・トックw


「なんてコト!」

「お友達でしたね?」

「オフィスで席が隣だったわ」


明らかに動揺してる。


「ジョナさんと最後に会ったのは?」

「ファミレスのジョナサンじゃナイわょね?モチロン、あの日以来会ってナイわ。つまり、私達が解雇された日以来会ってナイって意味」

「クビですか?さぞかし憤慨されたでしょう?」


煽るラギィ。


「モチロンょ!15年間働いた。その忠誠心は評価されていると思ったのに。でも最後はこのザマょ」

「会社にはアピールしたの?」

「何度もね。こんな仕打ちはヒドいと。だから、ジョナと約束したのょ。いつか仕返ししてやるとね!」


ラギィにノセられ興奮気味のハバス。


「そう?だから、彼女を殺したのね?」

「え。誰を?」

「ジョナさんを。あ、ファミレスじゃナイわょ」


ラギィは一気に自白に追い込むつもりだ。が…


「何を言ってるの?どうして、私がジョナを殺すの?」

「だって、彼女に解雇されたのでしょ?」

「違う違う!彼女も私と一緒に解雇されたの!まぁ私は幸い次の仕事が見つかったから良かったけど、彼女は…未だ無職のハズょ」


ガリガリに痩せたハバス・トックは悲しげに首を振る。


「でも、もう働く必要はなくなったのね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。


「ラギィ警部!殺されたジョナ・キレンは、3ヵ月前に解雇されてました!」

「え。ソレじゃシンガポール出張はウソだったの?」

「神田リバー水上空港の入管には、その飛行艇の搭乗記録がありません」


ラギィは頭を抱える。


「どーやら、彼女は家族に色々隠しゴトをしてたみたいね。あんな幸せそうな家庭だったのに…」

「生活費はどこから捻出してたのかな」

「はい…わかった。テリィたん!また遺体が出たわ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


遺体が発見されたのは、首都高の高架下だ。


「何があったの?」

「警部。遺体に"手術"が施されてます。誰かが遺体を切開し臓器を摘出してるw」

「顔を背けたくなる惨状です」


鑑識が死体に被せられた白い布を取る。

切開され内臓が全て抜き取られている。


「…きっと腹の底から憎かったのね」

「医者の仕業じゃありません。完全に素人の仕事です。カッターや包丁を使ってるw使用済みのビニ手も捨てられてましたが市販の安物」

「何か探してるのかしら?」


鑑識は、証拠品袋に入った、血染めの白い粉末を示す。


「切開された体腔からは、微量ですが粉末が出ました。恐らく覚醒剤かと」

「運び屋だったの?!飲み込んで運んだ覚醒剤を無理矢理取り出された?」

「どうかな?覚醒剤との関わりや犯罪歴のない保険数理士がどうして運び屋に?彼女はまともな人だ。運び屋をヤルには闇社会との接触が必要だ」


因みに、ココで逝う覚醒剤とは、腐女子のスーパーヒロイン覚醒を促進スル薬剤のコトだが…廃人化スル危険性も潜むw


「でも、テリィたん。忘れないで、手術は死後にされてるの。しかも…死因はコレね?犯人が両手で首を絞めた痕がアルわ」

「ん?ラギィ、ココだけ痕が薄いな。何だろう?」

「警部。犯人は、小指を骨折してる可能性があります」


さすが万世橋(アキバポリス)の鑑識だが1点補足。


「上品に小指を立てて絞めた可能性もヨロシク」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び捜査本部。


「姉様、ジョナのパスポートを調べた。彼女は、シンガポールではなくて"半島"に逝ってたみたい。覚醒剤の買い付けカモ」

「犯罪歴のナイ、健康な中流層の一般人(パンピー)か。どの国の入管もマサカ運び屋だとは思わないわね」

「口座も確認しました。ココ半年、全て支払いはカードで済ませてる。奥さんも驚いてたわ」


ヲタッキーズのエアリとマリレが交互に報告。


「彼女は、毎日どこへ逝ってたの?」

「職探しみたい。彼女のPCには未使用の履歴書が大量に残ってました」

「そんなのアパートを売れば捻出出来るのに」


とりあえず、口を挟んで存在をアピールする僕←


「中古物件なので良い値がつかナイみたい」

「生命保険は?」

「4ヶ月前に解約してる。死んでも1銭も入らナイ」


八方塞がりのスーパーヒロインだw


「お金に困って運び屋になったのは理解出来た。でも、何のツテで運び屋になったのかな?闇バイトに応募したとか?」

「鑑識が現場を見たけど収穫はゼロ。衝突した車は盗難車で、持ち主の指紋しか残ってなかった」

「…確か現場に手袋が落ちてたょね?」


エアリが鑑識のファイルを漁る。


「…指紋はなかった、とアルわ」

「裏は?」

「裏?」


僕は、海外ドラマで仕入れた知識を御披露。


「手袋の裏側には、必ず指紋が残ルンだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


手袋裏から指紋が出る。警視庁(さくらだもん)に照会スル。


「ルーサ・ワイト。薬物所持で2度逮捕。共謀罪でも逮捕され銃の不法所持で5年服役。現在薬物販売の共謀罪で仮出所中です」

「あらあら、仮出所は取り消しね」

「住所は?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田相生町だ。廃工場の一室。


死体から取り出した血塗れの小袋が並ぶ。封を切り、小袋から覚醒剤を取り出す。天秤で重量を測り小瓶に詰め替えるw


窓ガラスが割れ、床にコロコロ転がる…閃光手榴弾←


なんだなんだと男達が顔を見合わせた次の瞬間、光と音のビッグバン!同時に全てのドアと窓から武装警官隊が突入!


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

動くな(don't move)!床に伏せろ!」

「ホラお前もだ!早くしろ!」


秤に載せられた、血染めの小袋を見下ろすラギィ警部。


第3章 内臓ギャングを追い詰めろ


マジックミラーの向こうには覚醒剤工場の面々。

その様子を眺めながら弁護士とやりあうラギィ。


「あのね。ウチは、銃の不法所持に薬物所持、暴行、死体損壊、その他にも星の数ほどの物証を掴んでる。司法取引の余地はナイわ」

「でも、殺人の証拠はナイだろ?」

「直ぐ見つかるわ」


鼻で笑う弁護士。なかなかヤリ手だ。


「無理だょ警部。そもそも殺してナイんだから。懲役10年で仮出所の資格は5年後。ソレで全員が歌い出す」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ホントだ!大合唱が始まるw


「死んだジョナ・キレンと約束を?」

「YES。神田山本町の安モーテルで7時に落ち会う約束だったが来なかった。1億7500万円相当の覚醒剤を腹に詰めたママ消えちまったのさ」

「それで?」


隣の取調室もホボ同じ流れだw


「モチロン必死で奴を探したさ。すると、サイレンが聞こえた。外に出て探すと警察が空を見上げている。そしたら、ジョナが木に引っかかってた」

「ブツの回収は?」

「アンタ達との競争だ。覚醒剤は、先に奴の腹を開けた奴のモノになる。必死だったさ」


さらに隣の取調室。


「で、即席で手術(オペ)を?」

「どうせもう死んでた」←

「…彼女はなぜ運び屋になったの?」


そーゆーコトは、最初の取調室が良く"歌う"。


「ヤケになってたンだろう。みんな同じだ」

「うーんジョナはアンタ達とは"人種"が違うの。彼女は、そんなタイプじゃないわ」

「警部さん。崖っぷちに追い込まれたら、人種も何も関係ナイ。誰でもヤルさ。特に奴は追い詰められて、時間もないようだった」


ラギィは当然の疑問を訊く。


「誰に追い詰められてたの?」

「言わなかった。だが、殺したのは彼女から金を取り立ててた連中だ」

「彼女を運び屋に仕立てたのは、彼女が信頼してる人ね。アンタやアンタのお仲間じゃない。そもそも、アンタ達は見るからに崖っぷちな奴を運び屋になんかにしないわ。ウチのオトリ捜査かもしれないでしょ」


主犯格の男は明後日を向く。


「あら?シンジケートに高額で雇われてるアンタの弁護士センセは、きっとアンタの態度に御不満ょ。塀の外に出るのはいつになるかしら」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。


「追い込まれたジョナに運び屋の仕事を紹介したのは、投資銀行勤務のビクビ・ローンょ!」

「さすがリスクの高い投資をスルな」

「高過ぎたわ。テリィたん、茶々いれないで。直ぐに連行して頂戴!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


1時間後。捜査本部の取調室。


「死んだ?ジョナが死んだの?あぁ何てコトなの?神田明神も照覧あれ!」

「ビクビさん。何度聞かれても答えは同じです」

「ヒドい話!ジョナって人を知ってる?第二のウィリー・ローマン。冷たい現代社会の被害者ょ!戯曲にすべきだわ。テリィたん、貴方は戯曲も描くの?」


ビクビ・ローンの取調べは、ラギィ警部からムーンライトセレナーダーが引き継いでる。僕も同席したらトバッチリだw


「戯曲はヤラない」

「ビクビさん。最近ジョナさんに運び屋の仕事を紹介しましたね?」

「ヲタッキーズは、ソンなコトまで知ってるの?」


大袈裟に驚いてみせるビクビ。学生時代は演劇部?


「あのね。貴女に覚醒剤を売ってた連中は全員逮捕したわ。あの連中にジョナを紹介したのは貴女ね?」

「ジョナは私がプレイ中にした話を覚えていたの」

「プレイ中?コスプレか?まさか…3P?」


僕の率直な質問にムーンライトセレナーダーは溜め息←


「彼女とは違法ポーカー場で会った。少しだけ賭けてストレスを発散してたの。でも、ジョナは解雇されてから、よせば良いのにポーカーで生活費を稼ごうとした…そして、少し力み過ぎたの。場所は東秋葉原のリトル平壌」

「"半島"系の繁華街だ」

「YES。元"喜び組"がやってる賭場。最初は悪くなかった。ホラ、彼女って実はテレパスでしょ?ところが、危険な連中に捕まって残酷に大損したワケ」


テレパスをハメる危険な連中?誰だ?


「負けが込んだジョナは支払えなくなった?」

「YES。ソレで彼女は私の話を思い出した。"半島"で5万ドル稼いだ話ね。ホラ、儲かる情報は、他の人にも教えなきゃ。コレって私の投資哲学だから」

「…で。その危険な連中の特徴は?」


万事大袈裟なビクビだが、フッと肩の力を抜く。


「体中にタトゥのあるロシアンマフィア」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ビクビを搾れるだけ搾って帰し、成果は捜査本部で共有。


「そんな状況じゃ運び屋にもなるわね」

「でしょ?でも、ラギィ。タトゥのあるロシア人なんて、東秋葉原にはいくらでもいるわ。どう探す?」

「いつもと同じょ。今ある証拠から地道に捜査」


東秋葉原は、アキバのダウンタウンで人種の坩堝だ。


「そのロシア人がやってる賭博場は、当然違法ね」

「違法カジノの連中は、警察に協力ナンかしないわ」

「僕は、警察じゃない、タダのヲタクだ。僕が潜入してロシア人を探し出すょ」


ムーンライトセレナーダーは僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿だが瞬間的にミユリさんの顔になる。


「良い案ですが、肝心の賭博場はどうやって見つけますか?」

「任せとけ。僕の方で誰か当たってみるょ」

「テリィ様。ハユンによろしく」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ハユン・アリンは、元"喜び組"で闇ポーカーの胴元。"領袖の弱味"を握る彼女は、アキバで自由に生きている。

僕は、ヒョンなコトで半島からの刺客と内調から追われていた彼女を助ける。つまり、僕は彼女に"貸し"がアル。


「テリィたん。なかなか面白いストーリーだ。冒頭も良いしヒネリもある」

「でも、運び屋の展開は読めたな」

「煽ってもレイズしないぞ。確か以前、違法ポーカーの小説を描いてたな?今回の容疑者は、マフィアの闇カジノの常連ナンだ。僕を潜入させてくれるような知り合いはいないか?」


SF作家が集まる闇ポーカー。僕は、仲間に話すフリして、実は胴元のハユンに話してる。彼女はミニのチマチョゴリ。


「冗談だろ?闇カジノは人殺しのたまり場だぞ」

「ロシアや中国のマフィアに目をつけられてみろ。いくらべストセラー作家でも命を落とす。止めるんだ」

「世間知らズなセレブが、スリルを味わいに来たと思わせれば良いだろ?僕の得意技だ」


みんなは呆れ顔だ。果たしてハユンが近づいて耳元で囁く。


「かなーりホレてるのね」

「君の半島を照らす偉大なる領袖様にか?」

「バカ。ミユーリに決まってるでしょ?男が、そんな危険な橋を渡るのは、絶対"女"の為だわ」


作家仲間も口々にヒヤかす。 


「花を買った方が手っ取り早い。コスパも良い」

「どーでも良いけど愛してるとだけは、決して言うな」

「…いーから闇カジノは何処だ?教えろょ」


僕は、ハユンを真正面から見据える。


第4章 リトル平壌の決闘


東秋葉原のチャイナタウンに偽装バンで乗り付ける。

ホットドッグ屋台のラッピングだが中は移動指揮車。


「テリィ様。ホントにココですか?」

「ハユン・アリンは嘘をつかない。彼女には貸しがアル」

「OK。隠しカメラ映像が…来たわ。音声も問題ナシ」


指揮車の小さな画像を確認するヲタッキーズ。


「OK?私達の声はテリィたんには聞こえない。何が起きても指示は出来ないの」

「テリィ様。作戦をもう一度お願いします」

「タトゥのロシア人を見つけ、映像を撮ったら店を出る」


ムーンライトセレナーダーはうなずく。ニコリともしないw


「とにかく、長居はしないコト。いないと思ったら直ぐ撤収してください」

「ココは"リトル平壌"だぜ?ロシア人ナンて何人もいないょ。すぐ見つけるさ」

「では。いってらっしゃいませ、御主人様」


後部ドアを開け、僕に背広を投げるエアリ。マリレはサムアップ。そして…心配そうな顔のムーンライトセレナーダーw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「悪い予感がスル人は手を挙げて!」

「私達も上げて良いですか?」

「モチロン」


移動指揮車のオペレーターやドライバーまで全員が挙手。

しかし、その様子は僕には聞こえない。前進あるのみだw


「チャイナタウンとはエラい違いだ」


メインストリートだか裏通りだか不明な寒々とした通り。

音楽もなく、とても歓楽街とは思えない凍りついた街並w


「通りにはオンドルだと思うけど蒸気が漂ってる。でも、サイキック抑制蒸気の可能性もアル。もうすぐハユンが教えてくれた店だ」

「やーだテリィたん、すっかりスパイ気分だわ」

「袖に向かって話してるwマイクはソコじゃナイのょ英国情報部じゃナイんだから」


聞き流して爪を噛むムーンライトセレナーダー。路地に入るといきなり学芸会のセットみたいな店。"Msアリラン"?

入口の左右に門柱みたいな用心棒。その横に寸胴鍋のジャガイモの芽を取る男。さてココで大事なのはジャガイモ男だ。


「僕はハユンの元カレで…」


最後まで逝えない。ジャガイモ男が目配せスルだけで、用心棒はボディチェックもせズに僕を通す。いよいよ店内だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「向こうだ」


カウンターの中のバーマンが顎で指す。振り向くと、音楽もなく寒々とした雰囲気の店内。とても耐え切れないw

ミニのチマチョゴリ美人がボディラインも露わに、お茶?を配って歩いている。全員喫煙で店内には煙が充満だ。


「潜入したぞ」


袖に向かって報告スルや、早くも横をタトゥのロシア人が通る。さらに、もう1人、タトゥのロシア人を発見だ。

やや?バーマンに教わったテーブルは、全員がタトゥのロシア人だ。どうやら、店内はロシア人だらけのようだw


「聞いたトコロによると、あのテーブルは掛け金が無制限らしい。きっとジョナもアソコでプレイしたんだろう。汚い手口で掛け金を引き上げる気だ」

「あらまぁ完全にスパイ気取りね」

「カメラをつけたままトイレに行きそうね」


僕の決死の実況中継を鼻で笑うヲタッキーズw

聞こえないのを良いコトに、言いたい放題だ←


聞こえないけどw


「では、あのテーブルに座ってみよう。何か手掛かりが得られるカモしれない」

「今なんて?」

「作戦と違う!危険だわ!」


そーゆーコトも全く聞こえズ、着席スル僕。


「やぁ調子どう?」

「おい。ココは掛け金無制限だぞ」

「万事が無制限の僕には、ピッタリさ」


先月入った印税300万円の札束をドンと置く。

テーブルのロシア人達は顔を見合わせている。


「みんなキレイだね…あ、変な意味じゃなくて、タトゥの話だょ。その腕に彫った文字はナンて意味ナンだい?」

「黙ってゲームしろって意味だ」

「実は、僕はSF作家。コレはリサーチなんだ」


スラスラと嘘がほとばしり出るw


「アンタ、SF作家か?有名なのか?」

「"地下鉄戦隊メトロン5"を知ってるか?」

「アンタ、テリィたんか?!大好きだ。なぜ途中戦士のマゼンタを殺した?」


ソレはスポンサーの指示←


「次の本はアキバ版の"ジーザスクライストスーパースターウォーズ"ってミュージカルなんだけど、モス・バーガー宇宙港での違法ポーカーの話を描こうと思ってる。その執筆のためのリサーチに来たんだ」

「つまり…作品にリアリティーを出したいんだな?」

「まぁソンなトコロだ。何ならメトロンの次の回に君達を登場させるけど?」


途端に全員がロシア語で話し出しチンプンカンプンになるw


「あら。テリィたんったら、たちまち連中と打ち解けちゃったわ。スゴーい」

「"どーせコイツもテレパスだ。俺達の心を読んで勝つつもりだろうが、喫煙にカモフラージュした"サイキック抑制蒸気"でテレパシーは使えない。有り金全部搾り取るぞ"って話してるわ」

「え。ムーンライトセレナーダー、ロシア語がわかるの?」


因みにムーンライトセレナーダーはメイド服にレオタード。


「暇な時は、東秋葉原のリトルロシアでロシア人のフリとかして過ごしてる」

「姉様。ソレって萌えます」

「御主人様方には内緒ょ。特にテリィ様には」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


「レイズ」

「コールだ」

「俺もコール」


僕はノビのフリをして男達の指先を撮る。

特にソレゾレの小指のUPを狙い撮りだw


「オンコール。テリィたん、君の新作について、もっと話してくれナイか」

「ポーカー好きのロシアンマフィアの話だ。捨て身の人を獲物にして、その全財産を賭けさせる」

「ん?なぜソンなコトを?」


僕は、犯人達に解説スル。釈迦に説法?


「奴等は、高利貸しで儲けてルンだ。敗者に莫大な借金を背負わせる」

「テリィたんは、ワザと挑発して、連中が食いつくの待ってる。ポーカーと同じだわ」

「ダメょ捜査がバレるわ」


ソンなやりとりも知らズ、挑発を続ける僕w


「ところが、その人には家庭があった。深みにハマり、金が返せなくなった。マフィアは、そいつを見せしめのために殺すしかない。他の債務者にシメシをつけるためにね。ある晩、そいつを廃ビルに呼び出して、首を絞め、突き落としたンだ。屋上から」

「俺なら頭に1発ズドンだ。その方が、ずっと手っ取り早く済むからな」

「違いナイ」


一斉にヘラヘラ笑うロシア人達。


「ホラ!アイツの手を見て!あのロシア人、小指に特徴があるわ!」

「あ。指をクルクル回してる。拡大して」

「人工指だわ。アレじゃ小指に力が入らない!」


移動指揮車の中は大騒ぎになるw


「アイツが犯人だわ!早くテリィ様を助けなきゃ」

「待って!警察の潜入捜査とバレれば厄介ょ。どーする?ムーンライトセレナーダー」

「私が逝く。10分で戻らなかったら突入して。私の化粧ポーチを取って」


ミユリさんが立ち上がり、外へ出る。


「姉様!口紅で殺すつもり?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


ソレゾレのやり方で、ロシア人達は僕にガンを飛ばす。

既に半数の者が、テーブルの下で音波銃を抜いている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


ピンヒールに赤ブラをチラ見せの黒のボディコン。

ミニスカにベルトを巻き、モデル歩きで店の前へw


「待て」


左右の"門柱"兼用心棒が通せんぼスル。


「ねぇ入れて頂戴ょ。私が逝かないと、私のTOが負けちゃうわ。私は、彼の推しでラッキーガールなの。ダメ?じゃあこうしましょ?私が入って大儲けしたら、後で貴方達にもいくらか分けてあげる」


左右の"門柱"は、ジャガイモの皮むき男を振り向く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


「All Inだ。コレでポットはいっぱいになったぞ、SF作家さん。ま、大金持ちにとっちゃ大したコトないか」

「どーせリサーチ費用だから、税金がかからないしな」

「わかったAll Inだ」


僕も残りの全チップを差し出す。

するとフンと鼻で笑うロシア人。


「深みにハマったな。君の新作と同じだ。クイーンのスリーカード」


黒と赤の女王様が3枚並ぶ。


「…見事だ。ソレには勝てナイ。インサイドストレート以外はね。悪いけどコレを換金してくれ。これじゃさすがに持ち歩けない。ロシアンマフィアにとっちゃ大した金じゃないカモしれないが」


僕は席を立ち、帰りかけると…後からついて来た男が、僕の背中に丸い何かを押しつける。ラッパ型の銃口。音波銃だw


「テメェ誰だ?」

「だから、SF作家だょ」

「さっきの話は誰から聞いた?」


難しい文字を腕に彫った男だ。

奥のキッチンに連れ込まれる。


「遺族からだ」

「奴も金さえあれば生きていられたんだ。俺が殺した。次はお前の番だ」

「待て。俺はタダのSF作家だ」

「ウソだ。万世橋(アキバポリス)だろう?」


その時。キッチンのドアがゆっくり開く。


「この男が万世橋(アキバポリス)?こんな腰抜けが警察のワケ無いでしょ!」

「ミユリさん?」

「男らしくてハンサムなアナタとは大違いょ。テリィ様、コチラの方にどんな御迷惑をおかけしたの?」


メイド姿のミユリさんだw


「アキバメイド、どっか行け!」

「あら。銃を出してもメイドは落とせないわ」

「関係ねぇだろ!」


次の瞬間、ロシア人は厨房台に叩きつけられ、逆手を取られて音波銃を落としてるw


「アキバでメイドに関係無いコトなんて無いのょ」

「ミユリさん、すげぇ。イメージチェンジ?」

「テリィ様、応援を呼んで。早く!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


その日の深夜。"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンクに改装したら、居心地良くなり回転率は急降下。メイド長(ミユリさん)はオカンムリだw


「ジョナの御主人は?」

「辛そうだったわ。妻に嘘をつかれてたなんて」

「全部が嘘だったワケじゃない。家庭は愛してた。そのためにとった行動は間違ってたけれど」


カウンターの中のミユリさんに絡む僕。

彼女のメイド服姿はアキバ最高の眼福←


「あの"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"の巨乳パパラッチ記者も、良い記事が描けたようですね」

「ソレもそうだけど、命を助けてくれてありがとう」

「死なれちゃ新しいTOを探すのが面倒で」


珍しいミユリさんのヘラズ口に僕は調子に乗る。


「僕らは良いチームだ。海外ドラマに良く出て来る刑事と犬のコンビ"ターナー&フーチ"だ」

「確かにテリィ様って犬っぽいカモ」

「ミユリさんは、怖がってる。お母さんの死を再捜査して、また自分を見失って、闇に落ちたくナイんだ。でもさ。今回は違う。かなり強力な手がかりがあルンだ。しかも、ミユリさんはひとりじゃない。僕がいる。一緒にやろう」


フト気づくと彼女は僕を冷たく見てる。マズいw


「テリィ様。私は知りたくナイと申し上げました。私の気持ちをお考えにならなかったのですか?再捜査は、私のためじゃなく、テリィ様の好奇心を満たすためのモノでしょ?それすら、貴方には見えてナイ。今回の事件は解決です。私達、しばらく距離をとりましょう…出禁です」


打ちのめされた僕は、言葉もなく立ち去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


僕達のアキバの居場所(アドレス)"マチガイダ・サンドウィッチズ"。


「テリィたん、執筆中?」

「ようやく描き始めたトコロさ」

「ミユリ姉様とはどう?」


ヲタッキーズのエアリだ。普段着のメイド服←


「出禁だって」

「そう。もともと姉様はテリィたんにはもったいなかったのょ」←

「おいおい。ソレでも妖精かょヒドいな」


悪びれた様子もなく僕の隣に座るエアリ。


「実は、私も私のTOと喧嘩しちゃった。テヘペロ」

「へぇ。エアリも自分の御屋敷のメイド長だモンな。地球最古の地下図書館カフェだ。原因は?」

「バレンタインの初チョコが別のメイドだった」


え。そりゃマズいなw


「で、悪びれた様子もない。電話もナシ。TOってどうしていつもそうなの?どうして全部正当化しないと気がすまないの。どうしてゴメンねが言えないの?謝れば済むのに」


彼女の愚痴?を聞き流してたら、僕はハッとスル。


「エアリ、ありがと」


ハグしておでこにキス。


「なんで?キスはオデコなんかにしないで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


御屋敷(ミユリさんのバー)の窓が朝焼けに染まる頃、僕は御帰宅スル。

黙ってグラスを拭いているミユリさんの前に立つ。


「悪かった。僕が間違ってた。ミユリさんの気持ちを尊重しないで、古傷に触れるコトをした。もうTOじゃナイかもしれないが、コレだけは逝っておきたい。心から反省してる」


僕は、回れ右をして3歩歩いたらミユリさんの声。


「今宵も御帰宅、お待ちしております。テリィ御主人様」


僕は、片手を上げて歩き去る。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場して、ウクライナ侵攻以来、今や世界の嫌われ者となりつつある"ロシアンマフィア"をテーマに、ロシアンマフィア彼等に殺されるスーパーヒロイン、主人公の提灯記事を描くパパラッチ、大量解雇の憂き目に合うおばさん、元"喜び組"の闇パーカーの胴元、ロシアンマフィアを追う天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部、そして今話より主人公観が増すSF作家(実は半島動乱2を経て第3新東京電力を退職しSF作家に専念w)などが登場しました。


さらに、プラズマ生命としての生い立ちをめぐる主人公とヒロインの仲違いと再生などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、いよいよマスクオフも近い?秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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