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ショートショート9月~3回目

ホエールウォッチング

作者: たかさば

 私の趣味は、ホエールウオッチング


 豪快なクジラさんを見るとわくわくする


 今日も私は、クジラを求めて大海へ出る

 さあて、今日はどんなクジラさんに会えるかな?



「なんだ、これは!!!」


 誰かの大きな声がする。

 大物の予感に、心がざわめく


「お前は甕裡醯鶏という言葉を知らんのか!!」

「年寄りを馬鹿にするな!!」

「客は神様だろうが!!」


 力がないくせに暴走する大きな目くじら


 時代に合わない古い言い回しで攻撃している

 年齢こそが最大級の自分の武器だと信じている

 金を出せば自分が一番偉いのだと吠えている


「ふん!!二度とこんからな!!」


 ああ・・・目くじらがさんざん暴れまわって去っていった


 大波が止んで、海の生き物たちが優雅に泳ぎ始めた

 穏やかな海に、海の生き物達はのんびり泳ぎ始めた



「うるさいっ!!!」


 誰かの大きな声がする。

 大物の予感に、心がざわめく


「どうしてママの言うことが聞けないの!!」

「子どもは黙って親のいうことを聞いとけばいいの!!」

「あーあー、それ違う!!なにやってんの?!バカ!!」


 自分の都合が最優先の、余裕がない大きな目くじら


 耐えることしかできない相手を自由気ままに攻撃している

 親こそが一番正しいのだと信じている

 己の鬱憤を晴らすために吠えている


「あんたなんか生まなきゃよかった!!」


 ああ・・・目くじらがさんざん暴れまわって去っていった


 大波が止んで、幼い海の生き物が漂っている

 穏やかな海で、海の生き物はぼんやり漂っている



「バカヤロウ!!!」


 誰かの大きな声がする。

 大物の予感に、心がざわめく


「こんな腑抜けた企画立てんなよ!!」

「全然需要がわかってねえなあ、オイ!!」

「これだからお前なんかに任せられねえって言ったんだ!!」


 周りの意見を否定することで自分を優位に保とうとする大きな目くじら


 震える小魚を相手にフルパワーで攻撃している

 根拠のない自分勝手な思い込みこそ正義なのだと信じている

 遠巻きに見ている仲間達の冷たい目に気付かず吠えている


「女のくせに偉そうにすんなっての!!」


 ああ・・・目くじらがさんざん暴れまわって去っていった


 大波が止んで、海の生き物たちが小魚を囲んでいる

 穏やかな海に、海の生き物達の優しい言葉がそっと流れた



「うわ、めっちゃブサイク!!!」


 誰かの大きな声がする。

 大物の予感に、心がざわめく


「ヤッちゃんは何しても似合わないんだから無駄!!」

「もう整形でもすれば良いのに!!」

「あたしが着た方が似合うじゃん、もらってあげるって!!」


 言いたいことをはっきり言うのがポリシーの大きな目くじら


 自分の言葉の威力に気がつかず攻撃している

 はっきり欠点を伝えることこそ親友のためになるのだと信じている

 結局自分のほうがかわいいんだからと吠えている


「あたしそんなデブだったら生きていけなーい!!」


 ああ・・・目くじらがさんざん暴れまわって去っていった


 大波が止んで、海の生き物がため息をついた

 穏やかな海で、海の生き物はスマホをいじって縁を切った



「もう!ほっとけって言ってんだろっ!!」


 誰かの大きな声がする。

 大物の予感に、心がざわめく


「俺は外に出たくねえんだよ!!」

「支払いしとけって言っただろ!!」

「将来お前らの面倒を見るのは俺なんだぞ!!」


 大海に出ようとしない、狭い生簀で暮らす大きな目くじら


 生簀の管理者に攻撃している

 いつまでも生簀で過ごしていけると信じている

 いずれは自分が生簀を管理して行くのだと吠えている


「ちょ!!誰だよ、お前ら!!」


 ああ・・・目くじらがさんざん暴れまわって…連れ去られていった


 大波が止んで、生簀の管理者たちは囲いをはずした

 穏やかな海に、生簀だった場所が混じった



 今日も、たくさんのクジラが見えた

 今日も、たくさんクジラさんに遭えてよかった


 たくさんたくさん、学ばせてもらえたから

 たくさんたくさん、蔑むことができたから

 たくさんたくさん、笑うことができたから


 目くじらって本当に面白い

 目くじらって本当にあふれてる

 目くじらって本当にためになる


 明日も私は、ホエールウォッチングに出かける


 さあて、どんな目くじらが暴れるのかな

 さあて、どんな目くじらが見限られるのかな

 さあて、どんな目くじらが大海の広さに気付くのかな


 ・・・フフ、とっても、楽しみ


 私は、いっぱいになってしまった胸の空気を吐き出すために・・・


 穏やかな波の真ん中で、盛大に、潮を、吹き上げた


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