「火薬と血」その6
光星 フロド邸医療機関
そして私は目覚めた、あの後どうなったのか分からないけど生きてるということは戦いに勝ったのだろう、人生初勝利に喜びたいが全身に痛みと頭痛が酷い、なんかやけにお腹が痛いし私は無茶をしてしまったのだろうか?
「ユカリちゃん!!」
そして起きるやら桃色の髪にアメジストのような瞳をした彼女が涙を流しながら私に抱きついた、苦しいくらいに抱かれゆいゆいは懺悔する。
「ごめんね、お姉さんが居ればこんなことには」
ゆいゆいは私達の状態に渋面を浮かべ自分を責め立てる、いつもは優しく天真爛漫な女性だがそれは表面だけであり本来は大人に限り冷酷非情、悪逆無道の天才殺し屋である。容赦や手加減をせず罵倒や暴言だらけの粗暴にはなるが子持ちだけは特別扱いとして優しさが混じるトンデモナイ女性だ。
そんなゆいゆいだが子どもに対しては情熱的で愛と包容力で虜にしてしまうほどの絶対的な愛情を持つ素敵な女性で私もそれに惚れた。だから今自分のせいで重症になってしまったことに瞼に涙を溜め、悲観的になる。
「ううん、私もずっとゆいゆいの錘になるわけにはいかないよ、それよりも初めて勝てたことが嬉しかったんだ!」
私は貧弱で魅力的な部位も無く全てが平均的な女だ、こんなつまらない私をゆいゆいは愛してくれる、その愛に応えるためには肉を切って骨を断つことをしなければゆいゆいの役には立てないんだ。
「うぅ、でもぉ………お姉さんはユカリちゃんの婚約者だしやっぱりお姉さんが身体張らないと・・・」
ゆいゆいはなんと病室で私に跨りそのまま身体を重ねた、近い近い近い!!!!あとおっきいお胸が私の小さい胸に重なってちょっと恥ずかしい!、
「ぐす、ぐす……ユカリちゃん」
私に対して凄いナイーブでセンチメンタルに堕ちるけどそんなことより恥ずかしい!キスするまであと数センチしかないよ!?
「だ、駄目!!」
頭痛が酷いのに私は赤面して頭が爆発しそうになったので身体を離させた。ゆいゆいの温もりと衝動的な行動には本当に困ってしまう、私のことを本気で好きなんだろうけど私はまだ結婚するとも言った覚えはない、運良く結婚できればいいかと思っているがこのままだとゆいゆいにキスされるのは時間の問題だ、何か手は!?
と思ったが無理そうだ、弱点はゆいゆいのおっきいお胸を揉んだりコチョコチョするのが良いけど身体が重なってて動けない!
もう終わりだと確信したその時、ゆいゆいの肩が掴まれる。そこにはワインレッドの髪をしたサナエちゃんが呆れた顔で優しく離してくれた。
「何やってんのよ、嫌がってるでしょ?」
そのことを伝えるとゆいゆいは我に返り、子どもに対して不埒な行為極まりないと自分の腕にナイフを突き立てた。
「ごめんね、少し頭冷やしてくる」
どくどく流れる出血に平然と立ち去るゆいゆい、その顔は辛く去り際にごめんなさいと雫が落ちたような気がした。
サナエちゃんに助けられ私はありがとうとお礼をする。
「ありがとうサナエちゃん」
「ふん、感情的になるとユイは暴走するから気を付けなさいよ?私はゲイだからレズビアンだからって気持ち悪いとは思わないけど行き過ぎた行為は許せないわ、今回の件でユイは心にダメージを負ったから次は安全性を固めると思うから安心なさい」
うぅ、頼もしいよ。サナエちゃんも私にとってはお姉さんだし尊敬しちゃうよ。
「それと、よく頑張ったわね。家族の連携あってこそのアンタが輝くんだからこの調子よ」
そう言って頭を撫でてくれる、一見サバサバしてるけどサナエちゃんはとても人情深く、人としての生き方に憧れる。ゆいゆいとは正反対な性格だけど私はそんなサナエちゃんが大好きだ。
「えへへ、ありがとう」
「ふん、無理は駄目よ。いくらクソ雑魚で少しは戦えても満身創痍で戦場に出るならアンタ向いてないわよ、アンタのことだから多分大丈夫だと思うけど全員の命があってこそ勝利に繋がることは忘れないで頂戴」
サナエちゃんはそう言って去っていった、お見舞いに来てくれたのは嬉しいけどやっぱり厳しい人だ、目つきが鋭く日々怒ってる気がするけど今回は怒っていないと思う。私はゆいゆいが戻ってくるまで少し仮眠を取ることにした。




